「三条へいかなくちゃ 三条堺町のイノダっていう コーヒー屋へね」・・・高田渡の「コーヒーブルース」。昨年、亡くなったとき50代半ばと聞いて驚いた記憶がある。あの風貌からして、老人だと思っていたから。曲はそれほど聴いたことはないのだが、中央線沿線のよしみで高田渡には親近感を抱いていた。
だから、広島で「イノダコーヒー」を見つけたときは、ああ、あの「三条堺町の・・・」と曲を思い出し、嬉しかったものだ。広島の老舗デパート福屋の広島駅支前店地下1階。この店のコーヒーは本当に美味しい。
35℃を超える日が続く広島。仕事が終わって少し時間ができたので、駅前地下道に入る。福屋デパートの地下2階からエスカレーターでひとつ上の階へ。イノダコーヒーの広島店はカウンターがとても落ち着く。ゆったりとした椅子に座り、笑顔で迎えてくれる店員さんに、「アラビアの真珠(441円)をお願いします。」と告げる。
「ミルクはお入れしてよろしいですか?」「お願いします。」少しの会話だが、なぜか心がなごむ。カウンターの中で丁寧にコーヒーを淹れている店員さんの手元を見ながら、のんびりと待つ。今日も仕事が終わり、こうして静かな時間を持つことができたことに喜びを感じながら・・・。
「アラビアの真珠」が届く。アラビア産のモカ・マタリをベースにした深炒りブレンドだ。すっと最初の一口を楽しむ。酸味と苦味のバランスがとてもいい。ほっと一息だな。読書などをして長居をする店ではない。純粋にコーヒーを楽しみたい。「オレの好きなコーヒーを 少しばかり…」と歌う在りし日のフォークシンガーを偲びながら、一口、一口ゆっくりとね。