水曜日(17日)。最近寝不足気味で、どうも調子が出ない。それに30℃を超える5月にしては異例の暑い1日。何度、今日は早退しようかなと思ったかわからないほど。それでも仕事をなんとかこなして、職場を出たのは午後6時30分ごろ。今日はどうしようかな。まだ週の真ん中だし、無理するのもなあ・・・。
でも、こんな時はもつ焼きを食べると元気が出るという経験がある。もっとも、たまたまかもしれないが・・・。たくさん食べてはいけない。程よく食べること。それが秘訣だ。目黒から乗った山手線は予想通りぎゅうぎゅう詰めの満員電車。やっぱり、元気をつけに行こう。次の「恵比寿」で降りる。
ホームに溢れる人混みを縫って、エスカレーターに乗り、改札に向かう。駅前ロータリーに出て右へ。と思ったが、人があまりに多くて前に進めない状態になっている。ちょっと遠回りになるが、ロータリーの横断歩道を渡り、さらに駒沢通りの横断報道を渡る。一旦、飲食店街の方に入って、右に曲がる。懐かしの「縄のれん」の横を通る。カウンターには満足そうな顔のお客さんがずらり。次の通りに出ると、「さいき」がある。なんと、入店待ちの人が4人ほど。どこも混んでるな。
さらに右に進んで、「田吾作」のある通りに出る。する左斜め前に縄のれんを下げた店が見える。今日の目的地、「とよかつ」だ。灯りの入った店の看板には「まくら とよかつ」とある。この店の名物は「まくら」という、つくねに韮を巻いてこんがり焼いたもの。これ、元気を出すにはもってこいじゃないですか。
躊躇することなく縄のれんをかき分けて、戸を開ける。中は変形コの字型カウンターが12席程。カウンターの中が厨房。超いい感じ。先客は4人。手前の横棒3席は予約席らしい。焼き台は入り口近くにある。仕事中のマスターに「こんばんはっす。」と我ながら変な挨拶をしてしまう。ただ、元気のいい声は出た。こちらを見たマスターが「いらっしゃい。どうぞ奥へ。」と迎えてくれる。コの字の縦棒は長くて、その先の横棒は90度には曲がってなくて、120度ぐらいに緩やかに曲がっている。その奥から2席目に座る。
奥にいたママさんが、「いらっしゃい。まずお飲み物からどうぞ。」と声をかけてくれる。「生ビール(600円)をお願いします。」と注文する。先客は4人中3人がホッピーで、1人がレモンサワー。生ビールが届く。「焼き物の注文どうぞ」とママさん。「まくら(160円)、なんこつ、アブラ、カシラ(各150円)で。まくらだけ2本お願いします。」と注文する。この店では焼き物の追加注文はできない。もっと食べたくなるとは思うが、体調を考えて控えめに・・・。
では、生ビールを一口・・・よく冷えてるなー、乾いた喉に心地よく流れ込んでいく。たまらん!お通しはないので、ビールを飲みながら焼き物を待つ態勢。マスターが焼き上がった串を持ってお客さんのところに行き、白い皿に「はいよ」と載せていく。みなさん待ちかねたように、即座に口に運ぶ。自分にも早く来ないかな。
やっぱり何か注文しておこう。そう思って壁のホワイトボードを見る。「すみません。ぬか漬け盛り合わせ(350円)をお願いします。」とママさんに注文する。すると他のお客さんも「ぬか漬けね。」「ママ、ぬか漬け」と口々に注文。ママさんは冷蔵庫から大きめのタッパーを何個か取り出す。へー、いろいろな漬物が入るんだな。まず、かぶ漬けを取り出して丁寧に切り始める。期待感が増す。
マスターが近づいてきて、「はいよ」と自分の皿に串を1本載せてくれる。「あぶら」だな。いわゆるシロだ。一口・・・ほー、タレがいい味。醤油ベースで甘さ控えめ。シロ特有の味がしっかり生かされている。期待通り。間の葱も香ばしい。いいねー。予約席の3人が入ってくる。男性1人と女性2人。さらに男性2人組も入ってくる。さあ、賑わってきたぞ。
さて、ホッピーに行こうかな。「すみません。ホッピー(450円)お願いします。」とぬか漬けを届けに来てくれたママさんに注文する。「ホッピーね。」と答えたママさんは、ジョッキを取り出し、半分くらい焼酎を注ぐ。そして、ホッピーの瓶の栓を抜いて、一緒に届けてくれる。ジョッキは氷が入っていないので、焼酎の量はコップ一杯分だ。濃いなー。
ジョッキにホッピーを注ぐ。微妙にホッピーが余る。一口・・・んうめー。これまで飲んだホッピーの中で一番美味しいかも。とにかく焼酎の濃さがいい。甘さを感じるし、爽やかでもある。いいなー。3cmくらい飲んで、残ったホッピーを注ぎ入れる。ぬか漬け盛り合わせはなかなかの量。大きなカブ、胡瓜それぞれ1本(1個)分、それにいろいろな漬物を細かく刻んだものが一掴み分。胡瓜を一口・・・ポリポリ、いい歯応え。塩気も絶妙。素晴らしい。
「かしら」と「なんこつ」が届く。どちらもいい味。なんこつのコリコリ感がたまらない。かしらの深い味わいもいい。ホッピーも美味しい。店の雰囲気もいい。飲んだり食べたりしながら、のんびりした気持ちになる。ホッピーをおかわり。焼酎が多いせいかほんのり酔いが回るのを感じる。・・・「まくらだよ」とマスター。おお、ついに来たか。挽肉のつくねに巻かれた韮が黒く焦げていて、それがまた食欲をそそる。一口・・・ジューシー!肉汁が溢れる。皿に韮の風味がすごく効いている。これは絶品。うめー。
予約席に座った3人は地元の人のようで、恵比寿の歴史に詳しい。マスターもママさんも当然詳しいので、非常に興味深い話が展開されている。他のお客さんも「へー、そうなんだ!」と相槌を打っている。特に超有名女優さんが来ていたという話には、店の全員が驚く。自分も思わず「そうなんですか!」と声を出してしまう。「今はアメリカ在住で来れないけど、帰ってきたらすぐに来てくれるよ。」とマスター。「来たら、シロの煮込みを持たせたりするんだ。」・・・想像ができない。
さらに、超有名男優さんが若い頃よく来ていたという話に移る。そういえばその方は恵比寿に住んでいるということを聞いたことがある。さすが昭和21年創業の老舗。今はおしゃれに発展した恵比寿の街で、今なお話題の店だけのことはある。
いつまでも飲んでいたいが、明日もあることだし、今日はここまで。「ごちそうさま。」ママさんが笑顔で「ありがとうございます。」と応えてくれる。「さっきの〇〇さんの話、びっくりしました。さすが、とよかつですね。」「そうねえ。よく来てくれたから。」「今度、シロの煮込み食べたいです。」「今日は売り切れだったから。次ね。」「はい。」
外に出る。ああ、いい時間を過ごしたなあ。駅に向かう。銀幕のスターも疲れた時は、この店に来てゆっくり過ごしたのだろう。キラキラした街にも帰りたくなる店がある。駅に向かって歩く。5月の夜が妙に優しい。
東京都渋谷区恵比寿西1丁目3−5
03-3461-8539
Posted by hisashi721 at 17:44│
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