寄り道Blog

今朝（1日）は、まだ暗い時間に家を出て、月を眺めながら鷺ノ宮駅へ。職場に着いたのは、午前6時過ぎ。7時前に出勤してきた同僚が口々に「朝焼けがきれいですよ。」と話している。午後からは雪になるかもしれないという予報だが、窓から射してくる太陽の光は冬らしく鋭い。これから夜まで、忙しい時間が始まる。

昼食に支給された弁当を食べながら、外を見ると、どんよりとした灰色の空が広がっている。仕事をしている間に、天候は刻々と変わっていたようだ。「本当に雪になりそうですね。」と同僚の1人が話しかける。できれば、ちらつく程度であってくれればいいのだが・・・。「さて、始めますか。」昼食もそこそこに仕事に戻る。

夕方、「雪、降ってますね。」と誰かが言う。「ついに降り始めたか。」「みぞれみたいですね。」「じゃあ、積もらないかな。」「今日は遅くなるから、電車が止まらなければいいですけどね。」「そうだなあ。」・・・みんな、ちらっと窓の外に目をやるが、手は休めない。早く終わらせなくては・・・。

結局、明日の打ち合わせを終えて職場を出たのが午後9時40分頃。玄関を出ると、警備の人が雪かきをしている。「こんなに降ってたんですね。」「結構降りましたよ。」路面の雪は、シロップをかけ過ぎたかき氷のようだ。歩くとシャリシャリと音がする。空からは白くて重たい雪がまだ降り続いている。鞄から折りたたみ傘を取り出す。

足元が悪いので、目黒通りに出てタクシーを拾い、目黒駅に向かう。雪はやむ気配もない。目黒駅前でタクシーを降りる時、運転手さんが「足元に気をつけてください」と声をかけてくれる。

山手線は正常に運転している。寒いホームで待つこともなく、すぐに電車が来る。電車の中は暖かくてほっとする。空いている席に座ると、さすがに早朝からの勤務の疲れが出たのか眠気を感じる。電車の揺れが心地よく感じる。誰もが外の雪を見つめている。雪の日の電車は静かだ。

新宿駅で中央線各駅停車に乗り換えて、中野に向かう。時間を確認すると10時15分・・・ブリックに寄って帰ろうかな・・・。中野駅で電車を降り、北口ロータリーへ。思ったより雪は激しい。小さな折りたたみ傘では間に合わないほどだ。水っぽい雪がコートの肩に降りかかってくる。小走りで急ぎ、駆け込むようにブリックに入る。

カウンター席には男性ばかり5人。テーブル席は３つ埋まっている。バーテンダーさんは4人。2階には客が入っていないようだ。雪でお客さんも少ないのだろう。カウンターの真ん中に座る。

「いらっしゃいませ。今日はウイスキーからにしますか？」とマスター。「寒いけど、やっぱり、ビールからお願いします。」「今までお仕事ですか？」「ええ、今週はちょっと忙しくて。」「大変ですね。外の雪はどうでした？」「かなり激しくなってきたみたいですよ。」「明日の朝は気をつけてください。転んだりすると大変ですから。」「そうですね。明日も朝早く家をでるので、気をつけます。」

ビールを飲みながら、手帳を出して明日やるべき事を確認する。今日よりは早く職場を出たいなあ・・・。お通しのレーズンバターの甘みが疲れた神経をいやしてくれるようだ。ビールの冷たさも、気持ちを切り替えてくれる。・・・明日は明日。また頑張ればいいや。・・・ビール、美味しいなあ・・・。


ドアのガラス越しに傘をさして行き交う人々が見える。雪はどんどん激しくなっていく。中央線は大丈夫だろうか。阿佐ヶ谷駅からのバスはもう終わっている時間だ。タクシーにすぐ乗れるといいが・・・。そう考えながらも、不思議と不安にはならない。妙な安堵感が身体を包んでいる。大丈夫、なんとかなる。それまで酒でも飲んでいよう、みたいな。

「ボウモアをオンザロックで。」と注文する。「ドアのガラス越しに外を見ると、なんだか映画の一場面を見ているようですね。」とお客さんの一人が言う。「そうですね。今日みたいな雪の日は特にそういう感じがしますね。」と答える。マスターが「さっきも話をしていたんですが、映画のために雪を降らせるのはものすごく大変で、何千万円もかかるそうです。だから、自然にこういう雪の風景がみられるのは、ありがたいことだと思いましょうって。」「なるほど。そうですね。」・・・みんなで、外の風景をしばらく見つめる。


ウイスキーを3杯飲んで、席を立つことにする。「ごちそうさまでした。」「ありがとうございました。どうぞお気をつけて。」・・・外に出る。顔に大粒の雪が降りかかる。慌てて傘を開く。駅に向かう人々と一緒に駅前ロータリまで急ぐ。

中野駅の改札を入ると、中央線の立川行きの到着時間が迫っている。階段を駆け上がると、ちょうどホームに電車が入ってくる。電車に乗り込むと、車内放送が入る。「この電車は立川行きでしたが、武蔵小金井行きに変更になります。」・・・雪の影響が出始めたようだ。ドアが閉まって電車が発車する。雪の風景を眺めながら、長い一日が終わっていく。