2023年11月12日

冬の足音・・・阿佐ヶ谷「鳥正」

IMG_20231111_203518土曜日(11日)。午後740分、阿佐ヶ谷駅到着。今日はなかなかハードな1日だった。普段の業務に加えて、イベント的なものの午後に入り、さらに追い討ちの仕事が突然降ってきた。なんとかこなして、午後530分ごろ職場を出る。比較的早い時間だったので、先日、荻窪の「とんぐるめ」という店で常連のお客さんから聞いた代田橋の店に行ってみようと思い立つ。ただ、その店の名前の記憶に自信がない。スマホで検索してもそれらしい店名がヒットしないのだ。

 

そんな不安を抱えたまま新宿駅に到着。京王線のホームの混雑を避けて、京王新線の改札に向かう。地下道を、小田急エース南館から京王モールへと進む。この通りは飲食店が並んでいる。したがって、午後6時ごろの人通りはかなり多い。人混みをすり抜けながら歩き、やっと改札に辿り着く。相変わらず駅構内は工事中だ。長いエスカレーターを降りて、ホームに出る。次の電車は急行「橋本」行き。代田橋には停車しないので、笹塚まで行って、乗り換えだな。

 

電車に乗り込む。しかし、今日は寒い。前回の投稿で「一瞬の秋」と書いたが、本当に一瞬だった。いきなり冬めいてきた。コート無しでは震えるほどだ。しかも今夜は風も強い。寒い中歩き回るのもなあ・・・という考えが頭をよぎる。あやふやな店名を探して、冷たい風吹く街を彷徨うのは、ちょっとキツイ。それに今日は少々疲れた。早くビールでも飲んで一息つきたい。うーん、どうしようかな。電車は初台を過ぎて、幡ヶ谷に向かっている。幡ヶ谷に気になっている店があったよな。駅の近くだし、そんなに歩かなくてもいい。今日はそこに決めるということで・・・。

 

幡ヶ谷駅で電車を降りる。地下から地上に出る。甲州街道の上に首都高速。圧迫感を感じながら、駅からすぐの路地に入り、店を目指す。店の看板はすぐに見える。なかなか立派な看板で、名店の雰囲気が漂っている。さあ、ゆっくり飲むぞ。戸を開ける。奥行きが広い。見た感じ9割の入りだが、カウンターに空席がいくつかある。ママさんらしい人が近づいてくる。「一人ですけど、カウンター大丈夫ですか?」「あのー、本日は混み合っておりまして、料理をお出しするのに時間がかかってしまうのですが、よろしいですか?」「ああ、そうなんですね。お刺身とかでも時間かかりますか?」「はい、お待ちいただくことになってしまうと思います。」・・・「わかりました。またにします。」「申し訳ございません。」・・・とほほ。


駅まで戻る。甲州街道沿いに、以前見つけた店がある。そこに行ってみよう。そこも駅から至近距離にある。ビルの2階なのだが、階段の下にメニューを書いたボードがあり、「お二階にどうぞ。」と誘う文句が添えてある。居酒屋というより割烹かな。料理が楽しみだ。階段を上る。さてどんな店かな。戸を開ける。正面にL字カウンター、左手にテーブル席。お客さんの入りは8割程度。カウンター席も数席空いている。だが、店の人の姿が見えない。カウンターの中のマスターも下を向いて作業中らしく。こっちを見ない。カウンターに座っていた年配の男性客だけがこちらをギョロリとした目で見る。でも「マスター、お客さんだよ。」などとは言わない。こういう店はちょっと・・・。でも入ってしまっているので、カウンターに近づいて、「すみません。一人ですけど、入れますか?」と声を張り上げる。鼻マスクのマスターがメガネの上からこちらをチラッと見て、「今日は、お客さんがいっぱい。」とだけ言う。ああ、なるほど。すぐに踵を返して、外に出る。するとママさんらしき人が出てきて、「営業中」の札をひっくり返して「支度中」にして店の中に入っていく。「拒絶」と言う言葉が頭をよぎる。

 

あまりに失礼な接客に、少々呆れながら階段を下り、駅に戻る。それにしても寒いなあ。これから代田橋に行くのはやはりやめとこう。新宿まで戻ることにする。こういう時は馴染みの店で癒されるのが一番。阿佐ヶ谷に行こう。「川名」だな。・・・というわけで、今、阿佐ヶ谷にいる。でも、意外と時間が経ってしまっている。川名のラストオーダーは830分だったかなー。もうあまり時間がない。駅近くの店にするか・・・寒っ!

