2004年12月12日

野方「秋元屋」でかつての自分を思い出す。

先日「秋元屋」さんで飲んでいた時、おじさん2人組が入ってきた。そのうちの1人はかなり酔っ払ってやばい感じ。酔眼である。もう一人はしらけてる。2人は並んカウンターの中央に座る。「ビールと酎ハイくれ!」酔眼が言う。「くれ!」という言い方、最近聞かないよなあ。「ビールは生?瓶?」とマスター。「な、生だよ。生。」そんなにうろたえなくてもいいのにという答え方が可笑しい。結局、生ビールはしらけた方が飲んでいる。何にもしゃべらない。酔眼の方は上体が揺れている。
酔眼はそのうち、なぜか不機嫌になり大きな声でわめく。間髪をいれずに「静かに飲めないんだったら、お金は要らないから帰って!」とマスターがビシッと言う。「なんだと、俺は客だぞ!」なんだかテレビなんかでよく聞く台詞だ。「ウチのお客さんは静かな人ばかり。騒ぐのは客じゃない!」とまたしてもビシッ。酔眼は萎れる。その間、しらけた方はまったく関係ないという表情でタバコを吸っている。どういう関係だ?

程なく「お勘定」ということになる。しらけた方はホッとしたように立ちあがる。しかし、酔眼は自分の失地を回復しようとして、「悪かったな、おとうさん」などとマスターと融和をはかろうとしてグズグズする。「おとうさん」はいくらなんでもマスターには可哀想である。「はいはい。どっかで随分飲んできたの?」と優しいマスター。「それほどでもない」とこの期に及んで意地を張る酔眼。しらけた方はいつの間にか逃亡している。

なだめすかされて酔眼はやっと腰を上げ、フラフラと店を出る。マスターのすばやい対応で店の中には動揺は無い。もしかしたら気づいてない人もいるかも。さすが、プロ!

隣のお客さんと「しかし、あんなになるまで最近飲んでないなあ」という話になる。「一度、店から追い出されるくらい酔っ払ってみたい。」という無責任な会話になる。

・・・と言いつつも、実はそういう体験が自分にもあるのだ・・・。トホホな経験が・・・。

あれはまだ学生のころだ。その日、ある行きつけの居酒屋でグループで飲んでいた。そこは馴染みの店なのでいろいろサービスもしてくれて居心地がいい。マスターにも気に入られていた。そこで2時間ほど飲んで、爽やかに店を出る我々。「いつもどうもすみません」とマスター。理想的な関係である。

その後、2軒目、3軒目と回り、人数も少なくなってくる。最後は1人に。そこで帰ればいいものを、こう考えてしまったのだ。「自分があの1軒目の店に帰ったら、ビックリして喜んでくれるだろうな。」と。「おやっ、うれしいねえ、やっぱり飲むのはウチでなきゃ駄目ってことでしょ。」な〜んて言われたりして・・・。自分の考えに興奮して、死語を使って表現すると「ルンルン気分」で、その店に向かったのだ。

店に入ると、カウンターは誰もいないが、小上がり座敷にはグループ客が入っていて、マスターや女将さんは忙しそうだ。したがって、店に入った自分に気がついてくれない。あまりに予想と違う反応に肩透かしをくった自分は、カウンター席にすわり自分をアピールしようと考える。「マスター、帰ってきちゃったよ」・・・と言ったつもりが「まふたー、かえっちぇひちぃったよ」・・・完全にろれつが回ってない!

マスターも「あれ?酔っ払ってるじゃん。困ったなあ」という表情を見せる。いい客のイメージが壊れてしまう。しゃべるとやばいので、ニコニコする。平気だよ、酔ってなんてないです、というアピールだ。・・・黙ってばかりもいられないので「ビール・・・も、ら、お、う、か、な」一語一語確かめながら慎重に注文する。

小上がり座敷はカウンター席のすぐ横。グループは若い劇団員達らしい。服装が個性的だ。1人でニコニコしながらビールを飲んでいる自分に気を使って声をかけてくれる。「学生さんですか?」・・・困ったぞ。うまくしゃべれるかなあ。「ふぁい」やっぱりだめだ。「はい」まともに言えないぞ。でも、暗い人ねぇといわれるのも癪だ。慎重にしゃべれば大丈夫かもしれない。「この店しゅきなんでしゅよ。」・・・サ行以外はなんとか言えたぞ。

