2022年08月02日

夢の京都・・・阿佐ヶ谷「川名」

IMG_20220801_175844710日(日)以来の川名だ。その日、帰り際に壁の貼り紙を見たら、次の日から長期休みとのこと。「どこかに行くんですか?」とマスターに聞くと、「京都に行くんだよ。誘ってくれる人がいたんでね。」との答え。「いいですねー。祇園祭ですか?」「うん、初めてなんだよ。」・・・羨ましー。

 

それで、今日(731日)、ちょっと間が空いちゃったし、川名に顔を出そうと思ったのだ。新宿から中央・総武線に乗り換えて阿佐ヶ谷。時間は1535分。微妙な時間だなあ。川名の開店時刻は16時。このまま歩くと、その前に着いちゃう。かといって、どこかで時間を潰す暇はない。ゆっくり歩いて行こうと思う。

 

それにしても暑い。まだまだ日差しも強烈だ。歩いているだけで汗が噴き出して来そうだ。松山通りは自転車の人が多くて、それを避けながら歩くのが煩わしく感じる。いつもはそんなことはないのだが、暑いので余裕がなくなっているらしい。で、店の前に来てしまったのが1550分。マスターは何か奥で作業中。入口横の焼き台の炭火から熱風がもわっと顔にかかる。ひえ〜、こりゃあだめだ。中に入れてもらおう。


「こんにちは。」と声を掛けて、中に入る。「いらっしゃい!」とマスターの元気な声で迎えられる。もう二人の先客がいて、カウンター1番奥の席と4番目の席が埋まっている。3番目の席に座る。奥の席のお客さんはいつ来てもこの席にいて、テレビを見ている。もう一人のお客さんもよく見る顔で、週刊漫画雑誌を読んでいる。慣れたものである。

 

16時少し前、やっと「何にしますか?」と声がかかる。それぞれ飲み物を注文している。自分は3番目に聞かれる。「レモン(酎ハイ)でいいですか?」「それでお願いします。」開店時間になるまでは注文してはいけない。それまではあくまで準備の時間なのだ。マスターが向かいのセブンイレブンの方を確認して、奥から2番目の席に、お通しのオレンジと日本酒の二合徳利を用意している。ん?

 

IMG_20220731_155722酎ハイ(418円)が届く。「おつまみは何にしますか?」「豚軟骨、白モツ、ササミ(それぞれ1132円)を塩で2本ずつ・・・」「ササミは1本しか残ってないんですよ。」「では1本で、それとカブ漬(198円)ください。「はい!」・・・ふう、無事注文完了。酎ハイにレモンを絞り入れて、一口。濃い!が、美味しい!つい「んめ〜」と声が出てしまう。

 

年配のお客さんが一人入って来る。マスターが「いらっしゃい。用意してありますよ。」とさっき2番目の席を指さす。「え?」と驚いた様子。「さっき、セブンイレブンに入ったのが見えたから。」とマスター。さすがだ。「準備中の札が掛かっていたんで、コンビニで待ってたんだよ。」とお客さん。…準備中の札?気がつかなかったなあ。

 

マスターが言う。「最近、開店前に堂々と入って来る人が増えて困ってたんだよ。こっちは仕込みとかやっているのに、注文なんか始めるんだ。だからしょうがなしに準備中の札を買ったんだよ。まあ、若い人が多いんだけどね。」ぎくっ。もちろん3人とも若くはない、しかし最後の一言はマスターの気遣いともいえるのではないか。などと、考えながら、他のフライング組二人をそっと見てみる。テレビを見ながら笑ってる。漫画に没頭している・・・。

 

ここで終わるとよかったのだが、日本酒のお客さんが、テレビのお客さんに話しかける。「時間を合わせて入ってきたら、もうお客さん3人もいるんだもの。驚いたよー」ひょうえ〜。「時間前に入ってもいいの?」ストレートな質問、きたー。テレビのお客さん注目の答え。「まあね。でも、注文はできないよ。」それが?という感じ。まあ、そうだよね。

 

IMG_20220731_160812焼き物が届く。最近のお気に入りは豚軟骨。以前、他の店で食べた時は、焼き方が浅く、クニュクニュした食感で、美味しいとは全然思えなかった。それがこの店で、何かが売り切れで、「じゃあ豚軟骨で」となぜか口走ってしまい、食べることになった。それが美味しいのなんの。程よくこんがりと焼けていて、コリコリの本来の食感もよく、それでいて味わい深いものだた。というわけで豚軟骨から一口、ほー、こりっ、こりっ・・・「んめ〜」

 

ササミは塩加減が本当に良くて、これも好みだ。さすがに日曜日。1本だけ残っていたとは。フライングして入ってきてよかたー。白モツは本来タレで食べることが多いと思うが、カリカリに焼いてもらって、塩味で食べるもまたいいのだ。酎ハイ、酎ハイ。・・・というわけで、酎ハイお代わり!

IMG_20220731_160425この店の漬物類はすべて美味しいのだが、今日のホワイトボードには、水ナス、キャベツ浅漬(それぞれ198円)もあった。それらにも心惹かれるのだが、自分はこの店のカブ漬が美味しいと思う。なぜか食べだすとやめられない、そんな中毒性がある。今日も、やっぱり美味しいなあ。酎ハイ、3杯目行くかな・・・。

 

店はだんだん忙しくなる。まずは奥の座敷から埋まっていく。カウンターも新規にお客さんが入って来る。最初からいる4人はそれぞれの世界で静かに飲んでいる。テレビのお客さんが会計に立つ。続いて漫画のお客さんも。・・・そろそろかな。自分も3杯目の酎ハイを飲み干して、席を立つ。「ごちそうさまでした。」「ありがとうございます。」

 

会計をしながらマスターに話しかける。「京都、どうでした?」「いやもう、最高だったよー。」「へー、いいな。」「ちょっと、これ見て。」とスマホの動画を見せてくれる。山鉾巡行。別世界が映し出されていた。マスターが思い出を振り返るように、穏やかな顔で画面を見つめている。そして、言う。「人の縁はたいせつにしなくちゃね。人の縁でここに行けたんだもの。じゃなかったら行けなかったよ。」

 

外に出る。暑さが襲い掛かって来る。7月の京都も暑かったろうな。その中を夢のような祭りが繰り広げられる。人の縁か・・・お客さんを大切にするマスターへのご褒美だったのかな。暑い。でもさっき見た夢の世界の余韻がまだ残っている。夢の京都、その中を自分も歩いているようだった。

東京都杉並区阿佐谷北3-11-20 第二川名ビル 1F
03-3339-3079


Posted by hisashi721 at 10:37│Comments(0)