午後5時40分頃、山手線にゆられながら考えていた。割と早い時間だ。どこかに寄って帰りたいが、今日(22日)は金曜日。どの店も人が多そうだ。土曜日も出勤の自分にとっては、金曜日というのは普通の平日。明日のことを気にしながら、人出が多い街を、歩くのはいやだなあ。
それなら、駅の近くの店で軽くビールでも飲んで帰ろうと決めて、渋谷駅で下車。西口に出る。西口公衆電話前では、例によって自然発生的立ち飲みが行われている。近くのキオスクで買ったビールや缶チューハイを、みんなで飲んでいるのだ。うまい具合にテーブル代わりの台もある。こんなに寒い日んいも、集まってるのか・・・やるなあ。
歩道橋を渡る。首都高速の向こうにセルリアンタワーが見える。青山通りはいつものように車の列が続いている。キラキラした都会の風景だ。桜ヶ丘方面ではなく、線路から二番目に近い路地に降りる。降りて右側に少し歩くと、地下に降りる階段がある。階段の正面に「富士屋本店」という看板が輝いている。
階段を降りて、左側のドアから店に入る。真ん中の広い厨房の周りに、立ち飲みカウンターが四角形(凹んでいるところもあるが)に設置されている。さらに壁に沿ってサブカウンターが入口から奥に向かって伸びている。いったい何十人入れるか分からない。ほぼ空きなく人がカウンターを取り囲んでいる。入口近くで短時間、と思っていたが、その辺りは特に人口密度が高い。左側に周り込んで、カウンターが直角に曲がった先辺りに30cmほどの空間を見つける。
「すみません。ここ入ります。すみませんねえ。あっ、気を使っていただいて・・・ああ、いいです、いいです。これくらいで十分です。んもう、すみません。」と低姿勢でその空間に入り込む。左右の人が少しずつ横にずれてくれたので、何とか正面を向いて立てるスペースが確保できた。
「飲み物は?」とカウンターの中の男性がフレンドリーに聞く。「瓶ビール(大450円)。」「つまみはどうする?」矢継ぎ早の質問が飛んでくる。考えている暇は与えられない。「煮込み(350円)。」と素早く答える。1000円札をカウンター上に置いて、しばらく待っているとビールが届く。グラスに注いで一口・・・今日は、お酒はこれだけにしようっと・・・美味しい!
「煮込み」が届く。「はい、800円ね。」あらかじめカウンター上に用意していた1000円札を渡すと、200円のお釣りをくれる。煮込みは大きなお椀に入っているので、ビール一本くらいは軽くもつな。では、煮込みを一口・・・味噌味だ・・・なにより温かいのがいい・・・たっぷり入った野菜の旨味も生かされている・・・美味しい!ビール、ビール!
左隣のおじさんは推定70歳。慣れた雰囲気で燗酒を飲んでいる。つまみはやはり「煮込み」。飲むのも、食べるのもピッチが早い。5分くらいで1本飲み終えたようで、「お酒、燗ね。」とお店の男性に注文。燗酒が届くと、待ちかねたようにすぐに盃に注いで飲んでいる。そのお酒もなくなると、また、すぐに「ビール、瓶の」と注文。・・・燗酒の後にビールを飲むタイプの人か。こういう人は酒が強いんだよな・・・。
右隣は2人組のおじさんたち。推定年齢55歳。こちらは日本酒を冷やで飲んでいる。つまみは「ポークフランク」と「さばの塩焼き」。ポークフランクは、焼いたソーセージなのだが、表面がテカっていて、いかにも美味しそうだ。おじさんたちの右隣の学生風推定年齢21歳が「それなんですか?」とおじさんの1人に尋ねたのも、なるほどと頷ける。「これ、これはね〜、ポークなんとか。美味しいよ〜。」「うまそうっすね。」「うまい、うまい、うますぎだよ。」・・・学生風がお店の男性に「ポークなんとか、お願いします。」と注文。「はいよ!」・・・通じてる・・・。
