山手線でぼんやり本を読んでいたら、新宿駅を通り過ぎてしまった。新宿駅は乗降客が多く、大騒ぎになるのだから気づかないわけはないのだが、たまたま座席に座っていたことが原因で、代々木のわりには、今日は降りるが人多いなあくらいに感じていたので、降りなきゃと思ったら、新大久保の駅だったのでびっくりした。しまったと思ったが、こうなったらキリのいいところまで本を読もうと考え直して、高田馬場まで乗り続けることにした。
西武新宿線の乗り換え口に入ると、スターバックスコーヒーが見える。ついつい疲れを感じていると、珈琲でもと思うのだが・・・時間がかかるのも考えもの。そんな時には、その隣の「ジューサーバー」がいい。カウンターにミキサーがずらりと並んでいて、その中から好きなジュースを選ぶ。1分もあれば飲めるので、電車に乗る前の、手軽なリフレッシュにはピッタリだ。
喉も渇いていたので、ジューサーバーの前の列に並ぶ。列は5人くらい。季節柄、ホットスープもメニューに加わって、フルーツとスープの匂いが混ざって辺りに漂っている。自分が選んだのは「ワイルドブルーベリー&オレンジ黒酢(200円)」。どれがメインか分からないような組み合わせだ。紙コップを受け取って、一口・・・氷も一緒にミキサーにかけてあるので飲みやすい・・・味はまずオレンジが来て、続いてブルーベリー、最後に黒酢って感じかな・・・。
ジュースを飲みながら、ふと思い出す。土曜日(7日)のことだ。熊本空港から羽田に帰ってきたのが4時過ぎ。4時45分の中野行きバスに乗った。土曜日ということで、首都高速は渋滞している所もあり、東京の夕景をのんびり見ながら、物思いに耽ったりしていた。約1時間、中野サンプラザ前にバスが到着。キャスターバッグをガラガラと引っ張りながら、東京に帰ってきたらやっぱり向かうのは、中野のブリックだ。
ブリックの電話台の前に大きなバッグを置かせてもらい、奥のカウンターに座る。「今日は、何かあったんですか?」「九州に出張に行ってたもので・・・。今帰って来た所なんです。」などと話ながら、お土産のカステラなどを渡す。「長崎にいらっしゃったんですか。」「そう。長崎から熊本に。」「長崎では、どこかいいバーが見つかりましたか?」・・・うぐっ。
「いやー、タイミングが悪くて、バーには行けませんでした。」・・・部屋でワンカップを飲んでましたたんて、言いにくいよなあ・・・。「お客さんから聞いた話なんですけどね。長崎にもブリックっていう店があるそうなんですよ。」「へえー。」「やっぱり、煉瓦造りの店みたいなんです。」「勝手に、ブリック長崎店とか名告っていたりして・・・。」・・・やっぱり、ブリックは落ち着くなあ・・・。「帰ってきた」っていう気がする。
そんなことを思い出していたら、ブリックに行きたくてたまらなくなる。改札口を出て、東西線で中野に向かう。中野までは2駅。JRよりも早いという判断だ。いつものように、駅前ビルの谷間の猫を確認し、その後ブリックへ。店に入ると、いつものメンバーが揃ってる。カウンターの奥へ。「いらっしゃいませ。」「どうも。」
「今日は、ビールじゃなくて、最初からウイスキーにしますか?」・・・やっぱり、お見通しだ。「ワイルドブルーベリー&オレンジ黒酢」ジュースを飲んできたからな。「ボウモアをオンザロックで。」と注文。まず、チェイサーが出てきて、次にロックグラス。水を一口飲んで、ウイスキーを・・・やっぱり、ジュースよりリフレッシュできるよなあ・・・。お通しが出てくる。スモークサーモンだ。嬉しい。
この店に初めて来た時はどうだったかなあ・・・と思い出してみる。入口に近いカウンター席が空いていたので、そこに座ったんだったよな。で、メニューが出てきたのでジャック・ダニエルのオンザロックとフライドポテトを注文した。それで、目の前にいた若いバーテンダーさんに話しかけて・・・結構、最初からリラックスできてたように思う。
先入観がないのがよかったのだ。雑誌やインターネットなどで調べていくと、余計に緊張してしまうような気がする。誇り高き本格バーとか、安いけど凛とした空気が流れているとか・・・あんまり意識しないほうがいいのではないだろうか。リラックスできてこそのバーだと思うのだ。
職場の上司が最近こんなことを尋ねてきた。「一人でバーに行ってるんだって。」「ええ、まあ。」「一人だと何をしてるの。」「別に何もしてないですよ。」「本を読むとか?」「読むことも、たまにはありますが、話をしてることの方が多いです。」「話題は?」「その時々ですね。」「それじゃあ、私が一人でバーに行くとして、何を話せばいい?」「そんなこと分かりませんよ。一人で行きたいんですか?」「一人で行ってみたいんだ。」「じゃあ、行ってみればいいじゃないですか。」「だから君に聞いてるんじゃないか。」「天気の話とか、ニュースの話題とか、そんなことから話し始めれば、バーテンダーさんもプロだし、楽しく話せると思いますよ。」
自分は、お客さんやバーテンダーさんと話したり、仕事をしたり、本を読んだり、ぼーっとしたいからこの店に来ている。それが楽しいのだ。「おかわりは、いかがですか?」「ええ、お願いします。」「明日は雨になるそうですね。」「気温も下がるんですってね。」「いよいよ冬ですねえ。」・・・。
ウイスキーを3杯飲んだところで、今日はここまで。「1杯少ないんじゃないですか。」「今日は時間も遅いし。」「たまには早く帰らないと。」「そうですね。」席を立って、店を出る。駅前ロータリーは落ち葉の季節。満ち足りた気分とは、案外身近なものではないかという気がする。
Posted by hisashi721 at 19:27│
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