小さな幸せ・・・高田馬場「アウトサイダー2」
またまた寒い夜が戻ってきた。慌ただしい一日を終えて、職場を出たのが午後7時過ぎ。「今日は寒いねえ〜。」と警備員の人に声をかけられる。歩いていると、確かに思ったよりも気温が低くて、身体が震えてくる。・・・それにしても、疲れたなあ・・・。今日(2日)は静かな店で、ぼんやりしてから帰りたい。
山手線で高田馬場まで向かう。電車は混雑していて、つり革をもつことすらできない。脚に力を入れて、ぐらぐらする身体を支えるのだが、時間が経つにつれて辛くなってくる。新宿駅を過ぎて、やっとつり革を確保できて、身体を休める。おかげで何も考えなくてすんだのはよかったのだが。
高田馬場到着。「静かな店でぼんやり」という目的なので、今日は先日行った「こくているnico」に行くつもりだ。山手線の高架に沿いの道を歩いていく・・・ん?看板に電気が入っていない。店の前まで行くとドアにはシャッターが下りている。7時開店のはずだが・・・。そういえば、この店を紹介してくれた人が「8時ごろには開いてるはずだけど、時々もっと遅くなったりすることがあるから気をつけて。」と言っていた。時間は8時ちょうど。もうすぐだと思うけど・・・。
寒くて待っていられないので、また早稲田通りまで戻る。少し歩いて「さかえ通り」へ。これぐらいの時間になると、客引きがズラリと並んでいる。その人達を縫うように進んで、奥へ向かう。どうしよう・・・。やっぱりバーに行きたいから、「アウトサイダー2」に行くことにする。12月に行って以来だ。あの日は雨が降っていたなあ・・・。
ゲームセンターの横を右に曲がって、神田川に通じる路地を歩く。ちょっと怪しげな店を通り越して歩いて行くと「アウトサイダー2」が見えてくる。ドアに近づくと、ガラス越しに店内が見える。どうやら、まだお客さんは来ていないようだ。ドアを開ける。「こんばんは。」「あら。いらっしゃいませ。」と女性の店主が迎えてくれる。
「今日は寒いですね。3月なのにどうしたんでしょう。」と店主。「寒いですねえ。身体が震えました。」「明日は暖かくなるんですよね。」「でも、明後日は雨で寒いみたいですよ。」「なかなか三寒四温というようにはならなくなってきましたね。」・・・こんな挨拶をしながら、前方後円墳型のカウンターの真ん中当たりに座る。
「ハイネケンビール(850円)をお願いします。」と注文。BGMはアメリカンポップス。壁にはプロジェクターで、映画が映されている。天井扇がゆっくりまわり、マリリンモンローの写真が飾られている・・・。ハイネケンが届く。グラスに注いで、一口・・・すっと喉を通っていく・・・疲れが重くのしかかる。もう一口・・・美味しい!
