土曜日(20日)、午後5時。東急池上線「蒲田行き」電車が石川台駅に到着。電車を降りて改札に向かう。シンプルな作りの駅だ。改札を出ると右手に商店街が見えるが、あまりお店は多そうではない。踏切を渡り、坂を降りていくと線路横の通り沿いに何軒か飲食店が並んでいる。その中に、今日の目的地「串ろう」の看板が見える。
午後5時開店ということなので、もう入れるだろうと店の前まで行くと、20代前半くらいの若いお姉さんが立っている。店の前に掲示されたメニューを見て、中の様子を伺っている感じ。入店する勇気を奮い起こしているのだと思う。おそらく初めてで、しかも女性1人なのだから、その気持ちはよくわかる。「一緒に入りますか?」などとはもちろん言わず、自分は開け放しの入り口から店内に入る。
すると若い男性店員さんが、「いらっしゃい。」と言いながら、あれっという感じでこちらを見る。「何名様ですか?」「1人ですけど。」・・・振り向くとさっきのお姉さんが自分の後に入ってきている。なるほど、ちょっと迷わせてしまったか。入り口から奥にかけてカウンターが7席、その奥にテーブル席。自分が本日初めての客のようだ。「じゃあ、お客様はこちらにどうぞ。それからそちらのお客様はあちらに。」というわけで自分はカウンターの真ん中の席。お姉さんは入り口すぐの席に座る。
飲み物のメニューを見る。まずはビールがいいな。今日も蒸し暑い日だったから、きっとビールが美味しいぞ。生か瓶か・・・瓶ビールはサッポロラガーなんだな。これはいい。というわけで「サッポロラガービール(中瓶530円)をお願いします。」と注文する。若い男性店員さんが、元気よく「はい!生ビールですね!4番のお客さん、生です。」と厨房に声をかける。厨房には串を熱心に焼いているマスターともう1人のお兄さん。そのお兄さんが「生じゃなくて、瓶だよ。」と訂正してくれる。カウンターを挟んでいるものの、真正面にいるのでちゃんと聞いていてくれたらしい。
無事、サッポロラガービールとグラスが届く。では、グラスに注いで、一口・・・う〜ん、美味い!キンキンに冷えているわけではないので、素直に喉に流れ込んで来る。ふと、左側二席向こうのお姉さんを見ると生ビール。ジョッキが白く曇るほど冷えている感じが伝わってくる。あっちはキンキンだなー。どっちがよかったのか・・・。
お通し(400円)が届く。大根おろしとピクルス。サッパリ系。焼き物のメニューを見る。種類は実に豊富。「大山鶏の鶏串」が10数種類、「国産野菜串」が6種類、他にも豚、牛、合鴨などの串もある。その他、炭火焼き料理や揚げ物、干物、サラダ等の一品料理、ピザのようなオーブン料理も揃っている。その中で選んだのは、「希少部位」と書かれたメニュー。メニューから顔を上げたところで、ちょうど目が合ったマスターが「注文お受けしますよ。どうぞ。」と言ってくれる。「希少部位の7種類を一本ずつお願いできますか?」「わかりました。味付けはお任せでいいですか。」「はい。それでお願いします。」
もちろん、「ねぎ間」や「つくね」などにも心惹かれたのだが、希少部位にしたのには理由がある。それは職場での会話がきっかけだ。新人の同僚との会話の中で「自宅の最寄りの駅」を尋ねたところ、「石川台です。」という答え。申し訳ないのだが、その石川台というのが何線沿線かを知らなかった自分は「それはどこにあるんですか?」とさらに尋ねる。「池上線で、蒲田と五反田のちょうど真ん中くらいの駅です。大井町線に乗り換えてます」「池上線!大井町線!」・・・旗の台、長原、雪が谷大塚、大岡山、戸越公園などかつて寄り道した酒場を思い出す。
「石川台ってどんな街ですか?」「住宅街です。」「そうなんですね。」「でも、美味しい焼き鳥屋さんがあるんですよ。」「な、なんですと!」・・・というわけでこの店を教えてもらった。さらに鶏のモツ系が絶品とのこと。これは行かなければならないと強く決心したのだ。それが昨日のこと。早速、午後時開店を狙って、4時過ぎに職場を出てきたというわけ。同僚は別の仕事のため一緒に来ることができず、1人で今カウンターに座っている。
希少部位というのは「銀皮(160円)、はつもと(180円)、腺胃(220円)、白レバー(220円)、ソリレス(250円)、食道(220円)、背肝(220円)」の7種類。白レバーとはつもとは食べたことがあるが他は知らない。あるいは食べたことはあるが呼び方が違っていたというものもあるかもしれないが・・・。
ぼんやりビールを飲んでいると、マスターが「白レバーです。」とカウンター越しに皿を渡してくれる。塩とごま油をかけた味付け。では、一口・・・ほー、蕩けるー。美味しい、美味しすぎる。この溶けるような柔らかさ素晴らしい!ビール、ビール!ビール終了。「すみません。白ホッピーセット(400円)をお願いします。」「はい、4番さん、白ホッピーセットです!」
ホッピーセットが届く。グラスに氷、栓を抜いたホッピーの瓶。オーソドックス。では、グラスにホッピーを注いで一口・・・濃くはない。適度な配合で美味しい。焼き鳥にはもってこいのさっぱりした味だ。「銀皮です。」と次の串が届く。銀皮とは、砂肝の周囲の部分という。確かに砂肝のコリコリ感がある。しかし、砂肝とはやはり違う味わい。砂肝が苦手な人でも美味しく食べられるだろう。タレもいい味だ。いいねー。
「ソリレスです。」・・・ソリレスとはももの付け根の部分。ぷっくりとした肉。一口・・・ジューシー、ももよりも味が濃いようだ。これは・・・もの凄く・・・うめー。これまで食べた焼き鳥串の中で最高かも。これはたまらん!「すみません、ナカ(焼酎220円)ください。美味いなー。10本くらい食べたい。でも希少部位だからなー。まあ、それくらい美味しいということ。
「食道です。山椒を振って食べてみてください」・・・ほー、山椒をパラパラふって、一口・・・プツプツといった面白い食感。香ばしい風味もいい。どれも美味しいなあ。ホッピー、ホッピー。お客さんが次々とやってくる。気がつけばカウンターも満席に近い。最初にいたお姉さんはもう帰ってしまった。2階もあるので、予約の家族連れやグループ客が次々にやってくる。マスターはお客さんごとに名前を呼んで迎えている。地元密着。丁寧でフレンドリーな接客。素晴らしい。テイクアウトのお客さんも多い。だからいつも焼き台は満杯。1時間後だったら入れなかったかも。
ホッピーのナカをおかわり。はつもと、腺胃、背肝を食べ進む。店内は活気に満ちて賑やかだ。外はまだ明るい。開け放した入り口から時折吹き込んでくる風が気持ちいい。もうしばらくのんびりしていこう・・・。
時計を見ると午後6時。1時間経ったか。では、今日はここまで。「ごちそうさま。」席を立つ。「ありがとうございました!」と店員さんたちが元気よく送ってくれる。外に出る。駅は目の前。改札を入り、駅のホームから改めて街を眺める。空が夕焼けで染まっていたら、きっとこの街に似合うだろうなと思う。
東京都大田区東雪谷2丁目4−16
03-6425-8794
Posted by hisashi721 at 15:08│
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