今日(19日)は、予報通り、昼頃から気温が上がり始めて、穏やかな一日になった。仕事を終えて、中野駅北口に降り立ったのは、午後7時。暖かいとまでは言えないがが、ここ何日かの凍えるような寒さはゆるんでいる。北口ロータリーを歩いている人々の表情も柔らかい気がする。
いつものように、北口ロータリーの横断歩道を渡り、サンモール商店街に入る手前で右折、ケンタッキーフライドチキンの所で左折。その隣のニュー浅草という居酒屋は今日も盛況だ。なんといっても常連さんが多い。一人客同士が仲良く話して盛り上がっている。みなさん、とても楽しそうで、ちょっと入ってみたい気もする。そのまた隣の「はち」という居酒屋は、最近改装して、外からは店内が見えなくなってしまった。ちょっと渋い感じの店になったのだが・・・。店の中が見える方がいいのか、見えない方がいいのか・・・。
ブリックは道の突き当たりにある。店に近づくと、ドア係のバーテンダーさんが、ドアを開けるタイミングを図っているのが感じられる。歩くスピードに合わせて、立ち止まらなくても、すっと入れるタイミングで開けてくれるのだ。ドアがすっと開く。「こんばんは。」といいながら店の中に入る。「いらっしゃいませ。」4人のバーテンダーさんが同時に声をかけてくれる。
L字型カウンターの横棒の席に座る。おしぼりが出てくると同時に「瓶モルツを」と注文する。すぐにグラスが用意され、ビールを注いでくれる。「どうぞ。」・・・では、一口・・・馴染みの店は、気を使うこともないし、ここまでスムーズに事が運ぶからいいよなあ・・・美味しい!
お通しが出てくる。クラッカーの上にレーズンバターがのっている。美味しそうだ。一口・・・クラッカーの淡泊な塩味に、ねっとりと濃厚なレーズンバターがよく調和している。このレーズンバターは、このお店の方の手作り。甘さもほどほど。ウイスキーを初めとするお酒にとても合う。
お客さんは、カウンターの奥に常連さんが2人。真ん中辺りに、このところいつ来ても見かける男性。 入口近くに、落ち着いた年配の男性。・・・手帳を出して、今日の欄に、1日の簡単な振り返りを書く。スペースが小さいので、3行くらい。ついでに、明日からのスケジュールも確認する。
若いカップルが入ってくる。初めてらしく、入口のところで戸惑っている。「カウンターになさいますか?テーブル席もございますが・・・。」とマスターが声をかけると、「じゃあ・・・テーブルで。」と女性の方が答える。「では、そちらのテーブルにどうぞ。」と入口横のテーブルに案内される。ちょうど自分が座っている席の後ろだ。
渡されたメニューを見ながら、二人が何か小声で話している。「お決まりですか?」「はい、僕はズブロッカ。」「飲み方は、オンザロックでよろしいですか?」「ええ。」「こちらは?」「私はレモンハートデメララ151を。」・・・レモンハート!大丈夫か?・・・「あの、こちらはアルコール度数が高いのですが、よろしいですか?」「えっ、どれくらい?」「75.5度になりますが。」「あっ、いいです。オンザロックで。」・・・やるなあ。
ズブロッカで、思い出した。カウンターの中の冷凍庫に、自分のボトルを入れてもらってたんだった。でも、あれは夏のこと。もう半年以上になる。この店のボトルを預かってくれる期間は3ヶ月。もうないよなあ・・・。一応聞いてみようかな。「自分のズブロッカ、まだありますか?」「ありますよ。」・・・おお、まだ、入れておいてくれたのか!嬉しいぞ。
「じゃあ、ズブロッカを飲みます。ストレートで。」・・・小さなグラスが用意される。冷凍庫から、真っ白に凍ったボトルが取り出される。ボトルの底には氷が張り付いている。まず、その氷がそぎ落とされ、その後、グラスに注がれる。「どうぞ。」・・・では、一口・・・桜餅のような独特の香りがすっと広がる・・・よく冷えていて、美味しい!
後ろのテーブルの女性が、レモンハートをおかわり・・・やるなあ。・・・恰幅のいい男性が入ってくる。年齢は60歳くらいだろうか。この方も常連。どこかの社長さんという感じ。カウンターに座るなり、「水割り、ダブル。」。・・・ボウモアの水割りダブルが用意される。その男性は一気に飲み干す。豪快だ。すぐさま「ダブル。」とおかわり。・・・すごいなあ。
2杯目もすぐに飲み干して、また「ダブル!」と注文。ボトルが残り少ないのを見ると、「全部入れて。」「トリプルより濃くなりますが。」「いいよ。」・・・すごい! 「この前さあ、うちの若いのがバーボンのソーダ割りなんて飲んでてねえ。変なもののむなあって思ったんだよ。そんな飲み方するお客さんいる?」と男性。若いバーテンダーさんが、「たくさんいらっしゃいますよ。」と答える。「そうかなあ。マスターどう思う?邪道だよね。」「いいえ、バーボンは炭酸系によく合いますよ。」「そうかあ。で、その時ちょっともらったんだけど、けっこううまいなって思ってね。」・・・ん?・・・「じゃあ、次はバーボンのソーダ割りでも飲もうかな。」・・・回りくどい注文の仕方だなあ・・・。
「ダブルにしますか?」「いや、シングルで。この後行くところがあるから、たくさん飲めないんだよ。」・・・結構飲んでるけど・・・「お仕事ですか?」と若いバーテンダーさんが心配そうに聞く。「いや、そうじゃないんだけど、そこでピアノを弾かなくちゃいけないんだよ。」・・・ピアノ!これだけ飲んだ後に!・・・これが一番すごい。
バーボンソーダを飲み終えて、「やっぱり物足りないな。飲んだ気がしない。さて、ごちそうさま。いくら?」と言って立ち上がる。まったく酔った気配はない。「じゃあ、また。」そういうと、風のように出て行く。・・・ちょっとかっこいい。
自分は、その間に3杯のズブロッカを飲み終える。さて、この辺で。「ごちそうさま。」「どうも、ありがとうございます。」勘定を済ませて、コートを着る。鞄を持ってドアに向かうと、ドア係りのバーテンダーさんがさっとドアを外側に開けてくれる。
外に出る。風がなんとなく優しい。明日はもっと気温が上がるということだ。駅前ロータリーから、空を見上げると、中野サンプラザが夜空に向かってそびえている。目を転じるとくっきりとした三日月。このまま帰るのが惜しいような夜だ。
Posted by hisashi721 at 17:30│
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中野ブリック、中野ブリック。ああ、ブリック。29才〜33才の頃、よく一番奥のカウンターに座っていました。金が無いのに角ボトルを入れて、ツケで飲んで酔いすぎて、スツールから降りられなくなったものです。3年前20年ぶりに菊池マスターに角ハイボールを注文しました。7〜8杯飲んでまたまた酔ってしまいました。おお!中野ブリック。