2024年03月20日

桜が咲く前に・・・幡ヶ谷「文泉」

IMG_20240319_190459祝日前の火曜日。気温は低いものの、風もなく穏やかな夕暮れがやってきた。桜の季節はもうしばらく待たなければならないだろうが、今日はあの店に行こうと思っている。午後630分、京王新線「幡ヶ谷」駅に到着。地下から南口側に階段を上り、甲州街道の傍に出る。西原商店街に向かってのんびり歩く。すき家がありドトールコーヒーショップがあり、どこにでもある駅前の風景ではあるが、何となく落ち着いた上品な雰囲気が漂う。

世田谷道を渡ると西原緑道が見えてくる。玉川上水旧水路緑道だ。もうすぐこの桜並木が鮮やかに咲き誇ることになる。先日行った「浜屋本店」はさらにこの先。緑道の脇道を左に入って、少し歩く。「文泉」の看板が見える。この前来たのは1月10日だったなあ。では、戸を開けて・・・。

中に入ると、左手は座敷。右手がカウンター。そして、奥に4人用のテーブルが3つ。そのうち2つのテーブルはくっつけられて予約席になっている。残りのテーブルには女性が1人。5席ほどのカウンターの真ん中にはマスターが座り、その奥に男性客が1人。入り口近くに立っていたママさんがこちらを見て、「お客様は・・・」と問う。テーブルを予約した客かどうかを尋ねていると思われる。

1人ですけど。大丈夫ですか?」と問うと、ママさんは、マスターに「お一人様です。」と告げる。マスターは「えーと、席はどうしよう。座敷かそれともカウンターで良ければ・・・。」すると、テーブル席の女性客が「こちらへどうぞ。」と手を広げて迎えてくれている。心がすごく動いたのだが、「申し訳ないので、カウンターでお願いします。」と答える。


ママさんがカウンターを片付けてくれて「どうぞ。」と促してくれる。マスターの右側の席を選んで、「お久しぶりです。」と挨拶する。「はい。」何となく反応がぎこちないので、「覚えてますか?」と笑顔で問うと「顔には見覚えがあるんですが・・・」忘れられてる・・・。

「1月に来たんですけど、そう、広島の話をしました。」「ああ、何となく。」・・・自分にはこういうことがよくある。印象が薄いのかなあ。割と強烈な印象を残したかのように自分では思っていたが、そうでもなかったらしい。気を取り直して、「生ビール(450円)をお願いします。」と注文する。

IMG_20240319_175805ママさんがおしぼりを渡してくれる。生ビールを待つ間、マスターに話しかける。「やっぱり、この店はいいですね。本当に落ち着きます。マスターは「ありがとうございます。」と笑顔。こうやって、誰にでも気軽に話せる雰囲気を作ってくれるので、居心地がいいのだ。生ビールが届く。とても綺麗で上品なビールだ(中身は同じだろうが)。では、一口・・・泡が細かいような気がする・・・冷えたビールが喉を通っていく・・・うんまい!



IMG_20240319_180011ママさんがお通しを出してくれる。前回と同じく小さな舟の形の器に盛ってある。一口・・・ん?イカと・・・数の子だ・・・松前漬みたいな味がする。それも甘味をやや抑えてあるので、さっぱりとはいかないが、軽い感じで食べることができる。美味しいなー。ビール、ビール。

では、料理を。この前は焼き鳥と刺身盛り合わせだったよな。今回は・・・ふぐや鰻はまたいつか・・・んー迷うなあ。湯豆腐がある。もうすぐ鍋の季節も終わるなあ。じゃあこれと、鶏わさにしよう。「すみません。湯豆腐(750円)と鶏わさ(600円)をお願いします。と注文する。

マスターは焼酎のお湯割りを飲みながら、隣の男性客と話している。男性客は顔見知りのようだ。「かわしまに行ったんだよ。そしたら、今日は予約のみということで入れなかった。だから、ここに来たんだ。」と男性客。「かわしまって、歩くにはちょっと遠いからね。」「そう、だから今日は思い切って行ったんだけどね。」かわしま?ああ、知ってる。ていうか、何回か行ったことがある。そこで「かわしま、自分も行ったことがあります。お蕎麦、美味しいですよね。」とつい話に入ってしまう。

その店は、ご主人が怪我をしたとのことで、しばらく休業していたが、再開していたんだな。でも、人気店だから、やっぱり予約で埋まってしまうのかなあ。「そうそう、美味しいよな。」と男性客。「以前行った時、アントニオ猪木さんが来ていて、ワインを飲んでましたよ。」と答えると「アントニオ猪木が来てたんだったら間違いないな。絶対に美味しい。」

