2024年11月22日
口下手な男たち・・・西新宿5丁目「ひろ」
坂をさらに上り、通りに突き当たったところで、その通りの坂を下る。折り切ったところに、白い暖簾を下げた店がある。1ヶ月ぶりだな。あの時は、10月も下旬だというのに戸が開け放してあった。客は1人もいなくて、一瞬、準備中かと思ったものだ。「やってますか?」とカウンターの中の厨房で作業中のマスターに声をかけると、「え?なんですか?」とものすごくぶっきらぼうに答えられたので、入るのをやめようかと思ったくらいだった。「1人です。」と改めて言うと、「どうぞ。」と笑顔もなく答えてくれたっけ。
戸を開けて、店の中に入る。4人がけのテーブル席が3つ。カウンターは7席。先客は1人。入り口近くのカウンター席に座っている。その席だけがカウンターに対して直角に曲がっている位置にあるので、特等席なのだろう。自分のボトルを近くに置いて、じっくりと飲んでいる感じ。芋焼酎「赤兎馬」の印象的なラベルがこちらを向いている。「1人ですか?」「はい。」「カウンターにどうぞ。」真ん中の出来に決めて、鞄を隣の席に置いて座る。おしぼりが届く。「生ビールの中(480円)をお願いします。」と注文する。 続きを読む
2024年11月19日
2年経っても・・・世田谷「酒の高橋」
時間を確認すると午後6時43分。7時過ぎには世田谷駅前バス停に着くな、と思うと気持ちがゆったりする。バスは道玄坂を上っていく。道玄坂上交番前というバス停からは意外にたくさんの人が乗ってくる。この辺りにはマークシティの道玄坂入り口があって、その近くには与謝野晶子の歌碑がある。「母遠うて瞳したしき西の山相模か知らず雨雲かかる」という作品なのだが、なぜ暗記しているかというと、大学生だった時のちょっとした思い出があるからだ。友人とこの歌碑の前を通りかかった時、「へえー、こんなところに与謝野晶子の歌碑があるよ」と言うと、「どれどれ」とその友人が読み始めた。そして「この人短歌上手いね!」と感動したように言う。「だって、与謝野晶子だぞ。当たり前じゃん。」「そうなんだ。」・・・まさか知らないの。とは思いながらも、文学のセンスはあるんだなと妙に感心したものだ。それ以来、この近くに来るとこの歌碑を見にきて、果たして、作者名を知らなくてもこの歌に感動できるものだろうかと自問していたのだ・・・。
なんてことをぼんやり考えていると、バスは国道246号線に入り、池尻あたりを走っている。昭和女子大前を過ぎて、しばらく走ると三軒茶屋だ。街がキラキラしている。この街にはあまり縁がないな。でもいい雰囲気だ。ここから田園都市線のエリアを離れて、若林、松陰神社前・・・と世田谷線のエリアに入る。世田谷区役所前バス停を過ぎれば、次が目的地の「世田谷駅前」。時刻通り午後7時6分。バスは到着。
バス停から少しだけ歩いて横断歩道を渡ると、「酒の高橋」はすぐそこ。店の中には灯りがついている。しかし、暖簾が出ていない。看板の灯りが消してあるので何だか暗い。まさか、営業時間終了?スマホで確認すると「営業時間中」とある。まだ7時過ぎだしなー。でも、手一杯で、新しい客を入れられない状態なのだろうか・・・まあとにかく、入ってみよう。木の引き戸をグッと引く。
2024年08月31日
雨の夕暮れ・・・阿佐ヶ谷北六丁目「光」
朝から各地に大雨警報が出ていた。激しい雨が降ったかと思うと、降りやむ時間もあって、不安定な天候。目黒区には洪水警報。バスが目黒川の端に差し掛かると、やはり水位の高さが気になる。目黒川を過ぎると、程なく目黒駅。今日は午後から新宿、高円寺と仕事で回る予定だ。新宿は一時的に強い雨が降っていたが、高円寺に着いたころは小雨になっていた。高円寺の仕事を終えると、夏の終わりの夕間暮れ。夕食にはまだ早い時間だが・・・。
高円寺純情商店街を北に向かって歩き、早稲田通りに出る。「高円寺通り」というバス停から阿佐ヶ谷行きのバスに乗る。警報が出ているからか、バスには自分ともう一人の買い物帰りの女性が乗っているだけ。長靴にレインコートという出で立ちからすると、出かける時はかなりの雨だったと思われる。
バスは次の「大和町三丁目」を通過して、「お伊勢の森」という印象的な名前のバス停に到着する。そこで女性客が降りて、乗客は自分一人。小雨振る家並みを眺めながら、ゆったりした気分に浸る。お伊勢の森とは、阿佐ヶ谷駅北口にある神明宮(天祖神社)がかつてあった場所だという。なんとなく、神聖な気がする「東原」というバス停を過ぎると、次は「阿佐ヶ谷北六丁目」。案内放送が流れたところで、降車ボタンを押す。