完全に開き直った自分は、このグループに仲間入りすることで、マスターにいい客であることを訴えようとする。なんとか、ろれつが回らないのを最小限に押さえつつしゃべりまくる。「この前、渋谷のハチ公前で夜、缶蹴りしたんれすよ。しょれでね・・・」などという話題。やさしい劇団員達は、面白がって自分の話を聞いてくれる。盛り上がってきたぞ。マスターも笑顔だ。

そのうち、調子に乗って話が飛びまくる。なぜか「広島カープ」の話題になって、「ひろしゅまかーぷの応援歌しゅってましゅかぁ」と口走る。誰も知らない・・・「じゃあ、歌いましゅ。カープ、カープ、カープ・・・」・・・忘れてる!あまりに酔っ払って、次が出てこない。ずっと「カープ、カープ、カープ・・・」ばかり歌ってる。そこで「応援歌はいろいろあって、これじゃない方がいいかな」などとごまかす。「青いグランド緑の風にぃー・・・」こっちは歌えるぞ。

劇団員達の手拍子でますます調子づく自分。知っている歌を歌いまくる。さすがに、「これは・・・」という空気が流れ始めていたはず。自分だけの世界に埋没する自分。「たのしゅいなあ、もう一曲うたおうかなあ」と言った瞬間、マスターの声が飛んできた「もう、いいかげんにしろ!」・・・ひえ〜、しゅみましぇ〜ん。我に帰る自分。劇団員達の気の毒そうな顔が並ぶ・・・。

次の日、謝りにその店にいった。「昨夜はすみませんでした」とわびると、「いやー、酔っ払ってたねー、何曲歌ったと思う?ほんとうにすごかった、もう、酔っ払って歌わないほうがいいよ。」・・・そんなにひどかったのか・・・、そこまでとは思っていなかったが・・・。改めて落ち込む。

それが唯一の「追い出され経験」である。(たぶん)・・・そんなことを回想しつつ、ホッピーを飲む。2軒目は今日はやめとこうかな・・・などと考えながら。

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この記事へのコメント
いつも、楽しく読ましていただいています。
まるで、自分がお店で飲んでいるみたいな
気分になれるのです。
秋元屋さんは、我が家から、歩いてすぐ近くなんですよ。
毎日、前を通り、、みなさん楽しそうだな〜〜
なんて、、うらやましく、、興味シンシンで、、
見ています。
でも、、基本的にお酒は、弱いし、
女性1人では、、、入りずらいかな。

これからも、楽しみに読ませていただきます。
突然の、メール、、失礼しました。(^^;)
Posted by いっちゃん at 2004年12月12日 23:11
いっちゃんさん、こんにちは。

こういうコメントをいただくと、頑張って書こうという気持ちになります。勇気の出るコメント、ありがとうございます。

女性1人のお客さんもよく見かけます。1度すっと入ってみれば大丈夫だと思います。

ところで秋元屋さんの近くに、かわいい猫がいるんですが、ご存知でしょうか(^^)
Posted by 寄り道 at 2004年12月13日 17:18
お返事ありがとうございます。

可愛い猫ちゃんがいるんですか〜。(^^)
明日から、、秋元屋さんの近くを、通る時、
キョロキョロしながら、、歩いて、みます。

我が家の、猫ちゃんは、夏に生まれて、シマシマ模様。
名前は、スダレにしました。
可愛い〜〜ですよ。(メロメロ)

カゼに気を付けて、寄り道楽しんでください。
Posted by いっちゃん at 2004年12月13日 23:08
寄り道さん、今日は。

昨日、秋元屋さんに寄らせていただきました。
24時間絶食後のホッピーが胃の腑にしみました。
味噌だれのてっぽーが美味しかったです。
Posted by しんちゃん at 2004年12月14日 08:20
この二人組みのおっさん達は先週の月曜日でした。
ご迷惑をおかけしました。
久しぶりに帰ってくださいって言ってしまいました。
なぜか昨日もはじめて一人できたおっさんが、うまくないもの食わせやがってどうしてくれるとか言いますんでちゃんと1700百円いただいて即お引き取りいただきました。もちろん次回からのご来店もお断りさせていただきました。
暮れのせいなのかいろんな人がいますなあ。


