2005年02月03日

樽酒のつまみは「会話」・・・中野「路傍」

3b97f944.JPG昨日(1日)、今日(2日)と忙しかったが、仕事が終わってほっとした・・・ところでやっぱりどこかによって帰ろうかな。新宿で乗り換えた中央線各駅停車は「中野行き」。中野で降りて三鷹行きを待とうかなと思いつつも、足は北口改札に向かってる。今日は楽しくしゃべりながら飲みたいな。向かうは「路傍」だ。

「路傍」ほど会話の弾む店はない。ご主人と女将さんが中心となって、いろいろな話題が飛び交う。もちろん黙って飲んでいてもいいのだが、適当に話をふられているうちに、気がついたら会話に入っているという感じなのだ。今日のようにホッとした日にはもってこいの店なのだ。

「路傍」ある小路に入る。広島の酒「千福」のマークが輝いている。さてっと、引き戸を開けてっと・・・ガタッ、ガタッ・・・あ、開かない。「やります、やります。」とマスターの声。ガタンと戸をちょっと持ち上げると、すっと開いた。「いらっしゃい。」「どうも。」

先客は2人。J字型カウンターの長い方の下辺りの席に1人。白髪のおじさん。カメラがカウンターに置いてある。もう1人は曲がった方の先端の席。それとは逆の端っこの席に座る。すぐ右横に千福の4斗樽が2つ置かれている。

もちろんこの店では、樽酒。まず樽の栓を抜き、大き目の片口で流れ出て来る酒を受ける。受け皿の上に一合枡が置かれ、皿に零れるくらいに注がれる。添えられた粗塩を枡の縁に乗せて、持ち上げる。酒の表面がぷるぷる揺れる。こうなるとどうしても口から迎えに行く事になる。ゴクッ。うま〜い!

左隣のおじさんはカメラが趣味らしい。この店はどうやらはじめて。生揚げを焼いたものと、煮こごりをつまみに樽酒を飲んでいる。もう1人の男性は比較的若いが常連さん。やはり樽酒。つまみは冷奴。

話題は美味しい豆腐屋さん。青大豆で作った豆腐で風味が豊からしい。以前その豆腐をお土産に持ってきたお客さんがいて、そのうまさにもう一度食べたいと思った若い常連さんが、わざわざ遠くの駅まで行って探したが店が分からなかったという。「どこの駅ですか。」と聞いてみる。「武蔵新田」とマスター。「東急線線沿線だからね。食べるものが贅沢なんだよね。」すると若い常連さんが「えっ、矢口じゃないの。」「住所は矢口だけど、駅は武蔵新田。」と女将さん。地図を出して確認する若い常連さん。「商店街に入って、そう、郵便局があるでしょ・・・」女将さんが説明する。・・・よっぽど美味しい豆腐に違いない。

カメラのお客さんも興味を持ったらしく、「私も豆腐が好きでね・・・」と語り始める。「一番すきなのは揚げだし豆腐だね。」それにマスターが反応。「おいしい豆腐はやっぱり生で食べないと。火を通すと風味が消えちゃうよ。」女将さんが「寄せ豆腐も美味しいですよね。」・・・こうやって話が盛り上がっていく。

お通しは「野菜の煮物」。甘い味付けで美味しい。粗塩をのせては酒をぐいっと飲む。会話も弾んで楽しくなってきたぞ。

それにしても、マスターと女将さんは両方とも話が面白い。笑わせるわけではないが、話題の選び方や発展のさせ方がうまいのだ。どっちかが喋るタイプだと、片方は寡黙なタイプが多いのに、この夫婦は両方とも喋るタイプ。かといって大声でまくし立てるわけでもなく、むしろ穏やかにたんたんと語るタイプ。同時に聞き上手でもある。

カメラのお客さんは飲むペースが速い。だんだん饒舌になる。話はなぜか牛丼の話題に。「吉野家の牛丼しか美味くなかったよね。」そこで自分が反応。「いやいや、自分は昔西荻窪に住んでましたからね。松屋文化です。松屋には吉野家とは違う味があるんですよ。」と主張。マスターは「サラリーマン時代によく食べてた、たつやの牛丼が美味かったなあ。豆腐と玉ねぎが美味いんだよな〜。」「えっ、たつやなんて知らないよ。知ってる?」と自分にカメラのお客さんがふってくる。「もちろん、隠れ牛丼ナンバーワンです。」「へえー。」・・・話は自然とBSE問題に流れる。マスターはBSE報道以来牛肉を全く食べていないのだ・・・。

樽酒をお替りして飲み続ける。いくらでも飲めそうなのが不思議だ。話が弾みすぎてつまみを注文するタイミングがつかめない。が、楽しいので自分も店に溶け込んでいく。

カメラのお客さんは関西なまりがある。「どちらのご出身ですか。」という話になる。「岸和田です。」「おお、だんじり祭りの!」・・・話は祭りの話題に・・・。なんでも岸和田には海に近い地域と、山側の地域と二つあって気質が全然違うのだそうだ。それで両方の地域にそれぞれだんじり祭りがあるのだが、気質が違うので全然雰囲気が違うらしい。テレビのニュースなんかでよくやってる、怪我人続出のだんじり祭りは海側地域の方。このお客さんは山側地域なので「おとなしい祭りです。」とのこと。「ジャイアンツの清原はどっち側?」「山側です。」・・・へえ〜、聞いて見なきゃ分からないもんだなあ。清原とだんじり祭り結び付けて、さすが岸和田の番長!などと言っている人多いんだろうなあ。

「祭りといえば、博多の山笠にいった時にね・・・」と若い常連さんが話始める。話題は「日本の祭り」に流れていく。山笠から浅草の三社祭の神輿の担ぎ手、さらに話題は青森のねぶたに・・・。話題はエンドレスに展開していく。席を立つタイミングも失っていく。でも、楽しい。楽しすぎる・・・。

もう1人お客さんが自力で戸を開けて入ってきたのを機に席を立つ。勘定を済ませて戸を開ける。今度はすんなりと開く。「おやすみなさい。」を声をかけて外に出る。「気をつけて」とマスターの声がかかる。

飲み屋街を抜けて中野駅に向かう。楽しい時間を過ごしたおかげで、疲れもふっとんだようだ。足取りも心なしか軽い。

この記事へのトラックバックURL