2024年08月29日

ある夏の午後・・・阿佐ヶ谷「珈司」

MP

8月も終わりが見えてきて、大型の台風が西から近づいているというある日の昼下がり、自分は午後110分に職場を出た。半日勤務を今日選んだのは、この夏を振り返る時間が欲しかったからだ。はたして自分はきちんと成果を上げていたのだろうか・・・。というわけで、午後2時開店の中野「第二力酒蔵」に向かう。

MP店の前には開店5分前に到着。早くも開店を待つ人々で賑わっている。しばらくすると店長が暖簾を出して、「どうぞ。いらっしゃいませ」と声を掛けると、次々に客が入っていく。それが落ち着いたころ、自分も暖簾をくぐる。店長に挨拶すると、テレビ前のカウンター席の端っこ、いつもの席に案内してくれる。

PXL_20240828_050432647席に座ると、係のお姉さんが「キリンビール(800円)でいいですか?」と言いながら、おしぼりとお通し(無料)を持って来てくれる。「今日も暑いですからね。やっぱりビールで。」と答える。テレビのワイドショーは台風の話題。「東京は日曜日が大変みたいですね。」と心配顔でお姉さんが、ビールとグラスを届けてくれる。

PXL_20240828_050739469「刺身盛り合わせ」(1600円)と「鮎の塩焼き」(900円)を注文して、ビールを一口・・・くー、乾いた喉に沁みわたるよー。んめー。お通しは酸味のきいた野菜の和え物。さっぱりしていいねー。昼間なので、酔っぱらわない程度にゆっくり飲む。この夏もいろいろなことがあったなと。物思いに耽る。「刺身盛り合わせ」が届く。鰹、鯛、鰤かな。鰹を一口・・・分厚い切り身・・・口の中に鰹の風味が溢れる・・・美味い!ビール、ビール。


MP

お客さんがどんどん入って来る。予約の電話も次々とかかってくる。今日も忙しそうだ。鮎の塩焼きが届いたところで、芋焼酎(幻の露)のボトルを出してもらい、オンザロックで飲む。これもいつもよりもゆっくりと。鮎の塩焼きを一口・・・ああ、この独特の香り、脂の甘みと身の旨味・・・美味しいなー。焼酎、焼酎。いい感じ。時々、近くを通りかかったお姉さんたちと言葉を交わし、芋焼酎を一口、一口。鮎のワタも楽しむ。ぼんやりと過ごす時間も大切だよなー。

PXL_20240711_0945534161時間ほど過ごして、席を立つ。「ごちそうさま。」外に出ると、ムワッとした空気。真夏の激しさは無くなったものの、十分暑い。予定通り、酔いは限定的で、まあ気分がいいなーくらい。JRの改札に向かう。阿佐ヶ谷からバスで鷺ノ宮に帰るつもり。阿佐ヶ谷と言えば、一昨日、「バルト」に行って、ヒューガルデン白生(800円)を飲みながら、ベルギー産フライドポテト(500円)を食べたよな、と思い出す。ベルギー産フライドポテトにマヨネーズをたっぷりつけて食べると美味しいんだよなー。

その時の話題に、無くなったと思っていたカフェが、実は別の場所で営業していたというのがあった。マスターが南口の住宅街を自転車で走っていた時に見つけたというのだ。その店は中杉通に面した場所にあった「珈司」というカフェだ。コーヒーがとても美味しくてファンも多かったのだが、その店が入っていた建物が取り壊しとなり、惜しまれつつ閉店した・・・と思っていたのだが、商店街から外れた住宅街のアパートの一室に復活しているというのだ。

PXL_20240711_103049371「それはどこですか?場所を教えてください。」「それがね、説明しにくいんだよね。」マスターがタブレットを出して、「Google Map」で説明してくれる。「そんなところに?」「そうなんですよ。是非行ってみてください。」「中杉通りのお店には何回か行ったことがあります。懐かしいですね。」・・・みたいな会話をした。ちょっと帰り道に寄った「バルト」だったが、いい情報をもらった。

阿佐ヶ谷駅で降りて南口へ。八重洲ブックセンターに入って、目的の本を見つけ購入。サンドーレはこの時間まだ開いてるかなと気になり、行ってみたが、さすがに閉まっていた。せっかくだから「珈司」を探してみようかと、駅方面に向かいながら川端通りを歩いていると、「あっ、こんににちは。」と声を掛けながら、なんとバルトのマスターが自転車でこっちに向かっている。「あ、どうも」と答えたが、そのまますれ違う。こんな偶然もあるんだなと思う。

