事の発端は、昨日(19日)の午後5時15分ごろ。土曜日の勤務を終えて、例によって新宿駅西口から西武新宿駅まで歩きながら、今日はまだ早いし、寄り道していこうかなと考えていた。明日は日曜出勤だし、連日の猛暑で立っているだけで背中から汗が吹き出してくる感じなので、遠くには行きたくない。じゃあ、西武新宿線沿線にしようかなと考える。そういえば中井駅の周辺に行きたい店が2つある。というわけで中井に行ってみようと思った次第。
各駅停車で西武新宿から3つ目、中井駅に降り立ったのが5時30分ごろ。2つの店は、北口と南口にそれぞれある。両方とも営業は5時30分からという事なので、どっちでもいいのだが・・・。ちょっと迷って、知り合いの人から「いいよ」と紹介してもらった方にしようと考える。南口に出て右へ。少し歩くと妙正寺川が流れていて、橋がかかっている。橋を渡らずに川沿いの道を右に向かって歩く。
この道を歩くのは久しぶりだが、居酒屋や飲食店が並んでいた記憶がある。それらしい建物は並んでいるのだが、多くは廃業したらしいと思われる状態。山手通りの中井富士見橋を上に見ながらさらに歩くと。「錦山」の看板が見える。時刻は5時40分。店の前に立つと「準備中」の札が入り口横に置いてある。ん?やっているように見えるけど・・・。
暖簾をくぐって、戸を開ける。右手がカウンター、左手がテーブル席。カウンターには先客が1人。カウンターの中は厨房で、マスターがそのお客さんと話している。「やってますか?」「やってるんですけど、席をご用意できません。」「え?」「予約でいっぱいでして。」「予約のお客さんが来るまででいいんですけど。すぐ帰りますから。」「すぐ来るんです。」「はあ、そうですか。」・・・というわけで外に出る。そういう店だったか。要予約だったか・・・。
じゃあ、もう一つの店にということで、北口に回る。暑くて汗を拭きながら歩く。店が見えてくる。看板に電気がついてない。暖簾も下がってない。スマホで確認すると「営業中」となってはいるのだが・・・夏休みかなあ・・・無駄足だったか。ガックリ。駅に戻り、各駅停車を待つ。はー、喉が乾いたなあ。
鷺ノ宮駅に到着。中杉通りを渡ったところで、赤い提灯に引き込まれるように「満月」に入る。ママさんがいて、常連さんがいる。ママさんとは10年以上ぶり。常連のTさんともそれくらい。瓶ビールをもらって、焼き魚をつまみに思い出話に花を咲かせる。・・・楽しい。鷺ノ宮のお店の話題が新鮮だ。とりあえず、気持ちは少しだけ落ち着いた。
で、今日(20日)である。昨日より30分遅く、午後6時ごろ中井駅到着。なんとなく中井で飲んでおきたいという、変な意地でやってきた。このままじゃ気持ちが収まらない、みたいな。日曜日だが、2つの店は営業していることをスマホで確認済み。でも「錦山」は要予約だとすれば1人客は難しいと判断して、今日は予約はやめておくことに。もう一つの店は今日もまだ夏休み中という可能性もあるが、行ってみようと思う。閉まっていたら・・・まあ、他にもどこかいい店があるだろう。
踏切を渡って北口側に。少し歩いて右へ。小路を少し歩いて、突き当たった所。ああ、看板が灯っている。暖簾も出ている。よかったー。お盆休みで日曜日まで休む店が多いので、この店もそうかなあと危惧していたが、来てみてよかった。看板の「権八」という力強い文字が嬉しい。さて、店の中へ。
戸を開けると、右手にカウンター席。左手に広い小上がり座敷。カウンターの中も広くてオープンな厨房。一瞬でいい店だと感じさせる。カウンターの中には親子と思われる2人の男性。「すぐにいらっしゃいませ。」と迎えてくれる。「1人です。」と告げると、この席へどうぞ。」とカウンター席を示してくれる。カウンターは2席ずつアクリル板で区切ってあって、二組のお客さんが座っている。1人客は自分だけ。
奥から5席目に座る。すぐに若い女性店員さんが来てくれる。「生ビール(600円)をお願いします。」と注文する。店員のお姉さんは「はい。」と笑顔で受けてくれる。それがとても気持ちのいい笑顔で、この店に来てよかったなーと思わせる。少し待つと、生ビールとお通し(300円)を持って来てくれる。「もつ煮込み(450円)と鰯刺し(550円)をお願いします。」と料理を注文する。「もつ煮込みと鰯さしですね。お待ちください。」とても丁寧な言葉遣い。ちょっとした発音でお姉さんがアジア系の外国人の方だとわかる。
