土曜日(10日)、仕事を早めに切り上げる。なぜかというと、明日、ある会議に参加するからだ。そのための資料を紙袋に入れる。そういえば、水曜日も重い資料を持って帰ったっけ。事情は違うが、今日も重い紙袋を下げて帰るのか・・・。でも、早く職場を出ること自体は気分がいい。少しだけ、寄り道して行こうかな。
というわけで、職場を出たのが午後4時過ぎ。バスで目黒駅へ。明日のことを考えると、今日は短時間の寄り道に留めたい。山手線に乗る。その時、そうだ、あの店に行こう、という考えが閃く。次の恵比寿駅で下車。西口の改札を出る。西口ロータリーに出たら右へ。恵比寿像、喫煙所、交番を右に見ながら歩いて、駒沢通りへ。横断歩道を渡ると、「田吾作」や「とよかつ」のある通りに出るのだが、今日は渡らずに先に進んで山手線の高架をくぐる。二つ目の通りを渡り、右へ。少し歩くと「お食事処」と染め抜かれた紺色の暖簾が見えてくる。店の名は「こづち」。
店から、ちょうどカップルが出てくる。2人とすれ違うように、暖簾をくぐる。店の中は厨房を囲むL字型のカウンター。Lの縦棒は10席くらい、横棒は4席。縦棒の1番手前と、一つ席を開けて3番目の席にそれぞれ1人客。「お兄さん、お一人?」とカウンターの中の厨房から、見るからに活発そうな美人お姉さんが声をかけてくれる。「1人です。」と答えると、「こちらに」と先客2人の間の席を勧めてくれる。
3人並ぶ形になるのだが、一人一人の席は広めに設定してあるので、窮屈な感じはない。「どうします?」「ビール(サッポロラガー大瓶700円)を。」・・・この店は定食中心の食堂ではあるのだが、お酒を飲むお客さんも多い。10時30分から18時までの営業。なんだか、広島の「源蔵」を思い出す。もちろん、メニューなどは全く違うのだが・・・。
「はい、お兄さん、ビールね。」とお姉さんがビールとグラスを届けてくれる。お姉さんがこちらを見つめているので、注文を待っているのだと気づく。即座に「肉豆腐(380円)とハムエッグ」(500円)をお願いします。」と注文する。「はい。こちらのお兄さん、肉豆腐とハムエッグです!」と元気な声で注文を通す。料理担当の男性2人が「はい!」とこちらも元気よく応える。
では、ビールを一口・・・わー、今日もビールが染みるなー。いけませんよ、これは・・・うめー。ふいー。左どなりの男性客はオムレツをつまみにビールを飲んでいたのだが、「チャーハン、お願いします。ご飯少なめに。」と注文している。この店のチャーハン、人気があるらしいからなー。「ビール2本だったよね。」とお姉さんが確認している。「ええ、肉豆腐とオムレツとビール2本だよ。」「了解!」お姉さんの元気が心地よい。
右隣の男性客に「唐揚げ定食」が届く。唐揚げのボリュームがすごい。ご飯も山盛り。わしわしと食べ始める姿がいい感じ。「肉豆腐です。」・・・おお、来た、来た。こちらもなかなかの量。豚バラ肉が美味しそうだ。では、一口・・・見た目がしっかりしていたので、木綿豆腐かと思ったが、滑らかな絹ごし・・・へー、甘さと、醤油味のバランスがいい。美味しいなー。さすが人気メニュー。ビールに合うよー。
続いて、ハムエッグが届く。玉子が2つ、その下にハム、さらにその下にポテトサラダ。そしてたっぷりのキャベツが添えられている。うわー、こちらもボリューミーだなー。白身とハムの部分を一口・・・火が通ったハムが香ばしい!醤油をかけた白身も美味いなー。この組み合わせがいいんだよ。ビール、ビール。・・・左隣のお客さんのチャーハンが届く。これでご飯少なめ?普通の店なら大盛りだろう。
男女2人のお客さんが入ってくる。男性は体格がいい。女性は小柄。「今日は2人?」と厨房の男性店員さんが迎える。女性が「いつもお世話になってます。」と頭を下げる。男性は大学生みたいだが、女性は少し年上。姉と弟だな。こういう関係はすぐピンとくる。自分にも姉がいるからだ。しかも2人も。自分が大学生の時、上の姉が上京してきて、アパートの大家さんに挨拶してくれた後、「いつも、ご飯を食べているお店に連れて行って。」というので一緒に行ったことがある。その時も「弟がいつもお世話になってます。」と定食屋のご主人に頭を下げてくれたなー。懐かしい。
弟さんはチャーハンやオムレツやアジフライや色々なものを注文する。お姉さんの方は「そんなに食べて大丈夫?」と言いながら笑顔。自分は「野菜炒め定食」を注文して、「美味しそう。楽しみ。」などと言う。・・・ぐー、いい感じ。ハムエッグの黄身を一口で食べて、ビールを飲む。自分まで幸せな気分になるぞ。
ビールをおかわり。肉豆腐の肉の方がいいつまみになる。ビールにとても合うのだ。うめーなー。新たに男性の1人客が入ってくる。ちょうど席を立った左隣の客の後に座る。店のお姉さんが「私の前の席だから、席料1万円ね。」などと言っている。「1万円なら安いな。」「そうでしょ。贅沢だよ。」「じゃあ、ビールと肉豆腐。最高だね。」
この雰囲気、本当にほっこりする。店内はレトロそのもの。開け放された入り口に暖簾が揺れて、その向こうは大通り。人通りも多い。でも、ここは別世界。どこか懐かしい映画の一場面のような光景が目の前にある。ビールが美味い。本当に。
ビール2本で、今日はここまで。「ごちそうさま。」「ありがとうございます。お兄さん、今日は2280円です。」相変わらずの元気な声。席を立つ。「毎度です!ありがとうございました!」と送ってくれる。
外に出る。まだ明るいなー。大通りは車の列。少し歩くと、またおしゃれな街並みが現れる。カフェでくつろぐ人々もまた笑顔。あの時、定食屋で姉は「頑張りんさいよ。何もしてあげられんけど、応援しとるけえね。」と恥ずかしそうに広島弁で言ってくれた。姉にとってはあれが初めての東京だったか・・・懐かしい声が蘇って、今の自分をまた励ましてくれる。
東京都渋谷区恵比寿1丁目7−6
03-3444-3763
Posted by hisashi721 at 11:57│
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