土曜日(11日)、仕事を早めに切り上げて、新宿まで帰ってきた。新宿住友三角ビルのカフェに入り、調べ物をする。ipadにBluetoothキーボードを繋いで、インターネットの世界に集中する。昼間は気温も上がり、アイスコーヒー(360円)が美味しい。午後5時になり、気になっていた酒場に向かうため、席を立つ。
東口新宿区役所近くの酒場に入り、居合わせた常連のお客さんと話しながら、各ハイボール(600円)を2杯飲む。サービスで出された南部せんべいがやけにハイボールに合う。帰り際、新しく入ってきたお客さんが、新宿紀伊國屋本店に行ってきたという話を始める。本が高くなった、とお店のママさんが話題を受けると、そのお客さんが今日買った文庫本が1200円であったと言う。なるほど高くなったんだなあと実感するが、今飲んでいるハイボールの値段を考えると複雑な気持ちにもなる。
店を出て、西武新宿駅まで歩き、準急「拝島」行き電車に乗る。座席に回るとアルコールのせいかうつらうつらしてしまう。鷺ノ宮に着いて、北口に出るといつもとは違う方向に歩く。それは銀行のATMに行くためだ。用を済ませて、銀行を出ると正面にある店が目に止まる。戸を開け放したその店はオープンしたばかりのようで、5人くらい立てそうなカウンターには誰もいない。いつも自分がこの店の前を通る時は、シャッターが閉まっていたり、コアな常連さんらしきお客さんが何人か飲んでいたりして、なかなか入るきっかけがなかったのだ。誰もいないなら、入ってみるか。看板には「立ち飲み ひらめいた」とある。
店はとても狭い。店に入るとすぐにカウンター。左側のスペースが厨房。「こんばんは。」と言いながらカウンターの厨房寄りに立つと、「いらっしゃいませ。」と迎えてくれたのは、黒いポロシャツ姿の女性。勝手に男性店員さんを想定していたので、ちょっと驚く。「えーと、生ビール(450円)と刺身三点盛り(700円)をお願いします。」と注文する。この店から都立家政駅側に30mくらい歩いたところに「平目板」と言う店がある。名前からいって当然本店だと思われるのだが、「平目板」の自慢は刺身。と言うわけで刺身三点盛りを注文したのだ。
「こちらには初めてですか?」とお姉さんが問う。「はい。」「うちはキャッシュオンです。」「ああ、そうなんですね。」財布を取り出して、カウンターの上に置かれた枡に千円札と百円玉を2個入れる。厨房のサーバーで生ビールを注ぎながら、「刺身は何にしますか?」とお姉さんが問う。カウンター右の壁に「今日のお刺身」と書かれた黒板が掛かっている。10種類くらいの刺身のメニューがある。その中から「かつお、ぶり、ホタルイカ」を選んで注文すると、お姉さんがスマホで「かつお、ぶり、ホタルイカお願いします。」とどこかに電話している。
生ビールが届く。金属製のタンブラーだ。持ち上げると掌に冷たさが感じられて気持ちがいい。では、一口・・・よく冷えている・・・ハイボールを飲んできたので、こういうビールはまた改めて身体をシャキッとさせてくれるようだ。んめー。「地元ではよく飲まれるんですか?」とお姉さんが問うてくれる。「以前はよく飲んでいた時期もあるんですが、今は、新宿とか中野とか阿佐ヶ谷が多いかな。」
「新宿のお店にもいたことがありますよ。」とお姉さん。「どの辺りですか?」「歌舞伎町のあずま通りってわかりますか?」「区役所の裏ですよね。ルノアールとか喫茶西武とかがある・・・」「ええ。」割とディープなところにいたんだなと感心する。「ゴールデン街のお店でも働いたことがあります。」「ゴールデン街!そうなんですね。今は外国人の方が多いみたいですね。」などという話をしていると、女性が入ってきて、「お刺身セットです。」と皿をお姉さんに渡す。お姉さんは皿のラップを取り、小皿をつけて自分の前に置く。「お待たせしました。」それから枡に入れたお金を回収して、自分に50円のお釣りを戻してくれる。
「刺身は向こうの平目板本店から届けられるんですね。」と問うと、「そうです。刺身は向こうで調理して届けてもらいます。美味しいですよ。」とお姉さんが答える。では、ホタルイカを一口・・・噛むとプチッという感じでワタが飛び出してくる感じ。噛むとイカの甘さが心地いい。「美味しいですね。さすがです。」と言うと、お姉さんがニコッと笑って「そうでしょう。」と答える。ビール、ビール。
「鷺ノ宮ではどこのお店に行っていたんですか?」「満月とか四文屋とかは今でも時々行きます。満月では豆乳割り、四文屋ではキンミヤの梅割りを飲みます。」「豆乳割り美味しいですよね。コーヒーが入っているのがポイントで。じゃあ、ペルルはご存知ですか。ずいぶん前からやっている店ですけど。」「もちろん知ってます。最近は足が遠のきましたけど。」「立ち飲み屋さんがもう一つできました。」「ブーガルですね。1度だけ行きました。」なるほど、地元で飲むと、すぐに共通の話題ができて楽しい。
お姉さんが、通りに向かって手を振る。ん?すると、若い女性が入ってくる。「こんばんはー。」「来てくれてありがとうー。」みたいな挨拶があって、女性客は「レモンサワーをお願い。」と注文する。そして、自分の方を見て、「こんばんは。」と声をかけてくれる。「初めてのお客さんで、満月や本店でも飲んでらっしゃるんだって。」とお姉さんが紹介してくれる。「どうも。」ちょっと照れくさい。
女性客は「長茄子焼きをたべようかな。」と注文する。お店のお姉さんが「油でいためるよ。」と答える。「油は少なめにね。」と女性客が応じる。「茄子おいしいですよねー。」と女性客が自分に話しかける。「自分も好きです。油で炒めるなんて、本当に美味しそうです。」「本当は唐揚げとか食べたいけど、ちょっと我慢してる。」「まあ、健康のためにはね。」「最近、ちょっと調子が悪くて。」「なるほど。」自分は2杯目の生ビールを注文する。
女性客はとても明るい。朗らかというか、気持ちのいい対応をしてくれる。「ちょっと寒くないですか?」「そうですね。昼間は暑いくらいの時間もありましたけど。かなり涼しくなってきましたね。」と答えると、女性客は「てっきり暑くなると思って半袖できちゃった。あはは。」と楽しそうに笑う。なんとなく「野方の女神」を思い出す。「鷺ノ宮の女神」?
女性客の長茄子焼きが届く。茄子の上にたっぷり葱が掛かっている。「うわー、葱がいっぱい。美味しそうー。」食べる時もとても幸せそうな表情だ。自分まで嬉しくなる。「どうしようかな。帰って料理しようかな。それとも本店によってもう少し飲もうかなー。」と言いながら笑う。
2杯目の生ビールを飲み終えて、今日はここまで。「また、どこかでお会いしましょう。」と女性客に挨拶して会計を済ます。
外に出る。思いもよらない楽しい時間だった。確かに風が冷たくなっている。じゃあねー。と言いながら女性客も出てくる。どうやら平目板本店に行くようだ。「風邪を引かないように。」と手を振る。
東京都中野区鷺宮3丁目15−7
03-3223-2377
Posted by hisashi721 at 16:18│
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