秋風にゆれるカーテン・・・鷺ノ宮「ペルル」
今日は少々寝不足だったので、早めに仕事を切り上げて鷺ノ宮に帰ってきた。7時少し前だ。この時間だと、「ペルル」のマスターの顔を見て帰ろうという気になるのは仕方ないなあ。8時まで飲んで帰ろうと自分に言い聞かせて、路地に入る。
自分の10メートル先を若い女性が歩いている。その女性が「ペルル」のドアを開けようとする。ところがまだ開いていないので、裏に回っていく。何だ?・・・ああ、今日のお手伝いの大学生か。自分がドアの前に着くと、そこでマスターが出てくる。「どうも。」先週と同じようなパターンになってしまったぞ。
この前と同じく看板出しを手伝って、カウンターの真ん中に座る。マスターと手伝いの女性が、こまごまとした準備をしているのをぼんやり眺めながら、聞くともなく流れてくるラジオに耳を傾ける。いつものように7時のNHKニュース。これがまた風情があるんだよな。しばらくして、ボトルと氷(500円)、水(無料)が自分の前に並べられる。
メーカーズマークの水割りを作って、一口・・・ふぅ〜、この瞬間に一日が報われる。今夜はとても涼しいので、冷房はつけずに窓が開け放たれている。カーテンが風に揺れている・・・・まごうことなき秋。しばらく飲んでいると、ラジオのアナウンサーが「カープの野村謙二郎選手が引退を表明しました。」というニュースを読んでいる。ついにこの日が来たか・・・怪我さえなければ、もっとすごい記録を作ったはずの名選手・・・お疲れ様。「1番ショート野村」に乾杯!
「マスター、サラミ(500円)ください。」と注文。ここのサラミは、本当に美味しい。確かイタリアのサラミで、マスターが新宿のどこかで仕入れてくるのだ。普通のサラミと違って、ほのかな酸味が効いている。小皿にサラミが盛られて届く。一口・・・これ、これ、この味。バーボン、バーボン。
「そういえば、この前の大雨の時、マスターはどこにいたんですか?」「鷺ノ宮の駅。」「ええっ、それは大変だったでしょう。」「駅を降りたら雨が降り出したんで、階段の下で雨宿りをしてたんですよ。」「ふんふん」「しばらくすれば、小雨になるだろうと思って、階段のところで本を読んでたんですよ。」「そんな時でも読書とは、さすが。」「そしたら、ものすごい雨が降り始めて、これはとても帰れないなと・・・」「なるほど。」「そうこうしているうちに、水が出始めて・・・」「わー、大変!」「2時間くらい、そこにいたでしょうか。諦めて雨の中、裸足になってじゃぶじゃぶ帰りました。」「うわー」「本降りに・・・」「なって出て行く雨宿り」・・・川柳で話が終わる。大変だったんだなあ。
手伝いの女性が何か焼いている。「椎茸にバターをのせて焼いてるんです。」「へえー」「焼けたと思うので、1つどうぞ。」「いいんですか。ありがとう。」「焼けてなかったら言ってください。」うぐっ。一口齧ってみよう。おお、さくっとした歯ごたえ。バターが溶けて椎茸に美味く味が絡んでる。「美味しい!よく焼けてます。」「よかった〜。」この手伝いの女性は、福井県出身の大学生。面白いキャラクターだと、お客さんには大人気なのだ。
マスターと先日の選挙の話になる。「小泉さんの言う民意ってなんでしょうね。」とマスターの鋭い言葉。「言葉は時として現実にはないものを、あたかもあるかのように幻想を作り上げますからね。」とわかったような答えをしてしまう自分。その時、氷をアイスペールで割っていたお手伝いの女性が声をあげる。「ま、マスター、この氷斜めに割れていきますぅ。」一瞬沈黙のマスター。「小泉さんの言うとおり、人生いろいろ、氷もいろいろですね。」・・・なるほど。
時計を見ると8時5分前。ちょうど次のお客さんも入ってきたことだし、この辺で。「マスターごちそうさま。」「ありがとうございます。ちょうど1000円です。」
外に出る。涼しいなあ。風が気持ちいい。空の月もくっきりとしている。空気が澄んできたということか。しばらく歩いて振り向くと、古ぼけた「ペルル」の看板の灯がやけに温かく見える。
Posted by hisashi721 at 19:07│
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寄り道さん今晩は、SIGERUです。
ペルル、いい雰囲気ですね〜。
椎茸は大好物なので、ご相伴したかった……。
ちょっと仕事が立て込んだせいもあって、あれから鷺ノ宮には不義理してます。
また近いうちに「寄り道」したいと思っています。
はじめまして〜。昔住んでいた界隈なので、懐かしく読んでおります。ただ、今日は20日!どうしましたぁ
SIGERUさん、こんにちは。
ペルルには、ますますはまり込んでしまいました。「鷺ノ宮」にもちょくちょくいらしてくださいね〜。お待ちしてます。
ぴぐさん、こんにちは。
ご近所にかつてお住まいでしたか。これからも、よろしくお願いします。また、頑張ります。