2009年11月29日

最高に美味しいたこ焼き屋を見つけました!・・・高田馬場「千成屋」

DSC00073土曜日(28日)の午後7時少し前。JR高田馬場駅の早稲田口改札を出ると、通り道もないくらい、駅の構内には人があふれている。ほとんどは学生と思われるが、よく見ると老若男女が集団で待ち合わせ中。「午後7時に高田馬場改札前で」という約束なのだろう。やっとのことで校内を抜け、ガード下に出ると、にぎやかな音。ちんどん屋の演奏だ。ティッシュ配りの人も連なっている。

早稲田通りを小滝橋方面に歩く。駅前の居酒屋チェーン店の人たちがメニューを持って、歩く人に声をかけている。「生ビール、一杯サービスで〜す。いかがですかぁ。」「酎ハイ、一杯98円です。今なら団体様は入れま〜す。」・・・駅構内にいた人々が、いろいろな店に散らばって飲むんだよなあ。すごい活気だ・・・。

早稲田予備校13時ホールを過ぎると、ちょっと人通りが少なくなる。周りを見る余裕も出てくる。今日は、何年か前に行った裏通りの立ち飲み屋さんがまだあるかどうか確かめに行くつもりだ。目立たない場所にあるのだが、つまみも美味しくて、酒の種類も充実していた。ええと、この辺りを左に入るんだったよな・・・そうそう、この高田馬場郵便局の道案内が目印だった・・・。

で、その道を曲がろうとした時、ふと左手を見ると、赤い暖簾のたこ焼き屋さんがある。そういえば、前からここにあったよなと思いながら、店の方をふと見ると、小柄なおじさんが作業しているのが見える。入り口のところには小さなテーブル席があって、男性のお客さんがたこ焼きを食べている。その素朴な風景にちょっと心惹かれたのと、たこ焼きが急に食べたくなったのとで、この店に入ってみようかなと思う。こういう店が、実は美味しかったりすることはよくあることだ。自分の勘を信じよう。

店に入る。背中を向けて作業しているおじさんに、「こんばんは。まだいいですか。」と声をかける。たこ焼きの焼き台のうえには7個だけしか残っていない。もしかして、もう店じまいかと思ったのだ。「何個?」・・・壁を見ると「5個入り300円 10個入り600円」と書かれている。今7個しかないからなあ・・・「5個、お願いします。」「ここで食べて行かはりますか?」・・・関西弁だ。期待感が高まる。
DSC00068

「ここで食べます。」といって、男性客の向かい側にすわる。テーブルは2人がけのものが一つだけ。それも普通のテーブルではなくステンレスのゴツイやつ。多分、かつては流し台の一部だったと思われる。椅子は背もたれのない丸いやつ。座ると傍らに立てかけてあったベニヤ板が倒れてくる。おっとと。慌てて、また立てかける。何に使う板かは分からない。

おじさんが皿に5個のたこ焼きを入れて、ソースを塗ってくれる。「マヨネーズはどうしましょ?」「お願いします。」さらに青海苔や鰹節をたっぷり上に乗せてくれる。「どうぞ。」「どうも。」・・・普通のたこ焼きよりも二回りくらい大きい。案外ボリュームがありそうだ。では、期待を込めて一口・・・うお〜〜〜!これは、何なんだ!表面の1ミリ分だけカリッとむらなく焼けていて、その中は、もっちり、と思う間に、とろ〜りと溶ける・・・味も、ソースやマヨネーズだけではない、えも言えぬ旨みが、海老っぽい味としっかりした出汁の味・・・美味しい・・・という言葉だけでは表現できない!これは、自分の知っている「たこ焼き」という食べ物とは全然別物だ!
DSC00063

