午後6時過ぎ。東急東横線で渋谷駅到着。渋谷スクランブルスクエアのエスカレーターを上り地上へ出る。JR渋谷駅構内に入り、西口を目指す。金曜日の夜、もちろん尋常ではない人混み。例によって、外国人の「クレイジー!」という驚きの声が聞こえる。バスロータリーの横断歩道を渡り、渋谷フクラスのエスカレーターを2階へ。そして直結している桜が丘の歩道橋を渡る。歩道橋を降りて、桜が丘の坂を登る。すると、レトロな雰囲気の建物があり、外の立ち飲みテーブルでは多くのグループが盛り上がっている様子。手前には電光看板。そこには「富士屋本店」と書かれている。
開け放されたドアから中に入る。学生アルバイトらしい男性店員が出てきて、「お1人様ですか?」と問う。「はい。」と答えると、「ご案内します。」と店内の立ち飲み合みスペースに連れて行ってくれる。L字型のカウンター席その周りに立ち飲みテーブル。フロアを取り仕切っている、髭が特徴の店員さんが「カウンターの空いているところへどうぞ。手前か、真ん中か。お好きな方へ。」「じゃあ真ん中にしますね。」と言って、中に入る。右隣は女性の1人客。左隣は40代の男性1人客。鞄をカウンター下の棚に入れていると、自分の前にQRコードが印刷されたプレートが置かれる。
スマホで読み取り、ログインしてメニューを注文する。まずは瓶ビール、つまみは「おすすめ」の「ハムキャ別」と「揚げ物」の中から「ゲソの天ぷら」を選ぶ。カウンターの中には男性店員さんが、飲み物を作ったり、厨房から上がって来る料理を各テーブルに運んで行ったりと忙しく働いている。目の前にいるので、口頭で注文してもいいのだが、邪魔をしないようにスマホですべて注文を済すことにする。
ほどなく瓶ビール(サッポロラガー中瓶490円)が届く。さて、まずは一口・・・今日も気温高めだったし、この冷たさと、柔らかい苦み・・・うめー。移転前の店は大きなカウンターがメインだったけど、今の店はカウンターよりもテーブル席の方が多いので、グループで来ている客が多い。女性ばかりのグループも目立つ。年齢層は30代から40代の人が多い印象。ネットなどで調べて来た人も多くなったようだ。
カウンターの端に1人、60代と思われる男性がなんとなく渋い顔で飲んでいる。他のカウンターの1人客はスマホを眺めながらというスタイルなので、背筋を伸ばして立っているのが却って目立つ。ベテランの飲み手という感じ。右隣の女性は、LINEに夢中だし、左隣の男性はゲーム。自分は広島カープとジャイアンツの試合のチェック。確かになあ・・・。隣同士の会話が成り立つわけないよなー。
ハムキャ別(400円)が届く。山盛りのキャベツの千切りの上にマヨネーズがたっぷり、さらにその上にハムがのっている。それぞれが混ぜられることなく「別」になっているので、ハムだけ、ハムとマヨネーズ、ハムとマヨネーズとキャベツ、マヨネーズとキャベツというように、様々な味が楽しめる。ハムは塩気が効いてとても美味しい。ボリュームもあって、移転前の地下の店からの人気メニューだ。では、ハムでキャベツを巻いて、マヨネーズをつけて一口・・・んめー。ハムの塩気、キャベツの甘み、マヨネーズのコクが一体化して、なんとも美味しい味になる。ビール、ビール。
さて、次の飲み物は・・・。今日の日本酒とか、美味しそうだけど・・・んー、左隣の男性はホッピーか・・・右隣の女性はサワー系・・・本格焼酎とかもある・・・が、ここは・・・。スマホで注文。宝焼酎の小(180ml 450円)と炭酸(ウイルキンソン150円)を追加する。
焼酎セットが届く前に、イカゲソ天(500円)が届く。刻んだゲソのかき揚げのようなものを勝手に想像していたが、イカのゲソをそのまま揚げたものが登場。でかっ!一口・・・柔らかくて噛み切れるのがいい・・・コロモは薄くてパリッとした感じ・・・イカの旨味と油の甘み・・・うまぁ〜い。いいねー。