バスを降りると、雨はさらに小降りになっていた。傘を差すまでもなく、目の前には、もう目的の店がある。中華料理と書かれた赤い暖簾、店の前には配達用のバイク。暖簾の上の赤い軒先テントには「光」と大きく書かれている。
2024年08月29日
ある夏の午後・・・阿佐ヶ谷「珈司」
8月も終わりが見えてきて、大型の台風が西から近づいているというある日の昼下がり、自分は午後1時10分に職場を出た。半日勤務を今日選んだのは、この夏を振り返る時間が欲しかったからだ。はたして自分はきちんと成果を上げていたのだろうか・・・。というわけで、午後2時開店の中野「第二力酒蔵」に向かう。
店の前には開店5分前に到着。早くも開店を待つ人々で賑わっている。しばらくすると店長が暖簾を出して、「どうぞ。いらっしゃいませ」と声を掛けると、次々に客が入っていく。それが落ち着いたころ、自分も暖簾をくぐる。店長に挨拶すると、テレビ前のカウンター席の端っこ、いつもの席に案内してくれる。
席に座ると、係のお姉さんが「キリンビール(800円)でいいですか?」と言いながら、おしぼりとお通し(無料)を持って来てくれる。「今日も暑いですからね。やっぱりビールで。」と答える。テレビのワイドショーは台風の話題。「東京は日曜日が大変みたいですね。」と心配顔でお姉さんが、ビールとグラスを届けてくれる。
「刺身盛り合わせ」(1600円)と「鮎の塩焼き」(900円)を注文して、ビールを一口・・・くー、乾いた喉に沁みわたるよー。んめー。お通しは酸味のきいた野菜の和え物。さっぱりしていいねー。昼間なので、酔っぱらわない程度にゆっくり飲む。この夏もいろいろなことがあったなと。物思いに耽る。「刺身盛り合わせ」が届く。鰹、鯛、鰤かな。鰹を一口・・・分厚い切り身・・・口の中に鰹の風味が溢れる・・・美味い!ビール、ビール。
2024年07月28日
再会と別れ・・・新宿思い出横丁「ひさご」
1946年創業。思い出横丁の中でも最古参の一つ。しかし、初めての人には入りにくい店のひとつだろう。まず、暖簾がない。サッシの戸は解放されていない。どこかの事務所のような感じもする。炭火の焼き鳥がメインのはずだが、あまり焼き鳥を食べている人はいない・・・。年季の入った看板には「ひさご」とある。
平日の午後3時、「藤の家」の帰り、逆に出勤してきた「ひさご」のマスターにバッタリ会った。「あれっ、久しぶりです!」と声をかけると、「久しぶりだねえ。元気だった。」とマスター。これをきっかけに、立ち話を少し。常連のYさんやマスターのお兄さんが去年亡くなったことを聞いて、驚いた。「そんな話をゆっくりしたいから、近いうちに来てよ。」とマスターに言われたら、「ええ、必ず。」と答えるしかない。
というわけで、今にも雨が降り出しそうな夕方、久しぶりにサッシの戸を開けた。「マスター、来ましたよ。」「ああ、いらっしゃい。何年ぶりになる?」「コロナを挟んでですね。」コロナ禍の時期を思い出してみると、思い出横丁も一斉に店を閉じた時期もあり、アルコールを出さずに営業を試みた店もあり、また、批判覚悟で通常営業を一軒だけ始めた店もあり、さまざまだったが、収まるにつれて、店は開いていった。でも、他の店が営業を再開しても、頑なにシャッターが閉まった店が二つあった。それが、「藤の家」と「ひさご」だった。そして、ついに「藤の家」が再開しても、「ひさご」は、なかなかシャッターを開けることはなかったのだ。
2024年06月25日
6月の夜・・・新宿十二社「品川亭」
今にも雨が降って来そうな夕暮れ、職場を出て来た。バスと電車を乗り継いで新宿駅で下車。西口改札を出て、地下道を歩く。新宿センタービルを過ぎて、新宿三井ビルの前から地上の道。空は相変わらず重い灰色だ。都庁を眺めながら、住友三角ビルを通りすぎ、ハイアットリージェンシー東京の横の歩道橋を上ると新宿中央公園。公園を横断するように歩くと熊野神社だ。その脇を通って、十二社通りに出て、交番が見えたら通りを渡る。細い坂道を上ると古い建物が見える。入り口には「品川亭」とある。