思わず、「これ、ものすごく美味しいですね!」と声を上げてしまう。おじさんが、にやっと笑う。向かいの男性客が、自分が一口食べて、この言葉を発するのを楽しみに待っていたように「そうやろ。ここのおっちゃんの焼くたこ焼きは、そこら辺のたこ焼きとはちゃうで。ここでしか食べられへん、名人の味や。」・・・ほー、なるほど。それにしてもこの方も関西弁。

おじさんが、「そや、忘れてた、ごめんな。」と言って、男性客に生ビールを出す。おお、生ビールも飲めるのか!「おじさん、自分にも生ビールをください。」「そうやろ、そら飲みとうなるわな。」と男性客。おじさんが「大きさは、どないする?」「このお客さんと同じのを。」「同じでええねんな」壁をみると、「生ビール 小250円 大450円」とある。大だな。チューハイ(350円)もあるのか。

生ビールを一口・・・いい店に来たなあ、自分の勘が当たってた、嬉しい!という味がする。たこ焼きとビールの相性は抜群だ。・・・ところで、前の男性客のたこ焼きは、自分のと少し様子が違う。「それは・・・。」「このたこ焼きはな、ソースやマヨネーズなんかのうても、美味しいんや。素焼きにしてもろうてな、ラー油なんかつけて食べても美味しいんやで。」「そうでしょうね。」分かる、分かる。「一つどうですか?」と男性客に勧められて、恐縮しつつも「じゃあ、遠慮なく・・・。」素焼きのたこ焼きを一口・・・確かに! 出汁の美味しさや海老の風味が素晴らしい。これだけで十分、というかこっちの方が美味しい。
DSC00065

店の奥に「自由民主党総裁賞」と書かれた盾とトロフィーが飾ってある。さては、名のある料理人だったのでは・・・。「あの賞は、まさかたこ焼きでもらったわけじゃないですよね。」と聞いてみる。男性客が「そらそうや。たこ焼きで誰が賞をくれますかいな。おっちゃんはああ見えても、大阪で有名な料理人やったんやで。この写真見てみいな。」壁の写真を見ると・・・ええっ、これは。包丁儀式ではないか。古式ゆかしく、相撲の行事さんみたいな服装で魚なんかをさばく儀式。相当の人でなければ、これはできないはず。「これ、すごいですね。」「若かりし日の、おっちゃんやで。まだ40代のころや。」その写真の横に、今のおじさんの写真が貼ってある。「ホンマにおいしいたこやきでっせ。」という文字が入っている。「使用前と使用後や。」とお客さん。
DSC00070
DSC00071

「これ、中曽根さんにもろうたんや。」とおじさんがトロフィーを見ながら言う。「すごいですね。お会いできて光栄です。」「何言うとるんや。今は、落ちぶれた、たこ焼き屋のおっちゃんや。」「そんな。こんなに美味しいたこ焼きは初めてです。このお店は何年くらいになります?」「5年やな。」ほー。「おっちゃんは75歳やで〜。すごいやろ。」とお客さん。40代の頃の関西での栄光から、今に至るにはものすごいドラマがあったに違いない。しかし、それを聞くわけには行かないような気がする。もし、聞くとしたら、この関西弁の男性客のように通いに通ってからではなくては、失礼だ。
DSC00067

学生が二人で5個入りを買って、外のテーブルで食べている。そとには丸いテーブルと椅子が4つくらい置いてある。学生たちが「美味しかったです。ごちそうさま。」と言って帰ろうとすると、「おっちゃん、ごちそうさまやて。」と男性客。「ああ、おおきに。」とおじさん。「また、来てな。」と男性客。この店が本当に好きなのだろう。学生が帰った後、「もう少し、愛想よくせな。お客さんにもっと来てもらうよにせなあかんよ。」「せやな。」

焼きたての素焼きを、追加して注文しようと思ったら、男性客が「これ、食べてな。焼きたてはまた格別や。」と言って奢ってくれる。「すみません。ありがとうございます。」またまた恐縮しつついただく。今できたばかりのたこ焼きを一口・・・わおっ!これはすごい。風味が断然強い。美味しいなあ。「冷めても、熱うても美味しいのが、おっちゃんのたこ焼きや。」・・・仰るとおり!

