中野ブロードウエイ入り口の喫茶店「Miyama café」で持ち帰った仕事をこなす。日曜日(24日)だというのに・・・気がつけばもう夕方近い。そこで、北口の飲み屋街を散策する。すると、ある居酒屋の前に猫が3匹。おお、鰹節パックの出番か・・・そこに女性が現れて皿に入った餌を置いていく。猫たちよ、よかったなあ。親切な人たちに囲まれて・・・。
その隣の居酒屋を見ると、瀬戸内料理とある。むむむ、瀬戸内料理・・・いい魚をそろえているのかな。開け放しの窓からはカウンターの中が見える。そこには店主の姿があるが、店の方は暗い。開店準備中か・・・。店の前にはいろいろな貼り紙・・・地酒が自慢らしいな・・・ん、どっかで聞いたことがあるなあ・・・テレビだったか、雑誌だったか・・・。とにかく、百円の文字が躍っている。「牛タタキ百円」「冷酒百円」。なんだろ。暗い入り口から入って、店主に声をかける。「何時からですか?」「うちは5時半開店です。申し訳ございません。恐縮です。」丁寧な言葉が返ってくる。時計を見ると5時過ぎ。時間をつぶして、また来るか・・・。
飲食街のはずれ辺りに喫茶店がある。近づいてみると「かふぇ INN」という看板。音楽を聴きながらのんびりコーヒーを楽しむというスタイルの見せらしい。早速入ってみる。入り口近くテーブル席。その1つに中年の男性が座って、じっと音楽に耳を澄ましている。奥のカウンターに座って、「ブレンドコーヒー」を注文。「コクのあるのと、まろやかなのとがありますが。」迷わず「まろやかな方を。」BGMは「ノルウェイの森」だ。
カウンターで本を読みながら過ごす。それにしても、お酒の瓶が多いなあ。「夜はもしかしてBARなんですか?」「はい、6時からはBARになります。よかったら来てくださいね。」・・・なかなかいい雰囲気なので、一度ここでお酒を飲んでみたいなと思う。
本を読んでいるうちに、6時近くになる。「じゃあ、今度はお酒を飲みに来ます。」と言って席を立つ。さて、さっきの店に行ってみようかな・・・。
猫はもういない。ちょっと落胆しつつも、目的の居酒屋「味吉」に戻って暖簾をくぐる。入り口のところに「当店は立ち飲みではありません。」と書いてある。見ればすぐ分かるが・・・それほど安いといいたいのだろうか・・・。先客はいない。店主はまだ自分に気がついていない。「こんばんは。」と声をかける。はっと顔をあげた店主が「どうも、何度も来てくださって恐縮です。」と答える。
カウンターの真ん中に座る。「カウンターサービスはこちらです。」・・・カウンターサービス?8時まで「一番絞り」が300円。「キリン淡麗」が180円。ウーロンハイが100円、などとある。「一番絞りください。」「承知しました。」店主が奥に引っ込む。それにしても、カウンターの上にはおびただしい数の日本酒のメニューがカードに書き込まれて張り巡らされている。本当にこんなに置いてあるんだろうか・・・。確かにカウンターの中の冷蔵庫にはぎっしりと瓶が入っているが・・・。
奥から店主が出てくる。「お客様、どうもすみません。私今日、一番絞りの方をセットするのを忘れまして・・・。」「じゃあ、瓶ビールで。」「よろしいですか。では一番絞りと同じ値段でやらせてもらいます。恐縮です。」
瓶ビールは「アサヒスーパードライ」。グラスに注いでいると、「どうも、合わないお通しで恐縮です。」と言いながら店主が、もやしとワカメのサラダを置いていく。腰の低い店主だなあ。しかし、その割りに、「椅子に横すわりしないようお願いします。」をはじめ、さまざまな「注文」の紙が貼ってある。几帳面なのか・・・。
メニューを見る。う〜ん。たくさん美味しそうなものが並んでいるが、瀬戸内料理といえるものがない。唯一「ままかり」がそれに当たるか・・・。「ままかりと・・・」注文しかけたが店主の姿がない。あれっ。すると紙と鉛筆を持って出てきて、「恐縮ですが、よかったらこれにご注文をお書きください。間違えるといけませんから。」・・・客は一人だよ。10も、20も注文するわけじゃあるまいし・・・。まあ、それが習慣なのだろう。紙に「ままかり 厚焼き玉子」と書く。なんだかこうしてみると間抜けだなあ。店主に紙を渡す。「あ、恐縮です。」
もやしとわかめのサラダは和風のしょうゆ味で美味しい。「これ、美味しいです。」というと「恐縮です。」という答えが返ってくるのだろうか。そんなことを考えながらビールを飲む。「厚焼き玉子(250円)」が出てくる。寿司屋で出てくるような玉子焼き。刺身のようにスライスしてある。わさび醤油で食べるのだ・・・うん、美味しい。すぐに「ままかり(380円)」が出てくる。ままかりは岡山の名産品で、あまり馴染みはないのだが・・・ほー、酢がしっかり効いていて美味しい。
そこに、常連さんらしき男性が入ってくる。「生?」「生!」・・・キリン淡麗のことらしい。「あとタタキね。」・・・百円の「牛タタキ」だ。よく冷えた「生」をグイッと飲んだ頃、「合わないお通しで恐縮です。」と店主。常連さんにも「恐縮」なんだなあ。
百円とは思えない「牛のタタキ」が出てくる。常連さんは美味しそうに一口食べた後、「生、もう1杯ちょうだい。」・・・ふむふむ、このタタキなら美味しそうだ。百円というのでちょっと警戒してしまったが・・・。常連さんは、2杯目の「生」を飲んでさっと席を立つ。さすが常連。安上がり!
せっかくだからお酒飲んどこうかな。「お酒は何種類くらい置いてるんですか?」「555種類です。」「そんなに!」「恐縮です。」・・・う〜ん、どうしよう。全国地図にそれぞれ各地の酒が書いてある。広島の料理がなかったから、せめて酒だけでも・・・。「誠鏡本生吟醸(850円)ください。」
細長いグラスに入れられてお酒が届く。いい雰囲気だ。さて、一口・・・しっかりしているけどくどくない・・・飲み口は柔らかい。厚焼き玉子にわさびをつけて酒に合わせる。「美味しいなあ。」「恐縮です。」・・・ひとり言だったのだが、反応されてしまった。
そこに2人組が入ってくる。一人は50代、もう一人は後輩の30代という感じ。もうどこかで飲んできたらしく、顔が赤い。おどおどしながら入り口近くのカウンターに座る。店主が「カウンターサービスもございます。」と話しかける。すると50代が「つかぬ事をお伺いしますが・・・」と少々呂律の妖しい口調で話し始める。「山形の大山というお酒はありますか?」・・・「ございます。」「あ、あるんですか。」「それをお二つでよろしいですか?」「は、はい。」
「いやー、あったよ。ここならあると思ったよ。」「りょうさんに教えたいっすね。」・・・感激してるぞ。「大山」が届く。50代が一口。「の、飲んでみろ、すげー酒だぞ!」「い、いただきます。」・・・30代が一口・・・「こ、これは!酒じゃない!・・水だ、水!。美味しい水だ!」・・・よく分からんなあ。
さて、この辺で。「ごちそうさまです。」「恐縮です。」
外に出る。今日も仕事であっという間の日曜日だった。この時間は物寂しい感じがするなあ。少し風が出てきたようだ。猫たちの行方ももうわからない。
Posted by hisashi721 at 17:14│
Comments(7)│
TrackBack(0)