戸を開けると、右に小上がり座敷。テーブルを囲んで5人グループが座っている。左手はカウンター。手前に若いカップル。ちょっとスペースがあって、三つ目の席には女性の1人客。その右隣にはその女性のバッグが置いてある。女将さんらしい年配の女性がこちらを向く。「1人です。」と告げると、女将さんが厨房のマスターに声を掛ける。すると「一番奥の席で」とマスターの答えが返ってくる。改めて「カウンターの奥の席でいいですか?」と女将さん。女性の一人客の方がバッグをさっと持ち上げて「ごめんなさい。」と言う。「すみません。ありがとうございます。」と恐縮しつつ奥の席に座る。
「荷物はこちらに置いてください。」とのことで、壁ぎわの箱の上に置く。何となくお店の方々が戸惑っているように感じたのだが、それは小上がり座敷の5人グループも来たばかりだったようで、立て続けに客がいきなり来たかららしい。鞄を置いた箱の後ろは棚になっていて、ずらりとボトルが並んでいる。常連さんも多いようだ。それにしても何だか田舎の家に来たような、妙に落ち着く空間ではある。
2024年06月09日
新しい世界・・・新宿ゴールデン街「ドラゴンナイト」
土曜日(8日)、職場を午後5時に出ると、蒸し暑い夕暮れが待っていた。バスに乗ると冷房が心地よい。ぼんやりと外の景色を眺めながら、休日前のゆったりとした一時を楽しむ。目黒駅のホームは土曜日のこの時間なのになぜか混雑している。どうやら電車が遅れているらしい。やれやれ今日も満員電車で帰ることになるのだろう。
時間調整の停車もあり、渋谷からは立錐の余地もない状況になる。自分は恵比寿駅で運よく座れたのだが、自分の膝が前に立っている人の脚に押されて窮屈な態勢になっている。新宿に着くと、押し合いながら出口に人が溢れ、待ちきれずに入ってくる人たちとさらに押し合いになる。その間、発車ベルが鳴り続け、「ドアを閉めます。」という怒鳴るようなアナウンスが何度も流れる。
地下道を通って、サブナードへ。商店街を抜けて新宿区役所前に出る階段を上る。外に出て、ミスタードーナツ前の横断歩道を渡り、緑道に入る。それにしてもものすごい人だ。地上を歩いていたらここまでくるのに何倍も時間がかかっていただろう。少し歩くと「新宿ゴールデン街」の入り口だ。細い道を歩いて、3本目の通り、「一番街」に入る。時計を見ると午後6時。目的の店の開店時間だ。見るとドアが開いている。さて、入りますか・・・。
2024年06月05日
午後の風景・・・阿佐ヶ谷「サンドーレ」
6月最初の月曜日(3日)。今日は自宅勤務ということで、早起きしてパソコンで作業をする。3時間ほどして、気分を変えるために新宿へ。西口のカフェに入り、コーヒーを飲みながら作業を続ける。お昼過ぎにその作業を終えて、カフェを出る。会計の時にブレンドコーヒーが800円に値上がりしていたのを知る。
外に出て、電話を何件か掛けて、今日の仕事は終わり。後はのんびり過ごすことにする。まず、コクーンビルの書店に入り、新刊書をチェック。2冊の本を購入する。そうこうしているうちに時間は過ぎて、そろそろ午後1時40分。昼食はどうしよかなと考えを巡らす。そして、阿佐ヶ谷に向かうことにし、駅に戻り、中央線特別快速電車に乗る。
途中、高円寺駅で停車中に、駅前ロータリーの向こうにある焼き鳥屋「大将」が開店しているのが見える。午後2時。早くもお客さんが外のテーブル席に座り、駅前の風景をつまみにビールを飲み始めている。この手があったか、と今更ながらに思うが、電車のドアは閉まり、次の駅の阿佐ヶ谷に向かって出発してしまう阿佐ヶ谷駅到着。南口に出て、荻窪方向に歩く。飲食店が続いているが、ランチ営業の店はそろそろ営業が終了し、飲み屋はまだ開いていない。少し歩いて、文化学園大学附属高校に向かう道を辿ると、程なくパンの箱が積み上げられている店が見えてくる。古びた佇まいではあるが、人気のサンドイッチ店「サンドーレ」だ。
続きを読む2024年05月28日
月曜日の夜・・・阿佐ヶ谷「串カツ屋エベス」
月曜日(27日)は朝から蒸し暑さを感じる1日だった。進まぬ仕事に見切りをつけて、職場を出たのが17時50分ごろ。バス停まで歩いているだけで、着ているジャケットが邪魔になる。目黒行きのバスに乗り込むと、冷房が効いている。もうすぐ6月。早くも夏がやってくる。そして、明日は雨予報。まずは梅雨の季節を乗り切らねばならない。