おじさんと男性客と3人で、いろいろな世間話やご家族の話しなどをして、楽しい時間を過ごさせてもらった。「また来ますね。」「また、来てや。」とおじさん。「このおっちゃん、まったく宣伝せえへんから、みんなこの店のこと知らんねん。ブログで宣伝したってや。」と男性客。・・・ばれてる・・・。

2人に頭を下げて外に出る。美味しかった〜。振り向くと、おじさんの姿が見える。なんとも魅力的な人だ。この人にいろんな話を聞いてみたいと思う。おじさん、これから寒くなるけど、体に気をつけて・・・。もう一度、頭を下げる。
DSC00066

東京都新宿区高田馬場4丁目12‐7
03-5348-6545

この記事へのトラックバックURL

この記事へのコメント
はじめまして。
いつもたのしみに読ませていただいています。
職場が高田馬場なので、そのお店の前は何度も通っていましたが、そんなにおいしいとは露知らずした。
今度思い切って入ってみたいと思います。

ちょっと歩きますが、多幸兵衛さんもおいしいですよね。

ではまた寄り道しにきます!
Posted by はなしろ at 2009年11月29日 21:48
はなしろさん、こんにちは。

この店は意外でした。自分も何度も前を歩いてたはずなんですが・・・。

多幸兵衛も美味しいですよね。おでんも明石焼きも美味しいです。

これからも、よろしくお願いします。
Posted by 寄り道 at 2009年11月30日 15:47
千成屋さん、なんどか足を運んでいます。
はじめて食べたときは、ほんとのたこ焼きに出会った!と感動しました。

出来上がるまで時間がかかるときは、
「ほんまに今日たべたいんか?また今度でもええやろー」
とおっちゃんに試されることもあり。
でも待っている間のおしゃべりも楽しいわけです。

最近行っていないので、寄り道さんのブログで近況が伺えてうれしかったです。
Posted by わさび at 2009年12月03日 03:33
わさびさん、こんにちは。

おじさんの言いそうなことですね〜。
つい最近も、こういう会話がありました。
「インターネットで娘が見たらしくて、たこ焼き買ってきてくれって。」とお客さん。おじさんがそれを受けて、「ええんか。おとうちゃん、こんなにまずいたこ焼き買うてきて、どないすんねや。て言われるでぇ〜。」「そんな〜。」

面白かったです。
Posted by 寄り道 at 2009年12月04日 18:02
初めてコメントさせていただきます。
毎回楽しく読ませてもらっているんですが、先日忘年会が高田馬場であったので0次会と称して行ってきました。
5人で押しかけ、狭い店内でおっちゃんと会話をしながら熱々のたこ焼きをみんなで頬ばりました。
いや〜ほんとに美味しかったです。
いいお店を教えていただきました!
Posted by masato at 2009年12月21日 10:55
masatoさん、こんにちは。

コメント、ありがとうございます。

おじさん、喜んでたでしょ。
よかったです。
本当にあのたこ焼きは美味しいですね〜。
ビールにも合いますしね。

自分も、また行きたいと思います!
Posted by 寄り道 at 2009年12月21日 18:05
大阪で食べたどのたこ焼きより美味かったです。
これからもあのたこ焼きを食べられたらいいですね!!
ちなみに、買ってくお客さんに素が一番ウマイよって宣伝しときました(笑)
また近いうちに行きたいと思います
Posted by masato at 2009年12月23日 23:04
masatoさん、宣伝していただいてありがとうございます。

おじさんが頑張っているので、応援したいと思っています。
あのたこ焼きは、食べても飽きないので不思議です。

お店でお会いできるかもしれませんね。
その時は、よろしくお願いします。
Posted by 寄り道 at 2009年12月25日 16:54