寄り道Blog

9月4日夜の大雨で、鷺ノ宮は自分が考えていた以上の被害があったようだ。閉店の貼り紙が出ているスナックがあると思えば、まだ開く目途の立たない店舗がちらほらあったりして、街を歩いているとあの雨のすごさを改めて感じさせる。

そんな中で心配だったのが「ペルル」だ。翌日から「５・６・７　お休み　すみません」という紙がドアに貼られていたからだ。急いで書いたらしく、字がちょっと違っていたり、「ペルじい」という署名もなんだか乱れているような気がする。やっぱり、雨で店の中に水が入ってしまったのだろうか。いや、それだったら3日間に限定できないのでは？2階の灯りもついていないし・・・。マスター、一体何があったの〜。

というわけで今日（8日）は、是非とも7時の開店時間に店に行かなくてはと張り切って仕事を終わらせ、急いで鷺ノ宮に帰ってきた。店の前に着いたのは、開店１分前。看板に灯りは入っていない。店の前で待とうかな・・・。しばらくするとマスターの声が店の裏から聞こえてくる。マスター、無事でしたか！

ドアが開く。夜の間店の中に置かれている自転車を持って現れたのは・・・あれ？常連のＫさんではないか。「こんばんは。」「ああ！どうも。」それに続いて看板を持ってマスターが現れる。「どうも、どうも。」「て、手伝いますよ。」

店の前に置いてある、自転車をドアの横に移動させながらマスターに尋ねる。「店は大丈夫だったんですか？」マスターの変わりにＫさんが答える。「天井まで水が入ったらしいよ。」「ええっ、や、やっぱり！」「冗談、冗談。心配してたんだけど、店はなんともなかったらしいよ。」「じゃあ、3日間の休みは・・・」「あのー、温泉に行ってまして。」「り、旅行だったんですか。」へなへな。

自転車に乗って現れたのは、やはり常連のOさん。「大丈夫でしたか。」と心配顔で尋ねる。「旅行だったらしいですよ。」「ああ、そうですか。てっきりこの前の大雨で・・・。」マスター、旅行のタイミングが・・・。皆で開店準備をし終えて店の中に入る。入り口近くのカウンター席に3人で座る。

マスターが「お土産です。」と包みを出してくれる。開けてみると日本酒。「日高見　吟醸」、宮城県石巻市の酒だ。「宮城に行ってたんですか？」「ええ、秋保温泉というところに。」・・・仙台の奥座敷だ。「旅行に行く時はいつも言ってくれるのに。」「いやー、急に決まったものですから。」

さっそく小さなグラスが出されて、酒が注がれる。「では、乾杯！」・・・一口・・・爽やか〜。スッキリした酒だ。「美味しい酒だね。」とＫさん。「じゃあ、これも。つまんでください。」とホヤの干物が出てくる。ホヤの干物は初めてだ・・・じゃあ、一つ・・・ん、ホヤの香りが残ってる・・・当たり前か。「これも、どうぞ。」と出てきたのは、茄子の漬け物。じゃあ、これも一口・・・塩が効いている上にほのかな酸味が加わる。美味しい！酒、酒。

Oさんは、沖縄の方で一昨日帰ってきたところ。お土産を持って「ペルル」に来てみたら、お休みの貼り紙がある。心配になって今日は開店に合わせてきたそうだ。Ｋさんは近所の方で、自宅は大丈夫だったのだが、近所の状態を見て心配になって翌日「ペルル」に来て見た。すると貼り紙が・・・。みんな心配していたんだなあ。

それぞれボトルを出してもらってウイスキーに移行。「マスター、雨はどうだったんですか？」「幸い、この辺りは大丈夫だったようです。」「よかったですね。」「本当に。」それで、この話題にも一区切りつく。

沖縄のお土産の「ドラゴンフルーツ」をいただきながら、ふと気づく。今この店にいるのは沖縄出身のOさんと、秋田出身のＫさん、長野出身のマスター、広島出身の自分。地方色豊だなあ。食べ物にしても、秋田ではね、とか、沖縄にはないですね、とかそういう話になって面白い。そこにお手伝いの大学生の女性が入ってくる。「あれっ、久しぶり。どこか行ってたの？」「ええ、福井に帰ってて、今日帰ってきたんですよ。」・・・福井！またまた地方色が豊かになったぞ。

虫の音がどこからか聞こえる。昼間は33度まで上がったというのに、夜が更けると秋の風情だ。いろいろあった夏も、もう思い出の中に消えようとしている。もう少し飲んでいこうかな。マスターがカウンターの向こうで笑っている。