山手線の混み具合は相変わらずで、これを毎日耐えてきたのかと思うと、我ながら気が遠くなる気がする。新宿駅で降り、中央線下りホームへ。「八王子」行き特別快速に乗り換える。こちらの電車もすごい混み具合。ため息も出ない。阿佐ヶ谷駅到着。改札を出て、南口ロータリーへ。時間は18時40分。もう街は夜を迎えようとしている。パールセンター商店街に入り、アーケードの屋根の中を歩く。ここもずいぶん店が入れ替わってしまった。ただ時折、昔からずっと頑張っている店を見つけると嬉しくなる。そして、当時の七夕の思い出が蘇ったりする。
パールセンターを奥まで歩き切ると、「ずずらん通り」という商店街に枝分かれしていく。こちらにはアーケードはなく、開放的な空の下に店の灯りが映えて、青梅街道まで150mほどの道が続いている。すずらん通りに入ってすぐの右手、クリオレミントンハウスという高級マンションの1階なのに、庶民的そのものの赤提灯が下がっている。入り口の外には木造りのおしゃれなテーブル席があって、小さな子どもを連れた若い夫婦が二組座っている。真新しい木のドアの上には「串カツ屋エベス」と店名が書かれている。
続きを読む2024年05月22日
よく晴れた昼・・・高円寺「山と樹」
うららかな五月のある日。お昼少し前。高円寺駅南口を出て、線路沿いの道を中野方面に歩く。朝は肌寒かったが、お昼に向かうにつれ、徐々に気温が上がり、歩いていると暑さを感じるくらいになってきている。爽やかな空気が心地よい。しばらく歩くと環状七号線が見えてくる。中央線の高架下の信号はちょうど青に変わったばかり。横断歩道に急ぐ。
なぜここを歩いているのか・・・。それはまた、中野の第二力酒蔵でのやり取りが発端だ。平日休みの日、開店まもない時間に暖簾をくぐると、ホール係のお姉さんが手を振って迎えてくれる。いつものレジ前の席にはすでにお客さんが座っている。「今日は、こちらの席でどうですか?」とお姉さんに勧められるまま、カウンターの真ん中あたりに座る。
「キリンラガービール(大瓶800円)をお願いします。」と注文して、ぼんやり壁にかかったテレビを眺める。程なくビールとお通しが届く。グラスにビールを注いで一口・・・いつもながらこの瞬間がたまらないなあ。すると、お姉さんが自分の焼酎ボトルを用意してくれる。ふとそのボトルを見ると・・・あれっ、また伝言メモが貼りつけてある。
「寄り道さんが「蘭鋳」に行った話をしたら、Nさんが喜んでましたよ。それでこちらの店もお薦めだということで、是非行ってみてほしいと・・・。」なるほど。「今度は近くて行きやすいんじゃないかって。」スマホで検索すると高円寺の環七沿いにあることが分かる。仙川「しば田」、三鷹「満月」、方南町「蘭鋳」とシリーズ化してきたなー。
2024年05月13日
5月の穏やかな夜・・・鷺ノ宮「立ち飲み ひらめいた」
土曜日(11日)、仕事を早めに切り上げて、新宿まで帰ってきた。新宿住友三角ビルのカフェに入り、調べ物をする。ipadにBluetoothキーボードを繋いで、インターネットの世界に集中する。昼間は気温も上がり、アイスコーヒー(360円)が美味しい。午後5時になり、気になっていた酒場に向かうため、席を立つ。
東口新宿区役所近くの酒場に入り、居合わせた常連のお客さんと話しながら、各ハイボール(600円)を2杯飲む。サービスで出された南部せんべいがやけにハイボールに合う。帰り際、新しく入ってきたお客さんが、新宿紀伊國屋本店に行ってきたという話を始める。本が高くなった、とお店のママさんが話題を受けると、そのお客さんが今日買った文庫本が1200円であったと言う。なるほど高くなったんだなあと実感するが、今飲んでいるハイボールの値段を考えると複雑な気持ちにもなる。
店を出て、西武新宿駅まで歩き、準急「拝島」行き電車に乗る。座席に回るとアルコールのせいかうつらうつらしてしまう。鷺ノ宮に着いて、北口に出るといつもとは違う方向に歩く。それは銀行のATMに行くためだ。用を済ませて、銀行を出ると正面にある店が目に止まる。戸を開け放したその店はオープンしたばかりのようで、5人くらい立てそうなカウンターには誰もいない。いつも自分がこの店の前を通る時は、シャッターが閉まっていたり、コアな常連さんらしきお客さんが何人か飲んでいたりして、なかなか入るきっかけがなかったのだ。誰もいないなら、入ってみるか。看板には「立ち飲み ひらめいた」とある。
2024年05月06日
地下の酒場にて・・・新宿歌舞伎町「新宿かっぱ」