Posted by あきもとや at 2004年12月14日 11:13
いやいや。いろんな人が来るようになったということは、それだけ「秋元屋」がメジャーになったということで。(^^)
女性ひとり客も、「秋元屋」ご主人は大歓迎なのではないでしょうか!
Posted by 浜田信郎 at 2004年12月14日 23:36
秋元屋さん

書き込みのお客さんはどうやら、私が帰った後に来店された様ですね。

それにしても、1.700円ですとかなりの量を食べていると思いますが、その後に文句を言うとは、なにか下心でもあったんでしょうか。
Posted by しんちゃん at 2004年12月15日 07:41
いやはや… いろんなお客さんがいますね〜

あきもとやさん!
御無沙汰しております。近々伺います。金宮!金宮!

寄り道さん
初めて書き込みさせていただきます。
先日はお疲れ様でした。楽しかったですね。
つい最近、恵比寿のNにてハイボール10杯も流し込んでしまいました。見事撃沈。

それではみなさまごきげんよう(←えらそうですね…)
Posted by キンミヤ at 2004年12月15日 15:18
>いっちゃんさん
野方近辺には猫が多いです。東京三菱銀行横の路地を入って、喫茶店の先の家にペルシャ猫がいるんですが、可愛いですよ〜。都立家政商店街の「上原たばこ店」の猫も可愛いし・・・。まあ、自分が飼っている猫が最高なんですがね(^^) スダレちゃんのご機嫌はいかがでしょうか?

>しんちゃんさん
24時間絶食した後にホッピーを飲むというのが素晴らしい!
そんな時はたくさん食べられるものなのでしょうか?それとも、胃が小さくなってて食べられないとか・・・。
でも、お酒は関係ないですよね、きっと・・・。

>あきもとやさん
先日はご馳走様でした。さすがに美味しかったです。
それから、カッコよかったですよ!ビシッと決まってました。あのおじさん涙目でしたもん。
秋元屋さんなら女性1人でも大丈夫ですよね。何人か1人で来ている女性も見かけます。
いっちゃんさんがもし来られたら、よろしくお願いします。

>浜田さん
浜田さんの仰るとおりです。
秋元屋さんがメジャーになったということですよね。
しかし、それでなくても満員で入れないことがあるんですから、変なお客さんには遠慮してもらいたいものです。

>キンミヤさん
ハイボール10杯は飲みすぎです(キッパリ!)
しかし、キンミヤさんも相変わらず素晴らしい飲みっぷリですね。撃沈するまで飲むっていうのが潔くていいです。
ところで、野毛遠征はどうでしたか?そこでも激飲みされたのでしょうか。今度お話を伺いたいです。
Posted by 寄り道 at 2004年12月15日 16:29
>寄り道さん

野毛行きました。
まずは基本中の基本「武蔵屋」にて1年間の己の飲み方を反省し、来年はサラリと3杯まで男になろうと決心。(毎年決心してるんですけれど…)
続いて初体験の「ホッピー仙人」へ。
席に着くなり仙人と呼ばれるマスターがまるで薬剤師のような真剣な眼差しで調合(焼酎、ホッピー、ジョッキすべてキンキンに冷えています)。
う、うまい… 焼酎はなんと金宮!横浜で出会えるとは思いませんでした。
仙人と金宮談義などなど。
お客さんもホッピー愛に満ちた方ばかりでした。
いいお店です。
帰りは男3人でみなとみらい付近を散策し渋谷まで熟睡して戻りました。

取り急ぎ御報告まで。(←業務連絡っぽい…)
Posted by キンミヤ at 2004年12月16日 14:16
キンミヤさん、完璧じゃないですか!
武蔵屋からホッピー仙人というコース選択が素晴らしい。
さらに、「みなとみらい散策」「電車で熟睡」とくればこれ以上は望めませんよ。羨ましい・・・。

これを読んだら、絶対行きたくなります。
Posted by 寄り道 at 2004年12月16日 17:04