店は開いたばかりのようだ。グラスを用意し、ライムを皿に盛るなどという作業。カウンターの中で店主が忙しそうだ。「3月の高田馬場は静かですね。」と話しかけてみる。「そうですね。4月になったらまた大変だけど。」・・・「開店は8時になったんですね。」「そう、7時から開けても意味がないかなって。うちのお客さんは時間が遅いから。」
お客さんがいないせいか、とても落ち着く。ビールをゆっくり飲んでいると、眠ってしまいそうだ。窓の外は人通りがほとんどない。神田川にかかる橋を自転車に乗った女性が渡っていく。疲れがとれないなあ・・・。眠気覚ましには、バーボンソーダ。「オールドクロウの炭酸割り(700円)をお願いします。」と注文する。
バーボンソーダが届く。一口・・・華やかな甘い香りが口の中にさっと広がる。美味しい。神経が立ち直りはじめる・・・「6万年前のね、人類の話なんだけど。」と女性店主が話し始める。「ネアンデルタール人とかですか?」「たぶん。その人類のお墓からね、花の化石がたくさん出てきたという話を聞いたことがあってね。」「へえ〜、そんなに前から花を供えてたんですね。」「人間ってね。お花みたいな小さなものでも幸せになれる可愛い存在なのかもしれませんね。」
「だからね。例えばいい絵を見たら、心から楽しむの。批評家になるんじゃなくてね。本を読んでも、心から楽しむ。自分のかわりに、書いてくれる人がいるんだから、自分は楽しむことに徹しようって・・・。人のまねをしようとか、あの人のようになりたいなんて無駄なことだと思うのよ。自分は自分の人生を楽しむために生きているんだから。」
「自分の人生を楽しむ・・・ですか。」「難しいことじゃないわよ。お店にお客さんが来るでしょ。疲れてたり、仕事が大変だったりしても、美味しいお酒を飲んだり、美味しい食事を食べたりして、また元気をだして、それで、『うちの子、来年高校なんだよ。』なんてにこにこしながら話したりしているのを見てるとね、こっちまで幸せになってくるのよ。」
なんだか、考えさせられる話だ。でも、言葉が出てこない。バーボンソーダをおかわりして、ゆっくり飲みながら考える。小さなことでも幸せになれる・・・その幸せをたくさん見つける。そして心から楽しむ・・・言葉でまとめようとすると肝心なことがするりと逃げてしまいそうだ。
酒屋さんが注文の品を届けに来る。打ち合わせで、忙しそうだ。話の続きを聞きたいが、それは自分で考えるべきだとも思う。2杯目のバーボンソーダを飲み干して、席を立つことにする。「ごちそうさまでした。」「この前来たのは1月?」「いや12月です。」「西武線でしたね。」「ええ、鷺ノ宮です。」「お気をつけて。」・・・帰る前にもう一言、「もしかして文学少女だったのでは?」「そうだったかも。」笑顔が眩しい。
外に出る。くらくらするほど寒い。疲れてたり、仕事が大変だったりしても・・・か。そう、自分にとっての小さな花を見つけることだ。スナックの壁に貼られたポスターが、風に震えている。駅に近づくにつれ人通りが多くなる。みんな小さな幸せを、胸の中に大切に持っているんだなと思う。
東京都新宿区高田馬場3-1-5 サンパティオ高田馬場119
03-5389-6755
Posted by hisashi721 at 17:30│
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素敵なひとときを過ごされたんですね☆
「自分にとっての小さな花」・・・
とっても大事だと私も思います。
その、小さな花を見つけられるまなざしを
保ち育てたいものですね♪
いのこさん、こんにちは。
この店の女性は、とても魅力的な話をする方でした。
自分が何をすればいいのか、少し分かった気がして
、嬉しかったです。
最近、酒場で学ぶことが多いような気がします。
これこそ「引き寄せの法則」でしょうか(笑)
完全に復活されたようですね。
相変わらずの名文、短編小説を読んでいるような
感じがします。
江東区東陽町に住まいしている私は、西武新宿線や
高田馬場には、なかなか足が向きません。
高田馬場では、「れもん屋」に行ったことがあります。
そう、私も広島市出身です。
今後も貴方のブログ、参考にさせていただきます。
でん爺さん、こんにちは。
高田馬場の「れもん屋」は、修道高校出身のマスターが美味しいお好み焼きを焼いてましたね。
また、これからもあの味を守って欲しいものです。
江東区はいいお店が多いですね。
でも、たまには高田馬場や阿佐ヶ谷にも来てみてください。
よろしければ、一緒に飲みましょう。
これからも、よろしくお願いします。
おはようございます!
今日もブログ楽しみにしています。
冬休み、のんびりと体をいたわってくださいね。
来週もまた楽しい記事をお待ちしています。
今週もがんばろ〜
楽しいブログでした。
また遊びに来ますね。
暴風に注意してくださいね。
また楽しいブログ更新お待ちしています。
ブログ楽しく拝見いたしました。
楽しい週末になるといいですね。
こんばんは。
今週もお仕事お疲れ様でした。
楽しいブログですね。
早くお天気回復してほしいですね。
楽しいブログをお待ちしてます。
楽しいですね。
拝見させていただきました。