気がつくと左隣のおじさんがいない。一応、念のために床を見てみたが、もちろん倒れてなどいない。風のように出て行ったのだ。さすがにベテラン!空きスペースができたので、左腕の辺りがスースーする感じ。すぐに男性が一人「ここいいですか。」と入ってくる。推定年齢30歳。慣れた感じで「酒、冷やで。あと中落ち。」と注文。コートを脱いで、後ろのサブカウンターに置き、う〜ん、と背伸びをする。そのあと、はぁ〜と息を思い切り吐く。そこに酒が届く。息を吸いこむように、一気にコップに入った酒を飲み干す。・・・ひえ〜、すげ〜。
ビールがなくなる・・・まずい、もっと飲みたくなってきたぞ・・・。でも、日本酒を飲むと、隣の推定30歳に煽られて、競うように飲んでしまいそうだ。サワー類はないし・・・となると・・・「すみません。焼酎のウコン茶割り。」「焼酎は瓶しかないよいい。」「うん、いいよ。」・・・相手のフレンドリーなしゃべり方についつられてしまった・・・。この店では焼酎はすべて瓶。芋焼酎の4合瓶はキープすることもできる。ウコン割りにするのは、宝焼酎の360ml瓶。さすがに、この瓶をおかわりしないだろう?と自分に問いかける・・・それは、そうだが・・・これだけでも飲み過ぎ。軽く飲むはずが・・・。
焼酎の瓶と氷が入ったタンブラー、グラスに入ったウコン茶が届く。ウコン茶はなみなみと注がれていて、表面張力でわずかに盛りあがっている。これをこぼさないように、そっと自分の方に引き寄せる。タンブラーに移す時は絶対こぼすと思われる。「700円です。」1000円札を渡す。焼酎が600円でウコン茶が100円。焼酎の瓶を開け、タンブラーに注ぐ。・・・で、一気にグラスに入ったウコン茶を注ぎ入れる・・・やっぱりこぼしてしまう。それにしても、この瓶一本で、ウコン割りにすると5杯分くらいになるなあ。やっぱり飲みすぎだなあ・・・などとは思わず、逆に嬉しくなる。360mlって案外あるじゃん。
「ハムキャベツ(300円)を、お願いします。」と注文。この店の表記は「ハムキャ別」。ハムとキャベツを和えたサラダ風のものではなく、キャベツの千切りの上にハムをのせただけのものという意味だと思えわれる。その「ハムキャ別」が届く。かなりのボリュームだ。山盛りのキャベツの上にマヨネーズをたっぷりかけ、それをハムで覆った料理だ。
ハムを一口・・・塩の味がする・・・素朴な味わいなのでマヨネーズとよく合う。美味しい!ウコン割り、ウコン割り!もっと焼酎を入れて、濃くしちゃえ!・・・く〜、効くぅ〜。でも、これくらいでなきゃ物足りないぞ。それにしてもウコンの香りって焼酎に合ううよなあ・・・ハムとキャベツを一緒に食べたり、キャベツだけ食べたりとバリエーションを楽しむ。
瓶の焼酎が後半分になったところで、氷を足してもらう。ウコン茶もおかわり。紙パックからグラスに注がれる・・・また表面張力だよ・・・。濃さを調整しながら飲む。ずっと立ってるので、左右の足の重心を入れ替えながら対処する。
焼酎の瓶が空になる。さすがウコン茶割り。爽やかすぎて、酔った気がしない。もっと飲めそうだが・・・今日はここまで。「ごちそうさま。」とカウンターの中に声をかけてドアに向かう。「ありがとうございました。」とお店の人たちが送ってくれる。
階段を上って外に出る。そんなに寒さは感じない。歩道橋を渡って、渋谷駅に戻る。金曜日の駅前は、さすがに人通りが多い。人の波の中を改札へと歩く。
東京都渋谷区桜丘町2-3 富士商事ビル B1F
03-3461-2128
Posted by hisashi721 at 17:30│
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