今日(28日)で2月も終わり。「さくらや」が今日で閉店だったり、バンクバーオリンピックももうすぐ終わりだったり、なんとなく寂しい日曜日だ。朝から冷たい雨が降り続き、気温も上がらない。朝から、またまた引き受けてしまった仕事をコツコツとこなす。昼を過ぎた頃、雨も上がり、1時頃には陽が差してきた。「もう仕事なんかやってられるか」、という気分になる。
陽は差しているが、外は寒い。こんな時のために用意した完全防寒の自転車用ウエアで出かけることにする。自転車で走り始めると、顔に当たる風がもの凄く冷たい。ネックウォーマーを引き揚げて、顔の半分を覆う。非常に怪しいスタイルだとは思うが、寒いんだから仕方がない・・・よね。
新青梅街道を出発し、環七から甲州街道に入り、初台のあたりまで走って、引き返す。自転車で走っていると、とても爽快な気分になれる。自宅に帰って、シャワーを浴びる。さて、ビールでも飲もうか・・・ん〜、どうせなら、街に出て飲もう。ということで、家を出て、鷺ノ宮駅に向かう。
鷺ノ宮駅前の横断歩道を渡って、川沿いの道を左へ。すぐに「東宝亭」という居酒屋の大きな赤提灯が見える。午後5時45分。ちょうどいい時間だ。この店に入るのは、5年ぶりくらいだろうか。
ドアを開ける。入口の段差にちょっと驚いてしまう。最初に入ったときもそうだったような気がする。すっかり忘れてたなあ。・・・「こんばんは。」「いらっしゃいませ。」と女将さんが柔らかな笑顔で迎えてくれる。カウンターの奥に向かう。この店の面白いところは、奥の席から鷺ノ宮駅のホームが見えることだ。暮れていく日差しの中を、西武新宿線の電車が到着しては出て行く・・・しみじみとした光景なのだ。
奥から2番目の席に座る。先客は女性の1人客。焼酎のボトルを前にグラスを傾けている。「瓶ビール(中500円)をお願いします。」と注文する。「アサヒ、サッポロ、キリンがありますが。」「キリンで。」・・・こういう選択をよく迫られるのだが、自分はあまり拘らないので、だいたい「キリン」と答えている。ちょっと前までは「サッポロ」と答えていたような気がする。「やっぱりキリンじゃなきゃだめ、っていうお客さんがいるのよ。」と女将さんが言う・・・なるほど。
ビールが届く。一口・・・ビールを飲むと、自分の体調が分かる。今日はさすがに脚に疲れが感じられる。だが、不快なものではない・・・美味しい! お通しが出てくる。三点盛りだ。真ん中のおひたしから一口・・・素朴な味わいが嬉しい。しゃきしゃきとした食感もいい。鯖の竜田揚げを一口・・・香ばしさと、魚の脂の甘みが溶け合って美味しい。これはビールに合うなあ。最後は、なんだろう・・・里芋だ。一口・・・うん、甘く煮てある。ほっとする味だな。
右側の窓からは、西武新宿線の黄色い電車がちょうど入ってきたのが見える。ドアが開き、乗客が降りてくる。外はもう薄暮。2月最後の日曜日が終わろうとしている。そんな風景を見ながら、飲むビールはちょっと苦い。でも、しみじみと人生の味わいを感じる・・・ような気がする。
女性客の焼酎のボトルに「夢」という文字が書いてある。その字がとても上手い。ただ形が整っているだけでなく、伸びやかで、しかも明るさを感じる。「その夢という字、とてもいいですね。」と話しかけてみる。「これは書道の先生に書いてもらったんです。」との答え。その書道の先生も、この店のお客さんとのこと。自分もボトルを入れて、何か書いてもらいと思うくらい、いい字だ。
さて、おつまみを・・・この店は魚料理が中心。刺身や焼き魚のメニューが多い。もちろんその他の一品料理も揃っている。え〜と、どうしようかな・・・黒板のお薦め料理の中に「ほや」があるのを見つける。これだな。「すみません。ほや(500円)をお願いします。」・・・「ほや」が好きになったのはいつごろからだろう。多分玉村豊男さんのエッセイを読んでからだ。「すずしい味」というのが妙に納得できた・・・。
「ほや」が届く。ポン酢をつけて、一口・・・うん、この味!くにゅくにゅとした食感。独特の香り・・・美味しいなあ。日本酒が飲みたくなる。「すみません。お酒(380円)を燗でお願いします。」目の前の燗つけ器には、「神鷹」の瓶が取り付けられている。・・・燗酒が届く。「ちょっとぬるいかしら?」と女将さん。一口・・・ぬるめではあるが、酒の香りがふわっと立って美味しい。「今日はこれくらいが美味しいみたいです。」と答える。
女性のお客さんと女将さんは、カラオケの話をしている。この店の近くにはカラオケスナックが何軒かあって、カラオケ好きのお客さんが多い。5年前もカラオケの話題で盛り上がっていたことを思い出す。「カラオケはお好きですか?」と女性から聞かれる。「いえ、歌う機会がないもんで。」と答える。「私も最初は嫌だったけど、いまでは平気になりました。」と女性。「じゃあ、機会があったら歌ってみます。」と答える。そっけない答えで申し訳なくなる。
燗酒を飲んでいると刺身が食べたくなる。黒板のお薦めの中から選ぶ。「すみません。かつおの刺身(500円)をお願いします。」と注文する。・・・「この店に来たのは、5年ぶりくらいなんですよ。」と女将さんに話しかける。「そうなんですか。私も歳を取ったでしょ。」「いえいえ、全然変わりませんよ。」・・・ほんとうに変わってない。店も、マスターも女将さんも。
「かつおの刺身」が届く。燗酒をおかわり。では刺身を一口・・・初がつおなので、脂は少ないが、かつお独特の味と香り。美味しい。燗酒、燗酒!いい気分になってくる。女将さんもいろいろ気をつかって話しかけてくれるし、居心地がいい。家は近いし、地元の店はいいなあ・・・。
燗酒を2本飲んで、今日はここまで。「ごちそうさま。美味しかったです。」「ありがとうございました。またお寄りください。」
外に出る。やはり寒いのだが、なんとなく春が近いような気がする。明日から3月。慌ただしい日が続くだろうが、また頑張らなければ。踏切が開くのを待ちながら空を見上げると、丸い月が輝いている。
東京都中野区若宮3-58−28 大森ビル
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Posted by hisashi721 at 17:30│
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