寄り道Blog

今夜は寒い。昼間から凍えるような風が吹いていたが、そのまま夜に入って、ますます風に鋭さが加わったようだ。こういう夜は暖かいものでも食べたいものだ。しかし、中野駅に降り立った自分には少し違った目的がある。というのも・・・今日中に目を通しておきたい資料を抱えていて、最初はどこかの喫茶店で読もうかと思っていた。しかし、その後、飲みに行くのでは時間が遅くなってしまう。なんとかそれを一緒にして・・・そうだ！飲みながら、読めばいいんだよな、と考えてしまったわけだ。

とはいえ、そんなことはどこの店でもできることではない。居酒屋で仕事をしている人はめったにいないだろう。ここはバーで、ゆっくりゆっくり飲みながら、パラッパラッと資料をめくる。これなら大丈夫なんじゃないかなあ。それなら、候補は一つしかない。中野のレトロなバー「ブリック」だ。「ブリック」のバーテンダーさんたちは話しかけると気さくに話してくれるが、こちらが考え事をしている時などはそっとしておいてくれる。照明も明るくはないが、読書できるくらいだ。そうそう。ブリック、ブリック。

寒いので足早に北口ロータリーを渡る。サンモール商店街入り口手前を右に進みケンタッキーフライドチキンの前で左折。真っ直ぐ歩いていく。店に近づくと、内側から若手バーテンダーさんがさっとドアを開けてくれる。カウンターの中からベテランのバーテンダーさんが、「いらっしゃいませ。」と声をかけてくれる。コートを入り口のバーテンダーさんに預けて、空いている席へ。自分のボトルがさっと用意され、カウンターの上に置かれる。席に座ると、おしぼりがでてくる。そのおしぼりを手に取ると、「ソーダ割りでよろしいですか。」と尋ねられる。「はい。ソーダ割でお願いします。」

鞄から資料を取り出す。目の前に「カナディアンクラブ」のソーダ割がすっと置かれる。一口・・・ふわ〜、爽やかで軽い飲み口・・・香りが口の中に広がるぞ・・・いいなあ・・・でも、ゆっくり、ゆっくり。資料を読み始める。BGMのジャズが遠くなっていく。



資料の区切りごとに、ウイスキーを一口。お通しの「松の実」をぽりっ。資料をパラッ。・・・そうだ。おつまみを注文しようかな。この店に来る楽しみの一つが美味しい料理なのだ。えーと・・・「すみません。プレーンオムレツ（400円）、お願いします。」「はい。」自分の前のバーテンダーさんが店の奥に向かって「オムレツ、１（ワン）です。」と注文を通す。明瞭な口調がすがすがしい。ウイスキーを一口。

カウンターはほとんどが2人客。大声を出す人もなく、資料に集中できる・・・って、もうグラスが空だ。グラスをちょっとあげて「お替りをお願いします。」と告げる。程なく2杯目のウイスキーソーダが届く。一口。で、資料、資料。

オムレツが届く。早速、ケチャップをたっぷりかけて一口・・・とろ〜り、ふわふわ・・・卵そのものの味をいかしたシンプルな味付け・・・美味しー。ウイスキー、ウイスキー。いいなあ。やっぱりブリックのオムレツは最高だね。また、ウイスキーを一口・・・はぁ〜・・・いけない、資料読まなきゃ。パラッ。



3杯目を注文。バーテンダーさんがボトルの残りを確認。おお、ボトルが空いてしまったか。最後の一杯が届く。ふ〜む。次のボトルを注文するかな・・・「すみません。ウイスキーのメニューを見せてください。」「どうぞ。」え〜と・・・バーボンもいいけど・・・次はスコッチ系で・・・ん、ホワイトホースか。福島泰樹の短歌「桜木町激しき雨の朝に死す白馬一瓶涙一盞」が頭をよぎる。白馬一瓶はいうまでもなく「ホワイトホース」だ。上野桜木町で飲んでみたくなる歌よな〜。「次のボトルはホワイトホースで。」「はい。」

目の前に新しいボトルが置かれると、早速飲みたくなるもの。早めにグラスを空けてしまう。ホワイトホースのソーダ割りが届く。さて、一口・・・ふ〜む、スコッチ独特の味わいは残しながらも、飲みやすい・・・すっと喉の奥に届く感じ・・・美味しい。これもいいなあ。・・・で、資料、資料。

ホワイトホースを2杯飲むうちになんとか資料を読み終える。ふー。忘れないように要点をメモして、終了。一口残しておいたウイスキーを飲み干して席を立つ。「ごちそうさま。」「ありがとうございます。」

コートを着て外にでる。冷たい風が頬に当たる。ウイスキーソーダ5杯は適量らしく、冷たい風の中でも心地よい。急ぎ足で駅に向かいながら、明日の予報が雨であることを思い出す。そういえば雨の中を久しく歩いていない。