
4月23日、火曜日。午前11時35分、地下鉄丸ノ内線「方南町」駅に到着。地上に出ると、今にも雨が降りそうな空模様。目的地は、1番出口から左へ歩き、信号2つめ辺りと聞いている。目の前は環状7号線。高円寺方面に歩けばいいということだな。ん?信号は・・・はるか向こうじゃん。
雨が降り出したら逃げ道がないな、と心配しながら歩く。1つ目の信号が遠い。佼成学園という学校が見えてくる。なるほど、この道は渋谷から阿佐ヶ谷へ向かうバスで通ったことがあるな、と思い出す。更に歩くと、立正佼成会大聖堂が威容を現す。でっかい建物だなあ。とするとその奥にある、これまたでっかい講堂みたいなのは、高校吹奏楽の甲子園と言われた普門館というわけか・・・。
そもそも、なぜこんな平日の昼前にこんな場所を歩いているか、というと、例によってまた、中野の「第二力酒蔵」に行った時のことがきっかけになっている。その日、自分は仕事帰りに「第二力酒蔵」に寄った。長居する気は全くなく、ちょっと気分転換という感じだった。いつものカウンター係のお姉さんはお休みの様で、他のお姉さんが自分のボトルを持って来てくれた。「あれ?何かメッセ―ジが書いてありますよ。」とお姉さんが怪訝な顔つきでボトルを渡してくれる。見ると、ボトルの首の辺りに白い紙がセロテープで止めてある。そこにメモが・・・「Nさんからのおススメです。方南町 中華そば 『蘭鋳』」
若鮎の天ぷら(1250円)をつまみに焼酎ロックをのみながら、メモを眺める。仙川「しば田」、三鷹「満月」に続いてのお題。方南町なら近いので、前の2店よりも行きやすい。Nさんといえばこの店の常連で、グルメ情報に詳しいらしい。いつものお姉さんもまたこういう情報には目がない。こうなると行って見たくなるなあ・・・。
しかし、ネットで調べてみると、営業時間は平日の12時から14時までの2時間だけ。近いけど、行きづ
らいなあ。どうしましょ。というわけで、いろいろと仕事の日程を調整して、この時間にこの場所に来ることができるようになったのだ。新宿駅から丸の内線「荻窪」行き電車に乗り、「中野坂上」駅で「方南町」行き電車に乗り変える。開店時間の10分前までに店に着きたいと思っていたので、予定通りだ。期待が高まる。
少々駅から遠かったのと、雨が降りそうな天候というのが想定外だったものの、やっとここまでこれたという安堵感と、店に対する期待感で歩く速度も速くなる。途中、やはり人気がありそうなラーメン屋があったのと、風情のある食堂があったのが気になった。特に食堂では、チラッと開け放したドアから見えた、ビールを飲みながらのんびりしているお客さんの姿が印象的だった。いいなー。
2つ目の信号を渡ったところにそれらしい店が見える。古びた建物と屋根のところに蔓みたいな植物の葉が繁っているのが印象的。店の前に男性が二人。その道向かいに女性2人組と男性2人組が並んでいる。全部で6人。先頭と2番目は店の前の椅子に座っている。自分は7人目。そこにすぐにスーツ姿の男性が自分の横に立つ。さらに、いかにも評判を聞いて探して来たという感じの年配の男性が列に並ぶ。店内は6席ということなので、ちょっと残念。12時に開店。前の6人が店の中に入って行く。店員さんが自分に「お1人ですか?」と問う。「1人です。」と答えると、「どなたかが出てきたら、すぐに入ってこられて大丈夫です。」「わかりました。」「では、その椅子に座ってお待ちください。」
椅子に座って待っていると、まず、麺を湯切りをする音が聞こえてくる、さらに食器がぶつかる音がする。注文が終わって、ラーメンが作られ始めたんだなと想像する。さらに待っていると、いよいよ麺をすする音が聞こえはじめる。12時18分、ついに1人目の男性が出てくる。わーい、やっと入れるぞ。
店に入ると、L字型のカウンター。「いらっしゃいませ。奥の席にどうぞ。」とカウンターの中にいた2人の店員さんが声を掛けてくれる。横棒の一番奥の席が空いているのでそこに向かう。「ご注文は?」「味玉そば(1100円)をお願いします。」と注文して、カウンターの上の棚に置いてある小皿に千円札一枚と百円硬貨を一つ置く。
この店のメニューは「中華そば(1000円)」「味玉そば(1100円)」「大盛り(1100円)」「おつまみ(300円)」「エビス中瓶(500円)」のみ。さすがにビールを飲むわけにはいかない。さっきの食堂の風景を思い出す。自分に続いて入れ違いに入ってきたスーツ姿のお客さんの注文した「大盛り」と共に、自分の「味玉そば」が作られ始める。もう期待しかない。
「お待たせしました。」ついに「味玉そば」が届く。丼を受けとって、カウンターの上に置く。ふぅ〜、深呼吸をして、いただきます。濃い琥珀色の印象的なスープの色、光沢がありやや白っぽい麺、薄赤い大きなチャーシュー、メンマ、海苔、そして味玉。素晴らしいビジュアル。まず、スープから・・・大きなスプーンのようなレンゲでスープを掬って、一口・・・煮干しの味が爆発・・・とはいえ感触は滑らか・・・醤油の風味が加わって、繊細かつ豊かな味わい・・・んめー。そして麺を一口・・・細めのストレート麺で硬めのゆで加減・・・スープをまとってするすると入って来る・・・上品な味わい・・・これは美味しい。味玉はどうかな・・・黄身のねっとり感がいい感じ・・・ラーメンの総合力が上がるなー。
女性の2人客が「すごく美味しかったです。また来ます。」と言って出ていく。入れ替わりに入ってきたのは年配の客と、なんとなくラーメン通っぽい男性客。年配の客は「味玉そばの大盛り(1200円)」を注文。通のお客さんは「つまみとエビスビール、それから中華そば」と注文。いいなー。
食べ終わって、大満足。丼をカウンターの棚に上げて「ごちそうさま。」「ありがとうございました。」・・・戸を開けて、外に出る。幸いに雨はまだ降っていないが、空はますます暗くなっている。ただ足取りは軽い。Nさんや店のお姉さんにどのように伝えようかと考えると、楽しくてたまらない。
東京都杉並区堀ノ内2丁目13−13
03-6319-1045
Posted by hisashi721 at 17:47│
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