この4年間くらい、ブログから遠ざかりはじめ、だんだん更新しなくなった時期のこと。かつてよく通っていたのに、ぷっつりと行かなくなった店がいくつかある。それで、この2年間くらい、少しずつそんな店に顔を出すようにしてきた。例えば、阿佐ヶ谷「川名」や荻窪「やきや」、鷺ノ宮の「ペルル」も実はそうで、顔を出さない期間が長かった。
それで、残ったのは二つ。野方「秋元屋」と都立家政「竹よし」だ。その「竹よし」の常連のFさんと、中野のバーや阿佐ヶ谷の居酒屋で、偶然何回かお会いした。やはり、その折りに出るのは「竹よし」の話題で、「マスターが、寄り道さんどうしてるかなあ、って言ってましたよ。」などと聞くと、ああ、行かなきゃなあ・・・と、その時は思うのだ。
で、なんで、その二つの店が後回しになってしまったかというと、それが単純な話で、西武新宿線で帰らなくなったという理由。高田馬場で人の波に押し流されながら、乗り換えるのが何となく嫌で、それで中央線の阿佐ヶ谷経由で帰るようになり、西武線沿線の店にご無沙汰することになったのだ。物事は単純な理由で、大きく流れを変えるものなのだ。
金曜日、午後6時50分、高田馬場に山手線で着いた自分は、久しぶりに西武新宿線の各駅停車の電車に乗り換えた。今日「竹よし」に行こうと思ったのは、自分のブログを何となく、読み返していて、「竹よし」の刺身盛り合わせの写真を見たからだ。おお、何かの巡り合わせだろうか。今日こそ「竹よし」に顔を出せということなのだろう・・・。
各駅停車の電車には空席があったので、座ってみる。なんとなく西武線の座席はJRより低い気がする。気のせいだろうか。そういえば西武線では、あまり座ったことがない。新鮮な感じはするが、少々お尻が痛い気もする。これも気のせいなのだろうか・・・。鞄の中から、今朝買ったスポーツ新聞を取り出す。スポーツ紙はあまり読まないのだが、今日は特別。昨日のドラフト会議の結果を詳しくチェックしたかったのだ。
ドラフトで指名された選手の写真の下には、それぞれコメントが添えられている。それだけ読めば、全員ものすごい選手なのだ。例えば「中央球界では無名だが、九州屈指のスラッガー。将来の4番候補。」とか「東北屈指の速球派投手。ダルビッシュ2世の呼び声も。」とか、「実績はないが、潜在能力は抜群。3年後のローテーション候補。」などなど。夢は膨らむ・・・・こういうコメントは実は当てにならないのだが・・・。
途中、急行と特急の待ち合わせがあったものの、新聞のおかげで、あっという間に都立家政に着く。この駅は階段がないので、すんなりと外に出ることができる。駅を出れば、すぐ右手に踏み切りがあり、それを渡れば2分くらいで「竹よし」だ。店は、商店街の一本次の小路にある。店の灯りが見える。何十回も通った道なので、久しぶりという感じはしない。
ガラス戸越しに見えるカウンターには4人くらい座っている。すると、空いている席は二つ・・・だっけ?たぶん。ドアを開ける。「こんばんは。」調理をしていたマスターが顔を上げる。「いらっしゃいませ。あれ?」「お久しぶりです。」「おお、寄り道さん・・・久しぶりですねー。」・・・これくらい驚いてもらうと嬉しい。気づかれなかったら寂しいしぃ・・・。
一番奥の席に座る。すると目の前に見慣れない光景が・・・。若い女性が立っている・・・。にこやかに「いらっしゃいませ。」と言っている。「お飲み物は」と聞いている・・・ということは、マスターの新しい奥様?????? 「え、あっ、瓶ビールお願いします。え?どちらにするか? ああ、キリンで・・・。」「はい。」・・・????????
届いたキリンビール(中500円)を飲んでいると、カウンターのお客さんが「○○ちゃん、毎日、お店手伝っているの。」と、その女性に聞く(名前聞き取れず)。「週2日だけですよ。」・・・お手伝いの女性だったか。変な質問しなくてよかった。よく考えると、ありえないよなー。・・・年の差が40歳くらいありそうだもんなー・・・なんだか安心している所に、お通しが届く。「あんきも豆腐とタラの白子です。」・・・いい感じ。
あんきも豆腐の風味と白子のまろやかな味を楽しみながら、ビールを飲む。このカウンターで、マスターといろいろな話をしたものだ。マスターはこの席からだとちょっと遠いし、調理中なので、今は話しかけられないな。前だったら、遠慮無くばんばん話しかけていたけど・・・。「なにか、お決まりですか。」とお手伝いの女性が問う。ああ、そうか。感慨に浸ってしまっていた・・・「刺身盛り合わせ(1000円)を、お願いします。」「マスター、刺し盛りです。」・・・誰かを通して自分の注文がマスターに伝わるというのも、以前にはなかったことだなあ・・・。
隣で燗酒を飲んでいたおじさんがお勘定。お皿やお猪口をすべてカウンターの上の台に乗せ、自分の前をきれいにしてから出て行く。几帳面なお客さんだ。カウンターを拭いている手伝いの女性に、「こっちの席に移ってもいいですか? マスターとも話したいし。」と言うと、「どうぞ。」と笑顔で答えてくれる。爽やかな笑顔に恐縮する。
マスターに距離的に近くなったので、いろいろ話しかける。「何年ぶりくらい?」と聞かれる。「3年以上は来てないと思います。」「へ〜、そんなになるかねえ。」「あまり変わってないですね。店もマスターも。」「ちょっと間が抜けたところも変わってないでしょ。」「確かに・・・いえ、そんなことないです。」・・・みたいな感じ。
刺身盛り合わせが届く。「さば、まぐろ、金目、ひらめ、赤えびです。」とマスターが解説してくれる。では、さっそく、金目から一口・・・脂がのってるなあ・・・その脂がまた甘みを強調している・・・それでいて、すっきりとした淡泊さも合わせもつ・・・さすがに美味しい! ・・・「レモンサワー(350円)お願いします。」
レモンサワーが届く。一口・・・ふう。美味しい。これで口の中をさっぱりさせて、赤えびを・・・う〜ん身がしっかりしている・・・エビの風味が口の中に広がって・・・美味しいなあ・・・。さばはどうだ・・・脂ののりがすごい・・・厚い切り身が食べ応えをしっかりしたものにしてくれる・・・これまた美味しい・・・サワー、サワー。あれっ、もうない。「レモンサワー、おかわりお願いします。」「はい、ありがとうございます。」・・・いえいえ、そんな。
「寄り道さん、酒量の方はどうですか。落ちてませんか。」「落ちなくて困ってます。」「常連の方でも、量が飲めなくなったって人いますからね。」「今のところ大丈夫です。」「私もこれからどんどん増やしていこうと思ってます。」「ピークはこれからですね。」「そうそう。」
久しぶりのマスターとの会話は楽しい。いや、久しぶりという感じがだんだんしなくなったような気がする。今日は「竹よし」に来ることができて、よかったなと思う。「ごちそうさま。」「あれ、もうお帰りですか。」「すみません。また、来ます。」「じゃあ、お待ちしていますよ。」「どうも。」手伝いの女性に送られて、店を出る。「ありがとうございました。」「じゃあ、また、来ます。」
外に出る。電車には乗らず、歩いて帰る。何度か角を回っているうちに、鷺ノ宮の街が近づいてくる。西武線の黄色い電車がガタゴトと通り過ぎる。忘れかけていた何かを取り戻せたような気がした。
Posted by hisashi721 at 17:43│
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