では、生ビールを一口・・・んー、この一口目の至福・・・たまらん!美味しい。さて、お通しは・・・カブと大根、かぼちゃの煮物。なんとなく上品。味は・・・おでんっぽい味じゃないかと予想していたけど、甘い薄味。特にかぼちゃが優しい味で癒される。ビールを飲みながら、ゆっくり味わおうという気にさせる味。
左隣は年配のご夫婦。刺身の盛り合わせと日本酒。ゆったりとした会話。いい感じ。「昨日も来てみたんだけど、休みだったんだよ。」とご主人。そうそう。自分も来ました、などと会話に入りたくなるが自粛する。邪魔になっちゃうよなー。右隣は若いご夫婦。こちらは焼き物や刺身をたくさんとって、焼酎をロックで召し上がっている。こちらもゆったりと落ち着いた感じ。
もつ煮込みが届く。味噌仕立てで、もつ、野菜、蒟蒻が入っている正統派。もつを一口・・・わー、これも少し甘い味噌の風味が活かされた、クセがなくて品のいい味だ。美味しいなあ。ビール、ビール。いいねー。店を改めて眺めてみる。確かに古びてはいいるが、貫禄があるというか、その古さが安心させて飲ませてくれる雰囲気を作っているようだ。そりゃあ、こんな店でのんびり飲みたくなるよな。ここでお姉さんに「酎ハイ(450円)をお願いします。」と注文する。
息子さんの方が鰯刺しをカウンター越しに渡してくれる。こ、これは、美しい。濃いピンク色の身と銀の皮が輝いている。新鮮そのもの。おいしそー。では、早速一口・・・しっかりした歯応え、すっきりした旨みが溢れる・・・それでいてしっかりと脂も感じられる。素晴らしい!これまで食べてきた鰯刺しって何だったんだ、と思わせる。鰯料理が名物の一つというだけの事はある。
左隣のご主人が「手羽先」を注文。焼き鳥もここの名物。自分も注文しておこう。お姉さんは目が合うと笑顔で近づいて来てくれる。「レバーとはつ(1本180円)を塩で1本ずつお願いします。」「はい。塩ですね。ありがとうございます。」・・・本当に気持ちのいい接客だなあ。何となく嬉しくなる。
酎ハイを飲みながら、何となく物足りないなあと思う。日本酒飲もうかなあ。日本酒のメニューを見ると、「八海山」「久保田」「立山」「天狗舞」「浦霞」「黒龍」「十四代」とある。銘酒揃いだが・・・「すみません。黒龍(900円)お願いします。」とお姉さんに注文する。お姉さんは「黒龍ですね。」と淀みなく「こくりゅう」と発音してくれる。言いにくいかなと思ったけど、すごく上手。右隣の若い奥様が「お国はどちら?」と問う。「ベトナムです。」奥様は「日本語上手ねー。」と感心する。本当に!
よく冷えた黒龍がグラスに注がれる。一口・・・キリッとした味、ほのかな甘さ、鼻に抜ける香り・・・んめー。やっぱり日本酒いいな。今夜のカープの先発投手が福井出身の玉村君なので、それにちなんで福井の酒にしてみたけど、大正解!鰯の刺身を食べて、また一口・・・うわー、合うなー。この組み合わせ最高じゃないか。
焼き物が届く。ではレバーから・・・身は大きい・・・一口・・・適度にねっとり感があり、そして旨味がすごい・・・塩の加減もいい。美味しいなあ。ここで冷えた「黒龍」を・・・んまい!いいねー。日本酒にしてよかった。メニューと一緒に、色が褪せた感じの写真が1枚卓上に置いてある。藤子富士夫Aさんやちばてつやさんなど、そうそうたる漫画家が、この店の小上がり座敷で宴会をしている写真だ。皆さん、乾杯しているようなポーズ。自分もちょっとだけグラスをあげて、写真に向かって乾杯する。どうも。
日本酒をゆっくり飲み終えて、今日はここまで。お姉さんに「ごちそうさま。」と声をかける。素敵な笑顔で「お会計ですね。少々お待ちください。」と答えてレジの方へ。待っていると、さっきからレジにいた年配の大将が来て、「3610円です。」と伝票を示してくれる。お姉さんが来ると思っていたので、微妙な感じになってしまう。
外に出る。蒸し暑さは相変わらず。空には薄い三日月。急行電車が駅を通過する音が響いている。
東京都新宿区中落合1丁目13−2
03-3952-2898
Posted by hisashi721 at 11:13│
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