寄り道Blog

夏は穏やかな季節。大きな出来事は起こらず、比較的のんびりと過ごす・・・個人的には、そう思ってきた。ところが、この夏は違っていた。大きな波を幾つも越えて、やっと秋にたどり着いたという感じ。この波瀾万丈の夏の体験を書けばいいのだが、超個人的な問題なので、もっと落ち着いてから、機会があれば書いてみたいと思っている。

で、そんな中でも、いろいろな寄り道は続いていたわけで、さあ、ブログの更新をしようと何度も思った。ところが、そんな時に限って大波が襲いかかり、大いに心が乱れてしまい、文章が頭の中から吹っ飛んでしまった。でも、８月末の大波が去ってからは、不気味にも平穏な毎日が続いているので、もう、そろそろいいかな、とおそるおそる頭を上げたところだ。どうか、もうしばらくこの状態が続きますように・・・。

まだこのブログが元気だった頃のことだ。阿佐ヶ谷のバー「アルフォンソ」でスコッチウイスキーを飲みながら、ふと思ったことがある。いろいろな街のいろいろな店をまわるのも楽しいが、結局、この「アルフォンソ」と、同じく阿佐ヶ谷の「川名」、それから中野の「ブリック」があれば、自分はそれでいいや・・・。もともと面倒くさがりの自分としては、近所でのんびりと安価で飲める店が安心だったのだろうか。

それがだんだん現実になってきて、特に今年に入ってからは、ほぼこの３店に、鷺ノ宮「ペルル」を加えた４つの店を、ぐるぐる回っていたのだ。だから、これらの店で、お会いする人たちとはちょっと親しくなって、楽しいお話しもする機会も増えた。だから、この安定した毎日はとても居心地がいいのだが・・・。

最近、「寄り道好き」がやっぱり「面倒くさがり」よりも強くなってきて、気がついたら新宿の裏通りっぽい所に出没していたり、降りたことのない駅に立って、さてどうしようかと考えていたりするようになってきた。ちょっと危ないか・・・。

という流れの中で夏がやってきた。大波に責め立てられ、７月の始めに体調を崩してしまった自分は、医者の心配そうな顔を見つめながら、こう考えた。そうだ。涼しい場所に行って「療養」しよう。・・・それで、８月お盆前に広島に帰り、そのまま中国山地の涼しそうな場所に向かったのだ。広島から芸備線で三次へ。三次駅には日本一美味しい駅弁「三次弁当」（２位は宮島口駅「あなごめし」）があるのだが、乗り換え時間があまりにも短く、今回は断念。

さらに芸備線で備後庄原へ。備後庄原は寂しい駅ではあったが、のんびりした空気が流れている。待合室でコーラを買って乾いた喉を潤した。ふう・・・旅情を感じるなあ。・・・でも、まだ目的地は遠い。駅から５分くらいの所に備北交通というバス会社の「庄原バスセンター」があるのだが、そこからまたバスに乗るのだ。実は、この「庄原バスセンター」までは、広島から直通の高速バスが出ていて、そっちの方が便利といえば便利なのだ。でも、芸備線で来たのは、途中の「玖村」という駅に自動改札機の上で寝る猫がいるというので、それを見てみたかったのだ。結局、夏は暑いので自動改札機には乗らないそうで見ることはできなかった。You Tubeで我慢するか・・・。



さて、庄原バスセンターで、ここにしか売ってない「りんごどらやき」を買って食べ（美味！）、しばらく待って「下高野山」行きバスに乗り込んだ。バスは市街地を走った後、山道に入る。道路は立派なので快適だ。景色は素晴らしい山林地帯へと変わり、途中、見るからに透き通っていて気持ちよさそうな川を車窓から眺めたときは、来てよかったと感動した。どんどん乗客が減って、自分以外には３人だけになったころ、車内アナウンスが「森脇」というバス停が近づいたことを知らせてくれる。降りるとき、人の良さそうな運転手さんが「ありがとうございました。気をつけて行ってきんさいね。」と声をかけてくれたのがしみじみとしてよかった。

「森脇」には、宿である「吾妻山ロッジ」の迎えの車が待っている。その迎えに来てくれた人が「今日は暑いですね。」と言う。そういえば、期待したほど涼しくない。とはいえ、この美しい自然の中にいれば、それだけですがすがしいというものだ。「よろしくお願いします。」と言って車に乗り込む。これから、さらに２０分かかるのだ。

見事な森林の中の道を走ると、山々を見渡せる広い場所にでる。そこに吾妻山ロッジはある。チェックインをすませて、鍵を持って部屋に。部屋の窓からは、吾妻山が眺められ、一面の草原に涼しそうな風が吹いている。部屋には冷房はない。外からの風で十分である。「療養、療養。」と呟く。

風呂に入り、北京オリンピックのスエマエの快挙をテレビで見ながらうとうとし、気がついたら食事の時間。食事場所にＴシャツとＧパン姿で向かう。理想の「療養」である。

食事場所は、レストランと大広間とがあり、自分は大広間の方だと案内される。比婆牛炭火焼きなのだ。「お飲み物は？」と問われる。「赤ワイン、フルボトルで。」と間髪を入れず答える・・・療養は・・・いいのか？　実は風呂上がりに缶ビールを自動販売機で買ってしまった。やっぱり、風呂上がりは、ビール、ビール！なのだ。美味しかった・・・体調は大丈夫か？　医者の心配そうな顔が脳裏をよぎる。

七輪の上の網に肉や野菜を置く。一瞬、消化によくないなのでは、と不安になる。身体が弱っているということは胃腸系も元気がないはずだからだ。でも、気のせいかここ一ヵ月の中で最も体調がいいような気がする。第一食欲が凄い、まるで海面に浮き上がってくる白鯨の様なのだ。いいぞ。比婆牛をさっと焙って、レア気味のところを一口・・・ほわ〜ん・・・溶ける・・・う、う・・・ワイン、ワイン！・・・ってのんびりしてると、焦げちゃうぞ。肉、肉、ワイン・・・。たまりませんです。すみません。ありがとうございます。

お刺身はついてるわ、天麩羅はでてくるわ、ん〜、こんなに食べちゃいけません！ワインのボトルも空いちゃうし・・・すみません！生ビールお願いします！いいのか？いいんですか？　ヤマメの塩焼きがまた・・・なんですか、この香り、芳ばしさ・・・ビール、ビール！肉もこんなにまだあるじゃん。焼酎かな次は・・・「嵩山」あるかな・・・。ロックでね。



ご飯までしっかり食べて、お腹はパンパン。夜風に当たりたくて、外に出てみる。ほー、涼しー。風が本当に心地いい。草原の方に出てみる。見上げると、凄い星空。幸せだなあ。明日は、山の方に行ってみよう。山の花々にも癒してもらわねば。流れ星を待ちながら、もうしばらく風に吹かれていよう。