連休も後半。5日は快晴で気温も30℃近くまで上がった。陽気に誘われたわけではないが、朝9時に家を出て、新宿までやってきた。西口の地下カフェで、普段はなかなか読む時間が取れない分厚い本を読む。ブレンドコーヒーはブラックで、モーニングのトースト類は食べない。
気がつくと、もう12時を過ぎている。あまり長居するのも申し訳ないので、そろそろこの辺で。本を閉じてレジに向かう。レジでは馴染みになった店員さんと一言二言。深々と頭を下げて送ってくれる店員さんに恐縮しながら、店を出て、階段を上り地上に出る。強い日差しと人の多さに一瞬で世界が変わる。
再び小田急はルク横から地下道に入り、高層ビル街方面に向かう。新宿中央公園で散歩でもしようかと思ったのだ。途中、「ブックファースト」に寄り、新刊書などをチェック。そこで、今日1つ買い物をしなければならないことを思い出す。もう一度、新宿駅に戻り、丸の内線の改札を横目に新宿3丁目方面に歩き、新宿サブナード商店街に降りる。
しばらく歩くと、飲食店街に入った左手に「アルペン新宿店」地下入り口がある。そこからビルに入って、地下2階から地上1階にエスカレーターで上がる。そこで、ランニング用のシューズを買う。前もって、調べていたので買い物はスムーズに進む。西武新宿駅はすぐ目の前だが、人通りの多さに、まだ地下の方がマシだと判断し、再び地下2階まで降りて、サブナードに戻る。時間は13時20分。直結している居酒屋「トラノコ」に久しぶりに行ってみようかという気になる。
「トラノコ」の入り口前にはランチメニューの表示。店内は6割ほどの客の入りと思われる。・・・そういえば・・・店の左に地上に出る階段がある。その階段を上っていくと歌舞伎町のセントラルロードという通りに出る。地上から行くと靖国通りをドンキホーテの前を入るとすぐだ。当然、地上の入り口にも「トラノコ」の看板があって、地下にある店の存在をアピールしている。しかし、その横に「大衆ビアホール新宿かっぱ」という看板もあって、同じ地下にその店があるのかなと思わせる。自分は地上から「トラネコ」に行ったことはなく、常にサブナードから入るのだが、「かっぱ」って店あったっけ?と常々疑問に思っていた。
続きを読む2024年05月03日
炭火の前で・・・池袋「ウタリ」
5月になった。連休前の木曜日(2日)、細かい仕事もあれこれあり、忙しくもあったが、これを乗り切れば連休という意識が働いてか、普段よりもテキパキと仕事が進んだような気がする。午後5時30分、職場を出る。曇り空で肌寒さを感じるものの、やはり春らしい気持ちよさもある。すっかり新緑の季節になった並木道をバス停に向かう。
バスで目黒駅に到着。目黒駅の混雑ぶりは驚くほど。目黒川の桜が満開だった時よりも人が多いような気がする。人混みを縫って、改札に入り、ホームに向かう。山手線外回り電車は予想通りの混み具合。なんとか掴むことのできた吊り革が救い。渋谷駅で多くの人が降りて一息つく。新宿、高田馬場と過ぎる。今日は「池袋」に向かっている。
池袋到着。改札を出ると、立ちすくんでしまう程の人混み。北口に行きたいのだが、そんな自由は許されないという物凄さ。西口に流れる人々の中に入ってそろそろと進むのが精一杯。やっと西口に出る階段を上り、地上に出る。北口方面に向かい、線路沿いの道を歩く。「伯爵」というレトロな感じの喫茶店を目印に左の道に入る。それにしても行き違う人々は中国人ばかり。店も中国系の看板が目立つ。ここは日本なのかと思うような雰囲気の中、目当ての店に急ぐ。やっとビルの看板の中に店名を見つける。最も地味な看板だ。
ビルの階段を2階へ。2階のフロアには違う飲食店があり、それを通り過ぎて、廊下を奥に進むと、民芸調の店がある。木の引き戸とそれに合わせた茶色の暖簾。そこには控えめに「ウタリ」と店名が染め抜かれている。変わった店名だが、アイヌ語で「仲間」と意味する言葉と聞いている。ご主人は北海道出身ということだ。
2024年04月28日
また来てくださいね・・・十条「斎藤酒場」
4月も終わりに近づいた。土曜日(27日)は、朝早い時間から仕事。早朝は雨だったが、意外に早く止んだ。ただ、日差しはなく、どんよりとした空模様の午後になった。今日は早めに職場を出るため、午前中から効率のみを追求。15時過ぎには職場を出れるはずが、バタバタと印鑑を要求されたり、予算の解釈の問題が起きたりと、ちょっとしたアクシデントが起こる。結局、16時ごろ無事に職場を後にすることができた。