パールセンター商店街に入り、しばらく歩いて、商店街から住宅街に入り、小道を歩く。タブレットの画面の記憶を頭の中で辿りながら歩く。本当にこんな場所にあるのだろうか、と疑問が湧いてくるほどに、カフェの気配はない。・・・が、あった。唐突に看板がみえた。看板、小さいなー。真新しいドアの下にOPENと書かれた木の札が置いてある。へー。迷わずドアを開ける。

カウンター席と厨房のシンプルな作りながら、新しくてきれいな店内。マスターは客席の方に立っていて、「こんにちは。」と声を掛けると、「どうぞ」と言いながら厨房の方に移動する。席は5席。先客は無し。後ろの籠に鞄を入れて、一番奥の席に座る。理想的とも思われる落ち着いた雰囲気。マスターの柔らかい笑顔・・・「こちらは初めてですか?」「中杉通り時代に何度か。」「そうですか。」マスターが頷く。

 

「ウインナーコーヒー(600円)をお願いします。」と注文する。コーヒーを待つ間、マスターと会話。「この辺りの道、分かりましたか?」「なんとなくですけど。それにしても、ここにお店があるとは、少し驚きました。」「中杉通りから移転して、それでまた建て替えになって、この店は2年目なんですよ。」「とてもきれいで、落ち着きます。」「ありがとうございます。」「前のお店の時のお客さん、来ていらっしゃいますか?」「連絡が取れたお客さんには、お知らせしているので、来ていただいてます。新規のお客さんは少ないですけど、そういう方は若い女性がほとんどですね。」「見つけたら入ってみたくなりますよ。」そんな話。

PXL_20240828_070432328ウインナーコーヒーが届く。生クリームが分厚くコーヒーの表面を覆っている。では、一口・・・うめー。生クリームの甘さの間から、優しい味のコーヒーが流れ込んでくる。さすがだ。この美味しさ、思い出した。ドアが開いて、女性が一人入って来る。とてもお洒落な服装で、輝くばかりの笑顔。70代くらいだと思うが、セレブ感が漂う。入り口すぐの席に座る。

「外は晴れているけど、念のため傘を持ってきたの。近頃は急に降り始めるから。」と女性客。「そうですね。雷もすごいですね。」と自分。「そう、雷は怖いわね。今日は大丈夫だと思うけど。」自然に会話が始まる。「よく来られるんですか?」「ええ、毎日。」と言ってふふふと笑う。「ご近所なんですか?」「ええ、すぐそこなんですよ。」「今日はどちらかにお出かけだったんですか?」「いいえ。」「とてもお洒落な服装なので・・・。」「それにはちょっと理由があってね。」ん?

その方は注文をしていなかったが、マスターはいろいろと準備をしている。そして、女性客の前に置かれたのは・・・ビール。「コーヒーの専門店でビールって、驚いたでしょう。」と女性客。マスターが美味しそうなソーセージを乗せた皿を出している。「驚いたというか、それもありなんですか?」「いつもはお昼にいらっしゃるんですけど、週に一回だけは、夕方にお洒落をしてお酒を楽しまれるんですよ。」とマスターが説明してくれる。なんと!優雅だなあ。

その後も3人で会話する。「マスター、看板も小さいし、全然宣伝してないですね。」「だって、5席しかありませんから。」「入れなくなったら困るわね。」「確かに。じゃあ、場所は自力で見つけてくださいということで・・・」「そんな大げさなことじゃないですけど。まあ、のんびりとね。」「そうですね。」

会話を楽しんで、さて、そろそろ。「ごちさうさま。」「また、おいで下さい。」「はい。」マスターと女性客に送られて、外に出る。まず空を見上げたが、雨の気配はまだないようだ。それにしても不思議な空間だった。また帰ってきたいと暖かな気持ちになった。


Posted by hisashi721 at 13:47│Comments(2)
この記事へのコメント
はじめてコメントします。
珈司をズーッとさがしていました。
中杉通りに事務所があり以前良く通っていました。
木造アパートの1階に引っ越された後がわからず、阿佐ヶ谷に行くたびにそれとなく探していたところです。
住所をお知らせいただけると大変ありがたいです。
Posted by まき at 2024年12月20日 16:47
まきさん、こんにちは。

すみません。バルトのマスターに聞いた通りに行ったので、詳しい住所まではチェックしてませんでした。パールセンターを南に歩き、ドトールの手前を左に入り、少し歩いてまた左に歩く、しばらく道なりに歩いて、二股の道を右に行くと、程なくあります。看板が小さいので見逃さないように気をつけてください。

見つかったら、またコメントをいただけると嬉しいです。
Posted by 寄り道 at 2024年12月30日 10:04