焼酎と炭酸、氷を入れたグラスが届く。焼酎をグラスに注ぎ、さらに炭酸を注ぐ。マドラーでかき混ぜて完成。一口・・・さっぱり。これは、マヨネーズと天ぷらの油に合うと思われる。ゲソ天を一口・・・、で、酎ハイを一口・・・合わないわけがないよー。んめー。このセットで2杯飲めるな。ゆっくり楽しみましょう。カープもリードしているし、楽しー。
両隣のお客さんが会計をして、出ていく。周りが急に広々としていい感じ。店を眺める余裕も出る。アルバイトの男性店員さんは初々しい。時々、冗談を言い合いながら、笑顔で仕事をしている。みんな黒髪でピアスはなし。真面目な学生なんだろうな。後ろのテーブルのお客さんたちも、大騒ぎはもちろん、大きな声で笑うこともなく、かといって会話は盛り上がっているという雰囲気。この空間を楽しんでいるようだ。このなんとも言えない素朴な作りと、建物のレトロ感がのんびりした空気を作っている。いいねー。
若い男性客が入ってきて、自分の右隣に立つ。すぐにLINEを始める。しばらくすると、若い女性が入ってきて、「ごめん、待った?」と自分とさっきの男性客の間に立つ。自分はちょっと左に寄る。すると、もう1人男性客が入ってきて、「お疲れー。」という感じで合流。3人になる。自分はさらに左に寄る。「すみません。」と3人が頭を下げる。「いえいえ、大丈夫です。」と答える。いい感じ。3人はハイボールを口頭で注文。それが届けられると、乾杯!あとは職場の話。新入社員なのかな。
2杯目の酎ハイを作って飲んでいると。2人客が入ってくる。髭の店員さんが、「お2人さまですか。えーと、あの一番奥の壁際のテーブルにどうぞ。」と差配する。その壁には、奥のカウンターで渋い顔をして飲んでいる男性客のコートがかけられている。その席が空いていたので、ハンガーに掛けておいたのだと思われる。「ちょっと、あのおじさんのコートを移動して、その席空けて。」と髭の店員さんが、学生店員さんに指示する。親しみを込めた言い方に聞こえたが・・・男性客の顔色が変わる。コートをハンガーから取って自分の位置に戻り・・・。
「会計して!」と不機嫌な声で言う。「はい。」と学生店員さんが答えると、「おじさんと言われても仕方のない年齢だけどね。それにしてもね。地下の店の時は楽しく飲めたんだけどね。」などとキレ気味。会計を済ませて、足早に出ていく。えー。入り口辺りからもう1人の学生店員さんが戻ってきて、「さっきのお客さん、めちゃくちゃ怒ってたよ。」「怒ってたねー。」と戸惑い気味に話す。
周りは何事もなかったように楽しげな会話が続いている。学生店員さんも、すぐに笑顔が戻る。地下の店だった時も年配の客が特に多いという客層ではなかったし、店員さんとお客さんの距離はもっと近かった。雰囲気が合わなくなったと感じたのは、時代が変わったということじゃないかな。その時々の飲み方と楽しみ方があるはず。次に来た時は、すごく楽しい気分になれるかもしれない。だから、また、来て欲しいなと思う。いつまでも続く今日はないのだし。
お客さんが次々と入ってくる。満員に近くなる。2杯目の酎ハイを飲み終えて、今日はここまでかな。「会計をお願いします。」と学生店員さんに声をかける。すぐに伝票が届けられる。「1990円です。」・・・やっぱり、安いよなー。学生店員さんたちに、「ごちそうさま。」と告げる。「ありがとうございました。またお願いします。」と元気な声が返ってくる。
外に出る。坂を下って、まだまだ再開発工事が続く渋谷駅に向かう。変わってしまった街に寂しさはある。でも、やっぱり渋谷っていいなとも思う。街が自分を勇気づけてくれる。おいおい、何をしんみりしているんだ、お前もどんどん変われ!ついて来いよ、と励まされているような気がするのだ。

東京都渋谷区桜丘町16−10
03-6455-2473
Posted by hisashi721 at 15:16│
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