バスで目黒駅へ。目黒駅から山手線外回り電車に乗り換え。土曜日のこの時間は、いつもなら電車は空いていて、ゆっくり座れるのだが、今日は朝の通勤ラッシュ並み。やっと乗れたものの、後ろからの圧力で電車から押し出されそうになる。なんとかギリギリドアが閉まったものの、苦しいことこの上ない。しかし、今日は次の恵比寿駅で降りる予定なので、数分我慢すればいい。耐えているうちに、恵比寿駅に到着。ドアが開いた瞬間にすごい力でホームに飛ばされる。
埼京線のホームに向かう。それにしてもとんでもない人混み。今日からゴールデンウイークが始まっているのだと気づき、納得する。埼京線のホームは、人は多くない。しかし、なかなか電車は来ない。やっと来た電車は「新宿」行きの各駅停車。それをやり過ごして、さらに待つ。やっと「川越」行き快速電車が来て、乗り込む。次の「渋谷」駅からは多くの乗客が乗ってくる。車内アナウンスはしきりに順番に奥に詰めるように促している。「新宿」駅ではさらに多くの人が乗り込んでくる。しかし、降りる人も多くて、自分はここで座席に座ることができる。「池袋」駅でも多くの乗客が入れ替わる。さて、あと2駅だ。
車窓からは灰色のテントのような曇り空が見えている。「板橋」駅を過ぎれば、次は「十条」。この街に来るのは2021年の5月以来。その頃はコロナ禍の真っ最中で、外部の方とはほぼオンラインで話をしていたのだが、珍しくその日は現地に出張。ただ物凄い警戒で、消毒、マスクはもちろん。相手との距離も遠かった。でも、久しぶりにリアルでの会合に、やっぱりいいなあと思ったのを覚えている。その時の十条駅前は再開発工事が始まっていて、白い鉄のフェンスがそここそに見られた。ああ、この街も変わってしまうんだなあとしみじみ感じたものだ。
北口改札を出て目に飛び込んできたのは、駅前のロータリーがまだ工事が続いていたことと、高層マンションが建っていたこと。あらー。とにかく駅の階段を降りて、ロータリーを右に回り込む。十条銀座の手前の小路に入ると、すぐに「創業昭和三年 大衆酒場 斎藤」と白い文字が染め抜かれた紺の暖簾が見える。2021年に来た時は、営業自粛中で、店はひっそりと灯りもなく佇んでいた。あの時は、もう一度この店に入ることはできるのだろうかと不安で一杯だった。そして、今日、やっと来ることができた。入り口横の窓が開いていて、店内がチラリと見える。懐かしいの一言。
2024年04月24日
行列に並んでみた・・・方南町「蘭鋳」
4月23日、火曜日。午前11時35分、地下鉄丸ノ内線「方南町」駅に到着。地上に出ると、今にも雨が降りそうな空模様。目的地は、1番出口から左へ歩き、信号2つめ辺りと聞いている。目の前は環状7号線。高円寺方面に歩けばいいということだな。ん?信号は・・・はるか向こうじゃん。
雨が降り出したら逃げ道がないな、と心配しながら歩く。1つ目の信号が遠い。佼成学園という学校が見えてくる。なるほど、この道は渋谷から阿佐ヶ谷へ向かうバスで通ったことがあるな、と思い出す。更に歩くと、立正佼成会大聖堂が威容を現す。でっかい建物だなあ。とするとその奥にある、これまたでっかい講堂みたいなのは、高校吹奏楽の甲子園と言われた普門館というわけか・・・。
そもそも、なぜこんな平日の昼前にこんな場所を歩いているか、というと、例によってまた、中野の「第二力酒蔵」に行った時のことがきっかけになっている。その日、自分は仕事帰りに「第二力酒蔵」に寄った。長居する気は全くなく、ちょっと気分転換という感じだった。いつものカウンター係のお姉さんはお休みの様で、他のお姉さんが自分のボトルを持って来てくれた。「あれ?何かメッセ―ジが書いてありますよ。」とお姉さんが怪訝な顔つきでボトルを渡してくれる。見ると、ボトルの首の辺りに白い紙がセロテープで止めてある。そこにメモが・・・「Nさんからのおススメです。方南町 中華そば 『蘭鋳』」
若鮎の天ぷら(1250円)をつまみに焼酎ロックをのみながら、メモを眺める。仙川「しば田」、三鷹「満月」に続いてのお題。方南町なら近いので、前の2店よりも行きやすい。Nさんといえばこの店の常連で、グルメ情報に詳しいらしい。いつものお姉さんもまたこういう情報には目がない。こうなると行って見たくなるなあ・・・。
続きを読む2024年04月21日
ついて来いよ・・・渋谷「富士屋本店」
