目黒駅、午後7時。今にも雨が降り出しそうな暗い空を見上げる。傘を職場に置いて来たことを少し後悔する。なぜなら、今日は寄り道したいなと思っているからだ。この時間だと1時間くらいお酒を飲んで帰りたくなる。もっと早いと下町に遠出したくなるところだが、今日はおとなしく近場で。山手線に乗り込む。・・・今夜は渋谷かな。
渋谷駅に到着。目指す店は決まっている。ちょっと遠いけど久しぶりだからな、などと思いながら、乗客の群れに押し流されるように電車を降りる。するとハチ公前のスクランブル交差点が目に入る。うへっ、めちゃくちゃ雨が降ってる。傘をさした群衆が蠢いている。わー、これはやめとこう。傘持ってないし。店も遠いからなー。慌てて降りた電車に戻る。
新宿駅に到着。さて、雨も降って来たことだし、いつもの店にするかなと迷う。帰り道に30分から40分ぐらい滞在して帰る店がある。毎日のように顔を出しているので、少し間があくと、ものすごく心配される。「お久しぶりです。体調大丈夫ですか?」「みんなで寄り道さんどうしてるかな、って毎日噂してたんですよ。(寄り道を呼ばれているわけではないが)」などと心配顔で言われてしまう。・・・3日前に来たんだけどな、なんですぐ病気になるんだよ、とも思うが、そこは善意からくる言葉なので、笑顔で「元気でやってましたよ。」と答える。他のお客さんは、1ヶ月に1回でも、いや3ヶ月にぶりであっても、久しぶりとは言われない。「いらっしゃい。いつものでよろしいですか?」・・・いつもの・・・。
心配メールが来ることもある。「この頃、顔をお見せになりませんが、どうなさっているでしょうか。一同心配しております。」・・・おいおい、まだ火曜日だろ。先週の金曜日に行ったじゃない、と言う感じ。またそうなる懸念もあるが、やっぱり他に行こう。一駅だけの寄り道にしようかな。雨が降っているから駅から近いところとなると・・・あそこだな!
というわけで、京王新線で新宿から1駅の初台駅にやって来た。雨は幸い小降りになっている。傘をさしていない人も多い。よし!それに目指す「鳥八」は駅から30秒以内の位置にある。駅前の道を10秒、右折して10秒くらいで到着。ドアを開ける。「こんばんは」と言いながらドアを閉めようとするとびくとも動かない。あれっ、力を込めても動かない。するとテーブル席に座っていた、常連客らしい年配のおじさんがスッと立って、助けに来てくれる。「このドア、調子悪いんですよ。」「ありがとうございます。」・・・あれっ、マスターだったのか。ひさしぶりだからわからなかった・・・。
この店は3階まである。1階は厨房とカウンター6席、それにテーブル1つ。2階は広くてテーブル席が並んでいる。3階はお座敷で、大人数用。カウンターには一番奥の席にサラリーマンが1人。奥から4番目の席に座る。目の前の厨房には白衣白帽子の正当な板前さんたちが忙しそうに働いている。この店は焼き鳥屋というより、居酒屋、いや、料理屋といといっていいほどのメニューの多さ。それでいて気楽な雰囲気。それがいいのだ。・・・さて注文だ。「生ビールの中(580円)お願いします。」・・・自分の声が弾んでいるのがわかる。「生ビール」の「生」部分に力が入って「ぬぁま」になり、「ビール」の「ル」が巻き舌になってしまった。よほど、飲めるのが嬉しかたんだな、自分。
生ビールとお通し(300円)が届く。さあ!いただきますよー。生ビールを一口、いやゴクゴク・・・ふぃ〜、うめ〜、たまらん!お通しは「イワシの煮付け」。生姜風味で甘い味付け。疲れた身体には嬉しいねー。奥のサラリーマンは皿に焼き鳥をずらりと並べて、ウイスキーハイボール(450円)を飲んでいる。入口上のテレビを熱心に見ている。テレビを見るにはこの席が一番いいのだ。知ってるねー、常連さんだね。
「煮込み(480円)ください」と注文する。この店の名物に「鳥八サラダ(680円)」というのがある。たっぷりの野菜と鶏肉のサラダなのだが、自分はそれが好みだ。でも、ボリュームが凄いので今日はスルー。種類も豊富なお刺身や茄子料理、鯨立田揚げなんかも食べたかったが、ここは鶏もつを煮込んだ「煮込み」で。
「酎ハイ(400円)ください。」と注文。飲み物は日本酒(太平山、一ノ蔵、八海山、美寿々)
ビールに焼酎(麦、芋)、サワー類、ウイスキー(角)、梅酒、カシス、ワイン(ボトル)などが揃っている。最近は酎ハイばっかりだな、と思う。店によって薄い、濃いが全然違う。そこが楽しい。濃いのがいいわけでもない。いつもの店の酎ハイはちょうどいい。この店のもいいな。
煮込みと酎ハイが届く。煮込み、量多いなあ。ずっしりしている。鶏もつと豆腐を煮込んだもの。豆腐は底に隠れている。七味をかけて、一口・・・味噌仕立てでくどくない味ではあるが、味わいはしっかりしている。もつのねっとり感もいい。美味しい!これはいいなー。酎ハイ、酎ハイ。相性もバッチリだ。
この辺で焼き鳥にいきますか。焼き鳥は「ねぎま、レバー、砂肝、皮、つくね、なん骨」それぞれ1本ずつ注文できるし、この6品盛り合わせというものある。それに加えて、絶品の手羽先(一皿2本500円)と獅子唐(160円)がある。・・・「すみません。ねぎま(160円)、レバー(160円)、なん骨(170円)を1本ずつ塩でお願いします。」と注文。今日はあくまで1時間の寄り道。おとなしくね。
煮込みの量が多いので、酎ハイがすすむ。その間にも、グループ客が次々入ってきて階段を上っていく。カウンターにも外国人らしいお客さんが来て、焼き鳥を大量注文してモリモリ食べつつ、生ビールをゴクゴクやっている。いいねー。テーブル席にもサラリーマンが来て、谷中生姜といわし刺しで日本酒を飲んでいる。渋いぞ。板前さんたちの働きぶりもとても好感がもてる。丁寧さが伝わってくる。相変わらず、いい雰囲気だなー。「酎ハイ、おかわりお願いします!」
焼き鳥が届く。ねぎまから・・・塩加減がちょうどいい。ねぎの甘さを引き立ててるなー。レバーはこのねっとり感いいねー。酎ハイ、酎ハイ・・・たまらん!軟骨は食感が命。コリコリとクセになる美味しさ。帰りたくなくなっちゃうよ〜。
酎ハイを飲み終えて、今日はここまで。席を立つ。いつの間にか上の階からママさんが降りて来ていて「ありがとうございました。」と見送ってくれる。厨房の板前さんたちも「どうもありがとうございます。」と声をかけてくれる。気持ちいい挨拶。「ごちそうさまでした」という言葉に心を込める。
外に出る。雨はちょっと強くなっている。駅まで走りながら、雨に濡れるのも楽しいものだなと思ってみる。
東京都渋谷区初台1丁目37−15 リーフ初台1F〜3F
03-3379-0884
Posted by hisashi721 at 12:46│
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