2009年11月27日

いつもの場所・・・中野「ブリック」

DSC00047中野駅北口の改札を出ると、「年賀状はいかがですかぁ〜。」という声が聞こえる。郵便局の出張販売だ。その向かいでは、「年末ジャンボ宝くじで〜す。この機会にいかがですか?億万長者のチャンスで〜す。」という声。すっかり年末気分だ。一気に時間が経ったような、そんな街の様子だ。

横断歩道を渡って、まず向かうのは、ビルの階段の下にいる猫の所。夏頃から、その場所に現れて、いろいろな人から可愛がられている猫だ。雨風は防げるとはいえ、吹き曝しのコンクリートの上だ。寒くなったし、大丈夫だろうか・・・。その場所まで行ってみると、女性が一人、猫を見ている。近づいてみると、猫は段ボール箱の中に入っている。その女性は、相変わらず猫を見続けている。この人も心配なのだろう・・・。猫はゆったりと寝そべっている。可愛い・・・。
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猫と別れて、道を真っ直ぐ行くと、サントリーバーの「ブリック」。今日は他の店に行こうかと思ったが、ここを素通りするわけにはいかない。この前来てから2週間以上たっている。ここ3年間は、週に4回ペースで来てたので、これだけ間隔があくと随分久しぶりに感じる。店の前に立つ。ドアがすっと開く。ドアを開いてくれた若いバーテンダーさんが「いらっしゃいませ。」と迎えてくれる。L字型のカウンターは、縦棒にお客さんが7人。横棒にはいない。横棒の端っこに座る。

カウンターの中には三人のバーテンダーさんがいる。「いらっしゃいませ」。おしぼりが出てくる。「瓶モルツをお願いします。」と注文。コースターにグラスが置かれ、一番手前のバーテンダーさんが、注いでくれる。「どうぞ。」・・・いつも通りだ。一口・・・ふー、やっぱり、「ブリック」のカウンターは落ち着くなあ。
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お通しの「いかの燻製」が出てくる。ビールを飲みながら、ちょっとつまむ。カウンター席は店の一番奥に、いつも早い時間に2人で来るというご夫婦。その手前に、月曜日と木曜日の週2日必ず来るという男性。その手前が団塊の世代3人組。女性が真ん中、男性2人が挟んでいる。その手前も団塊の世代の男性客。今日は友人を待っているという風情。

団塊の世代3人組の真ん中の女性は、背筋がピンと伸びて、しゃべり方も溌剌としている。話の端々から、出版社の名前が聞こえてくるので、多分編集関係の方だろう。男性2人も同業だと思われるが、元気度が違う。「彼女、女傑だから・・・。」なんて言われてそう・・・。

この店に、毎日のように通い始めたのは、毎日が忙しくて、このブログも更新できなかった時期と重なる。仕事が終わらず、自宅に持ち帰ることが多かったのだが、ある時、せっぱ詰まってこの店で飲みながら、書類のチェックをしてみた。すると、結構、仕事がはかどる。もちろん、仕事の種類にもよるが、簡単な仕事ならここでできる。バーテンダーさんも、そっとしておいてくれる。それに味をしめて、毎日のように通いはじめたのだ。

そのうち、常連さんと顔見知りになってしゃべるようになったり、バーテンダーさんとじっくり話ができるようになってから、この店に寄らないと、家に帰る気がしないようになった。中野駅で降りて、考え事をしながら歩きはじめて、気がついたらこのカウンターに座っていたということさえある。

今日は別に仕事を持って帰ったわけではないので、ビールを飲み、バーテンダーさんに、「あのビルの猫、これから大丈夫ですかねえ。」などと、話しかけたり、考え事をしたりと、のんびりと過ごす。ビールの後は、自分のボトルを出してもらって、「オンザロックでお願いします。」と注文。最近は、いつもボウモア。

ボウモアのオンザロックが届く。一口・・・甘さと、適度なスモーキーさがよく調和している・・・美味しい。今日は、これを3杯飲むつもり。3人組のうち一人の男性は腕を組んだまま眠ってしまっている。もう一人はお手洗いに立つ。女性一人、ピンと背筋を伸ばしたまま・・・その女性が自分の方を見る・・・目が合ってしまった・・・どうも、という感じで頭をちょっと下げると、女性はにこっと笑う・・・艶然という言葉が頭に浮かぶ。
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月木のお客さんが帰ろうと立ち上がったところに、ベレー帽(!)をかぶった年配の男性が入ってくる。白い顎髭が印象的。概念的な画家ってこんな感じだよなっていう雰囲気。「よう。」「今帰る所なんだ。」「なんだよ、もう一杯くらい付き合えよ。」「そうだな。」・・・飲み友だちか・・・いいなあ。

寝ていた男性も復活し、お手洗いからもう一人も帰ってきて、3人組はまた話が弾みだしたようだ。「森重久弥が96歳で、水ノ江ターキーが94歳だったってね。すごいよね。」「90代ってすごいよね。原節子は90代で存命だしね。」「ええっ、原節子はまだ若いでしょ。10代のころから出てるから、長くやってるようだけど。多分、80代の前半くらいよ。」「いや、東京物語が昭和28年だろ。30代半ばだったとして、今はやっぱり90代じゃない?」「30代半ばってことはないでしょ。80代よ。」・・・気になったので、こっそり携帯で調べてみる。1920年生まれ・・・89歳だ。微妙だなあ。

手前のお客さんが待っていた友だちが、やっと来る。「おせーよ。」「わるい。ちょっと出がけに、女房がごちゃごちゃ言うもんだから。」「大丈夫か?」「大したこととねーよ。ビール飲むぜ。」「じゃあ、付き合うよ。すみません、生ビール2つね。」・・・ここにも飲み友だち。

ウイスキーを3杯飲み終えたので、今日はここまで。「ごちそうさま。」「ありがとうございました。」席を立つ。カウンターの向こうから、2人のバーテンダーさんも「どうも、ありがとうございました。」と声をかけて送ってくれる。「じゃあ、また。」と言って、ドアを開ける。

店の外に出る。帰りも猫を見に行く。箱の中で丸くなって寝ている。がんばれよと心の中で声をかける。駅前ロータリーに戻って、空を見上げると、半分の月が輝いている。目を別の方向にずらすと、中野サンプラザがそびえ立っている。中野の夜もいいものだと思う。

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寒くなってきましたので風邪にお気を付けて今日もお過ごし下さい。
Posted by 山梨県 ハローワーク 薬剤師 求人 at 2012年09月28日 20:15