「アントニオ猪木って懐かしいなあ。ヒーローだったもんな。今の大谷くんみたいに。俺たちのヒーローだった。」と男性客。「モハメド・アリとの試合があったよね。」とマスター。「あれ、つまんなかったよなー。」「いや、本気だからつまんなかったんだよ。やらせやショーじゃないから。命懸けだったんじゃない?」「そうか、真剣だからこそつまんなくなるんだな。アリのパンチをまともに受けたらただじゃすまないもんな。」・・・なるほど・・・深い。

IMG_20240319_181258カウンターの中には3人。若い男性と女性。それからさらに若い少年のような男性が1人。兄弟?その少年のような男性が湯豆腐の土鍋を持ってきてくれる。鰹節と葱がたっぷり入った取り皿にマスターが醤油を入れてくれる。そして「リュウセイ、豆腐をすくうのものを。」と指示する。では、湯豆腐を一口・・・豆腐を穴の空いたお玉ですくって、取り皿に入れ、鰹節と葱をたっぷりのせて一口・・・熱っ!でも、うめー、豆腐が違う。味が上品。それに鰹節も削りたて・・・葱が甘い!完璧。

カウンター後ろの壁に掛けられた調理師免許から、「リュウセイ」は「流星」であることがわかる。「流星って名前なんですね。かっこいいなあ。」と言うと、「はい、流星です。」と控えめな答えが返ってくる。マスターによると、マウンターの中の人たちは親子だという。つまりマスターの息子さんとお孫さん。「親子には見えないなあ。どうみても兄弟としか・・・」「早くに生まれた子なもので。」なるほど。

「前回、いいちこのボトルを入れていたんですけど、お願いします。」あまりに店が居心地が良かったので、入れてしまっていたのだ。「飲み方はどうします?」「お湯割りで。」マスターがお湯の入ったポットを置いてくれる。では、いいちこをグラスに3分の1ほど入れて、お湯を注ぎ、一口・・・うーん、独特の香りと甘さ、お湯の温かさが心地よい。美味しい!

常連のお客さんは他にいく店があるということで、席を立つ。「俺は足が軽いから、すぐに次に行くんだ。」などと言い、自分に「また会いましょう。」と声をかけて出ていく。マスターに「お近くの方なんですか?」と問うと、「中学が同じでして。地元の。彼は生徒会長だったんですよ。足がものすごく速かったですよ。」

焼酎のお湯割りを飲みながら、マスターと話す。「どちらにお住まいなんですか?」「中野区です。駅は西武新宿線の鷺ノ宮です。」前も話した記憶があるが、まあ、そこはいいとして。「どうして、かわしまを知ってるんですか?」なるほど、そういうことか。かわしまは、隣の初台駅が最寄り駅。「美味しいという評判を聞いてわざわざ。美味しいお酒と料理を楽しんで、締めにお蕎麦って感じでいいですよね。」「ふむふむ。」「ところで店の前の緑道って、以前は玉川上水が流れていたんですってね。」「そうです。私が子供の頃は、まだ流れも綺麗で、よく遊んでましたよ。」「へー、いいですね。今となっては想像もできないですけど。そういえば渋谷区も富ヶ谷あたりでしたっけ、童謡の春の小川の風景は。変われば変わるもんですよね。」「その通りなんですけど、詳しいですねー。」「実は自分も大学時代、渋谷に住んでいたものですから。」

IMG_20240319_184540取り止めもないことを話しているうちに、テーブルの予約客が集まり始め、店は賑やかになる。「鶏わさ」が届く。見るからに美味そう。一口・・・うわー、鶏の味が濃いなー、噛むとじわっと旨みが出てくる感じ。さっぱりとして、いくらでも食べられる感じ。美味いなー。お湯割り、お湯わり。

マスターが語る昭和40年代の渋谷の話、本当に楽しい。どんどん焼酎をグラスに注いで飲んでしまう。身体も温まって、いい気持ちだ。常連さんが1人入ってくる。前回来た時に、いらっしゃった方だ。「こんにちは。」と挨拶したが、ん?という反応。おかしくなる。まあ、こんなものかな。今日はここまで。「マスター、ごちそうさま。桜が咲いたらまた来ますね。」「ええ、お待ちしてます。」

外に出る。冷たい風が吹いている。目の前の桜並木もじっと耐えているように見える。次に来る時は、見える風景も華やかになっているだろう。

東京都渋谷区西原1丁目2114 杉の子マンション

03-3469-4358


Posted by hisashi721 at 16:34│Comments(0)