 

南口に出て、パールセンター商店街の左、マクドナルドの横の道を入り、一番街に向かう。少し進んで右に曲がると「鳥正」がある。入り口に近づくと、焼き台の窓が細く開いていて、マスターが作業中。マスターは自分に気づいてくれて、「いらっしゃい。どうぞ。」と声を掛けてくれる。ああ、この言葉を待っていたのだ。優しー。

 

IMG_20231111_193858戸を開けて中に入る。改めて、マスターが「いらっしゃい。テレビ下の席でいい?」「もちろん!」・・・カウンターには2つしか席がない。そこは常連の方が座っている。後は4人用のテーブル席が4つ。その奥に小上がり座敷があってテーブルが2つ。これが基本なのだが、テレビの下の壁際に2人用テーブルが1つある。少々狭くて、テレビも見えないが、却って落ち着く席でもある。一つの椅子に鞄を置いて、もう一つの椅子に座る。すぐにホール係のお姉さんがおしぼりを持ってきてくれる。「お飲み物は?」「瓶ビール(サッポロ黒ラベル大瓶500円!)をお願いします。」「はい、瓶ビールですね。」

 

IMG_20231111_193808ベイスターズが1998年に一度だけ日本一になった時のポスターが貼ってある。カレンダーもベイスターズ。そんな壁を眺めながら待っていると、ビールをお通しが届く。早速、グラスに注いで、一口・・・今日は殊更沁みるなあ・・・うんめー。それにしても、遠回りしてしまった。これも経験といえば経験。わざわざ暖簾をくぐって来る客の気持ち、分かってほしいよな。でも、最後にこの店に迎えられてよかった。さて、つまみを注文しとこうかな。「すみません。」とお姉さんを呼ぶ。さっと近づいてきてくれて、「お伺いします。どうぞ。」とメモを取る態勢。これですよ、これ・・・。

 

「串焼き5本盛り合わせ(550円)を塩で、それと、ししゃも(350円)をお願いします。」と注文する。お通しはもやしの和物。タレが独特でとても美味しい。ビールが進む。テーブル席は2つ埋まっていて、一つはカップル、もう一つは40代くらいの男性2人。楽しいそうに会話をしていらっしゃる。でも、声を張り上げることもなく、とても落ち着いた飲み方。いい雰囲気だ。頭の上のテレビの音も控えめにしてあって、ほとんど気にならない。

 

IMG_20231111_194721まず串焼きが届く。かしら、はつ、たん、レバー、かわのもつ焼き5本セットだ。「塩焼きには、お好みでニンニク醤油をお使いください。」とお姉さんが言い残して去る。とりあえず、七味唐辛子を掛けて、レバーから一口・・・大きいレバーだなー、甘味も感じられる美味しいレバーだ。臭みもなく、食感ももそもそしてなくて、とても良い。美味しいなー。ビール、ビール。

 

IMG_20231111_194823続いて、ししゃもが届く。細長い皿に3匹のししゃもが乗っている。頭から一口・・・ああ、この味、焼きししゃもの香ばしさ、独特の風味、卵のプチプチとした感じ・・・これだよ!ししゃも、うめー。こちらもビールが進む。最近、こういうつまみで酒を飲んでなかったけど、こういうのがやっぱり合うんだよなー。ビール、ビール。美味い!

 

20代の男性が4人入ってくる。どこかで飲んでいたらしく声が大きい。奥の小上がり席に案内される。「ここのニラ玉が美味しいんだよー。」と一人が言う。「へー、食べてみたいな。」「絶対に食べるべきだって。」みたいな会話から始まる。賑やかなグループなのだが、ふざけてはしゃぐというタイプではなさそうだ。お通しのもやしを「これ、めちゃくちゃ美味しい!」「ほんとだ!美味いよね。」・・・感動している。こちらまで嬉しくなる。

 

さて、ビールの次は・・・今日は燗酒がいいな。「すみません。高清水を燗で2合(700円)、お願いします。「燗ですね。お待ちください。」・・・このお姉さんはいい意味でクール。淡々と注文を受け、確認し、確実に厨房に伝えると言うタイプ。それがとても爽やかな感じがして好感が持てる。つまみも注文しておこうかな。「まぐろぬた(500円)もお願いします。」「はい。まぐろぬたですね。」

 

IMG_20231111_201046燗酒が届く。一口・・・やや温め。でも、美味い。2合あるからゆっくり飲めるな。小上がり座敷の4人組にニラ玉が届く。「美味い、美味い。最高!これもっと食べたい!」「美味いよなー。追加でもっと注文しようか。」「そうしよう。これはすごいよ。」そばを通ったお姉さんに「美味しいです!最高です。」と興奮気味に話しかけている。「ありがとうございます。」とだけ答えてお姉さんは去る。クール。

 

IMG_20231111_201236「まぐろぬた」が届く。ほー、ゴマがたっぷりかかっている。これまで見たまぐろぬたとはちょっと違う。味噌の量が控えめで、分葱とマグロが主となっている。一口・・・おお、味噌だけじゃなくて、分葱とマグロに醤油ベースの味付けがされている。それに味噌も加わって、いやー、美味いなー。これ、燗酒に合わせるために作られた料理みたいだ。いいなー。美味しい。酒、酒。

 

午後9時。さあ、もう帰らなくては。今日はここまで。「ごちそうさま。」席を立つ。外に出る時、マスターに話しかけたくなったが、言葉が出てこなくて、「ごちそうさまでした。」という言葉に心を込める。色々あったけど、最後にこの店に来て本当に良かった。

 

外に出る。寒い!とはいえ真冬の寒さでは当然ない。冬の足音が聞こえている程度だろう。冬はきっぱりと来るものだ、と高村光太郎も言っているではないか。その日を迎えるのはいつになるのだろうか。駅前の人々の賑わいの中でそんなことを思う。


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東京都杉並区阿佐谷南2丁目16

03-3316-3276


Posted by hisashi721 at 15:46│Comments(0)