午後6時過ぎ。東急東横線で渋谷駅到着。渋谷スクランブルスクエアのエスカレーターを上り地上へ出る。JR渋谷駅構内に入り、西口を目指す。金曜日の夜、もちろん尋常ではない人混み。例によって、外国人の「クレイジー!」という驚きの声が聞こえる。バスロータリーの横断歩道を渡り、渋谷フクラスのエスカレーターを2階へ。そして直結している桜が丘の歩道橋を渡る。歩道橋を降りて、桜が丘の坂を登る。すると、レトロな雰囲気の建物があり、外の立ち飲みテーブルでは多くのグループが盛り上がっている様子。手前には電光看板。そこには「富士屋本店」と書かれている。
開け放されたドアから中に入る。学生アルバイトらしい男性店員が出てきて、「お1人様ですか?」と問う。「はい。」と答えると、「ご案内します。」と店内の立ち飲み合みスペースに連れて行ってくれる。L字型のカウンター席その周りに立ち飲みテーブル。フロアを取り仕切っている、髭が特徴の店員さんが「カウンターの空いているところへどうぞ。手前か、真ん中か。お好きな方へ。」「じゃあ真ん中にしますね。」と言って、中に入る。右隣は女性の1人客。左隣は40代の男性1人客。鞄をカウンター下の棚に入れていると、自分の前にQRコードが印刷されたプレートが置かれる。
スマホで読み取り、ログインしてメニューを注文する。まずは瓶ビール、つまみは「おすすめ」の「ハムキャ別」と「揚げ物」の中から「ゲソの天ぷら」を選ぶ。カウンターの中には男性店員さんが、飲み物を作ったり、厨房から上がって来る料理を各テーブルに運んで行ったりと忙しく働いている。目の前にいるので、口頭で注文してもいいのだが、邪魔をしないようにスマホですべて注文を済すことにする。
2024年04月16日
独り占め・・・渋谷「芝浜」
午後から気温がぐんぐん上がり、上着を脱いでワイシャツ姿で仕事。桜もあっという間に散り、まだ4月も半ばなのに、季節は早くも初夏に向かっているようだ。職場を出たのは午後6時。目黒駅経由で渋谷へ。西口に出て、バスロータリーの横断歩道を渡る。再開発工事でなんとなく不自然な街の様子に失望しながら、東急プラザの右側から裏に回りこむ。そこで、ちょっとした用事を済ませて、さて、今日は?
月曜日というのに、渋谷中央街は大変な人出。ハチ公前スックランブル交差点はさぞやものすごいことになっているだろう。行き交う人々は、歓送迎会の季節でもあり、この春のいい陽気の中、楽しそうな表情で渋谷の街を歩いている。自分は中央街方向に戻り、さらに歩いて、東急井の頭線の高架下をくぐる。マークシティの側面を駅方向に歩く。
パチンコ屋と居酒屋「河童」の間を左に入り、そば処「信州屋」を通り過ぎると、4階建ての古い狭小ビルがある。かつてのように、木の細長い看板は出ていないが、テナントの電光看板の中にしっかりと「居酒屋 芝浜」という文字が見える。螺旋状の外階段を上る。2階のインド料理屋から笑い声が聞こえてくる。さらに上る。3階まで来ると、木のドアが開け放された、懐かしい店が待っていた。
2024年04月14日
帰り道・・・新宿思い出横丁「晩杯屋」
2年ほど前のことになるだろうか。新宿西口思い出横丁の「藤の家」に1人の女性客が来るようになった。スタイルが良くて、美人、さらに不思議な雰囲気を持つ女性で、いつも入り口近くの席に座り、外を見ながらハイボールを飲んでいた。耳には常に赤いイヤホンが入っていて、他の客から話しかけられるのを拒んでいるようにも見えた。
話をするのはママさんだけで、他の客はそのやり取りを聞いているわけなのだが、とても明るい様子で、これならちょっと話しかけてみようかなという気にさせる。それで、何人かが話しかけてみたようなのだが、そっけない返事の後、そっぽを向かれてしまい、あえなく撃沈してしまったという。
自分は2度ほどこの女性を見ている。1度目は隣に座ったのだが、外を見ながら飲んでいるので、誰か人を待っているのかなと思った程度で、あまり気にすることもなかった。2度目はちょうど入れ替わりのタイミングで、ママさんが「気をつけて帰ってね。これからどこかに寄るの?」と声をかけると、「近くにいい立ち飲み屋さんを見つけたので、寄って帰ります。」と答えていた。で、彼女が出て行き、自分が座る。他に客はいない。「今の女性、最近よく来てくれるのよ。」とママさん。「ああ、前に隣に座ったことがあります。不思議な雰囲気の方ですね。」「この前、浴衣姿で店に来た時は、他のお客さんが落ち着かなくなっちゃってね。」「ぷっ、目に浮かぶようです。」
