寄り道Blog

初台駅の階段を上がり、外に出ると熱気が襲ってきた。今日（8月19日）も35℃の予想だ。午後1時30分、駅前の緑道から一斉に鳴く蝉の声が聞こえてきた。真夏にもしっかりと秋が忍び寄って来ているようだ。それにしても暑い。目の前を、サンバイザーをかぶってサングラスをかけた女性が自転車で通り過ぎる。Ｔシャツの袖を肩までまくり上げている。風はない。

強い陽ざしの中を少し歩くと、小さな喫茶店が見えてくる。看板に「FIRST HILLS COFFEE DANNBO」とある。リニューアルして3年半。喫茶「ダンボ」の時代から、バタートーストが評判の店だ。ドアを開ける。入口近くに立っていた弟さんが「いらっしゃいませ。」と迎えてくれる。お母さんと息子兄弟、3人でやっている店だ。

昼食時間を過ぎているので、客は少ない。奥の席で新聞を開いている男性と文庫本を読んでいる女性の２人のみ。静かだ。表通りが見える席に座る。注文は「トーストセット（480円）をお願いします。飲み物はアイスコーヒーで。」・・・昼食にトーストというのも物足りない気がするが、どうしても食べたくなってしまったのだから仕方がない。頭の中は、もうトーストでいっぱいだ。

メニューを見ると、どれも安い。ブレンドコーヒーが400円。アイスコーヒーは420円。トーストは単品200円なのだが、セットにすると、アイスコーヒーでもブレンドコーヒーでも480円。これは破格の安さなのではないだろうか。他にもピザトーストのセットが650円、エビピラフのセットが750円。キーマカレーのセットが850円。どれも美味しいので、ランチの時間は近所のビルに勤める人々が集まって来る。

トーストセットが届く。こんがりきつね色に焼けたパンの表面にバターがたっぷりぬってある。バターの香りが食欲をそそる。さあ、いただきますよー。一口、がぶりと・・・ふぅ〜、表面はかりっとして、中身はもっちり。バターだけの素朴な味だが、それが却って快い。これこれ、この味だよー。美味しいなあ。アイスコーヒーのほのかな苦みが、またそれを引き立ててる。

自分が好きなのは、そのランチの時間をはずした昼下がりのこの時間だ。目の前の通りを行き交う人を眺めるでもなく、ぼんやりと過ごしたり、本を読んで過ごしたりする。それがなんとも、癒される。それはこの店に流れる空気がそうさせるのではないだろうか。リニューアルする以前は、みるからにレトロな外観、中も、「ああこういう店が昔はあったよな」という雰囲気だった。

リニューアル後、どんな店になったのかなと興味津々で行ってみたら・・・店の外観は全然違っていたが、中はほぼ以前の店のつくりを踏襲していた。へぇ〜、これはいいな、と感心したものだ。だから、昔も今も変わらず、ゆったりした時間が流れているのかもしれない。表通りを、汗を拭きながら歩いてる人を見ると、外には出たくないなと思う。

「いやー、暑いねー。」と言いながら、年配の男性客が入って来る。「いらっしゃい」とお母さんが笑顔で迎える。「参ったよ。」「今朝は割と涼しかったんですけどね。」「そうなんだよ。」「朝と今とでは10℃は違いますね。」・・・入口近くのカウンター席に座りながら、男性客は参った参ったを繰り返す。「やっぱり、この店で涼むのが最高だね。」・・・そうそう。

午後の優しい時間が過ぎていく。そろそろこの辺で。「ごちそうさまでした。」「ありがとうございます。外は暑いですから、気を付けてお帰りください。」3人の笑顔に送られて、外に出る。うわー、暑〜い。8月も後半。この暑さしっかり味わっておくのもいい。そんな気になったのも、この愛すべきガフェのおかげかもしれない。

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