何日か後、自分が思い出横丁の柳通りを通っていると、「晩杯屋」の入り口近くで、飲んでいる女性がいた。あれ、藤の家で会った人だ。なるほど、近くの立ち飲み屋ってこの店のことだったのか。でも、自分にはチェーン店にはあまり入りたくないなという先入観もあり、そのまま通り過ぎただけだった。夏が過ぎ、その女性はこの界隈ではもう見ることは無くなった。
2024年04月07日
中央線3駅・・・三鷹「満月」
4月3日(水)の事なのだが、前日小岩「けやき」で初鰹を食べたら、やっぱり中野の「第二力酒蔵」に行きたくなり、仕事帰りに寄ってみた。お客さんは予想通り多くて、どうかなと思ったが、いつものカウンター席が奇跡的に空いていて、座ることができた。お店のお姉さんが自分の焼酎ボトルを出してくれたので、オンザロックで飲むことを伝える。
「初鰹が入りましたよ。」とお姉さん。待ってました。そのために来たので嬉しい。お勧めのメニューを見ると「富山 ホタルイカわさ」とある。春を満喫しつつ、焼酎をロックで少し飲んで帰ろうと思う。その前にまずはビール(キリンラガー大瓶800円)を注文し、お通し(無料)の、梅肉とわさび漬けを乗せた豆腐をつつきつつ、待つことにする。
初鰹とホタルイカわさ(2350円)が届く。鰹の厚い切り身が食欲をそそる。そして、ホタルイカはツヤツヤ。醤油を入れた小皿が二つ用意される。鰹は生姜で、ホタルイカは山葵で。では、早速、初鰹刺しを一口・・・切り身が大きいので、口一杯に鰹の香りが広がる。春の味・・・んめー、満足だ。ホタルイカは山葵醬油をつけて・・・一口・・・ぷりっぷり・・・甘い・・・噛むとわたが中から出てきて、それが甘い身と一緒になってえも言われぬ旨みの爆発。美味しすぎる。ビールをグッと飲み干す。ふぃ〜。
ビールを飲み干したタイミングで、氷とロックグラスが用意される。芋焼酎(幻の露)を氷をたっぷり入れたラスに注いで、一口・・・いやー、この甘みがたまらないね。という感じで、飲んでいると、お姉さんが「いらっしゃったら、言おうと思っていたんですけど、また、美味しそうな店を見つけたんですよ。」とスマホの画面を見せる。ん?ラーメン屋さんか。このお姉さんはグルメで、ラーメンにも目がないのであるが、何せ休みが日曜日だけということでなかなか自分で行くことができない従って、仙川の「しば田」に行った時もそうだったが、「食レポ、お待ちしております。」と笑顔。今度の店は三鷹。近いといえば近いとも言えるが、なかなか足を伸ばす気になれない街でもある。「行けたらね。」とそっけなく答えつつ、行ってみようじゃないか、と心では決めてしまう。
2024年04月04日
はじめての街・・・小岩「けやき」
ここ何日かなのだが、割と緩い感じの勤務形態になっていて、午後は職場を離れて、出張ということが多い。今日(2日)も、なんと亀戸まで来て、打ち合わせという仕事だった。終わったのが午後4時前。連絡を入れて、あとは自由ということになる。JR総武線の「亀戸」駅に戻り、電車を待つ。「中野」行き電車に乗れば、自宅に近づく。「千葉」行きに乗れば、未知の世界に行ける。
路線図を確認すると、中野方面に向かえば、錦糸町、両国、浅草橋、秋葉原、御茶の水、水道橋・・・。こちらはだんだん馴染みのある駅に近づいていく。千葉方面だと、平井、新小岩、小岩、市川・・・。市川は千葉県なので、これから他県に行くのもなあと思う。この中で降りたことのある駅は、記憶は曖昧ではあるが「新小岩」。確か10年ぐらい前だっただろうか。じゃあ、その先の「小岩」という街に行ってみようかな。ちょうど千葉行き各駅停車が入線してくる。
電車に乗り、車窓からの景色を眺める。「旧中川」を渡る。「平井」という駅名を見た時、先日、阿佐ヶ谷の「バルト」でマスターが別れを惜しんでいた、スリランカ人の家族の引っ越し先であることを思い出す。ずいぶん街の様子も違うが、もう新しい土地には慣れただろうか、などと考えたりする。「荒川」を渡り、新小岩へ。沿線の桜がぽつぽつと咲いているのが見える。そういえば、今日のお昼頃、バスで目黒川の桜を見た。まだ咲き始めたばかりで、「お花見にはまだまだですね。」と乗客の人が話していたのを思い出す。さらに「新中川」を渡ると「小岩」だ。地元の人たちと共にホームに降り立つ。