重松清『ビフォア・ラン』
1980年の広島県呉市を舞台にした青春小説。主人公永沢優は伝統ある県立高校3年生。
「トラウマのない青春など、青春ではない」と信じ、ノイローゼで退学した「まゆみ」を殺したことにして墓まで作る。一年後その「まゆみ」が街に帰ってきたところから物語は急展開・・・。
この小説を読んでいると、呉に行きたくなる。山から海が見えるというこの街がとても愛しく書いてあるからだ。
そしてもう一つ。この小説は広島弁で会話が書かれているというめずらしい小説。その広島弁がとても柔らかい印象を与えている。・・・のだが、広島出身の自分が聞いたことのない言い回しがある。それが気になって仕方がない。
例えばこういう場面で使われる。・・・時代はカープの全盛期。カープに入団することを夢見る「誠一」を受験生の友人たちがからかう場面。
(引用)
「なに偉そうなこと言いよるんか、ボケ。アホでも入れる広島カープとはわけが違うんど、わしが狙ろうとるんは」
「誰がアホじゃ? おお?」
「衣笠やこお、九九もようせん、ゆうやないか。山根もアホづらやし、北別府やこう、おまえ、農高出身ど。バカに決まっとろうが、そんなこともわからんのか、アホアホアホッ」
「カバチたれんなよ、あんまり」
・・・ここで使われている「・・・やこお」という表現。
「・・・なんか」という意味だということは分かるけど、聞いたことないなあ。この表現、作品中に結構出てくるのでよけい気になる。(それにしても衣笠や山根や北別府には失礼だなぁ。)
Posted by hisashi721 at 12:01│
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重松清さんのデビュー作。その後数々の有名作品を生み出している作者の原点とも言うべき作品です ビフォア・ラン・・・走り出す前・・・だからこれから走り出す。 スタート地点の手前。みんながばらばらになる前。 青春は、決してまぶしいだけじゃない、くらく切な...
ビフォア・ラン/重松清【小銭かき集めてみます?(&趣味的本の紹介)】at 2004年10月03日 02:41
呉は良い町ですよ。私も2年程前までは、仕事で2ヶ月に1度位行ってました。確か浜田さんも呉でご勤務だったように思いますが。
呉の人の言では、呉の言葉は呉弁であって、広島弁とは少し異なるということでした。20数年前初めて呉に行き、1人で居酒屋に入った時、隣でしゃべっている人たちが喧嘩でもしているのかと驚きましたが、どうも普通の会話だったようです(その後わかりました)。
以下、呉でお気に入りのバーです。もし呉に行かれる機会がありましたらお寄り下さい。
じょうもん(良い女という意味もあるそうです)
呉市中通3-3-27(0823-24-6519)
なるほど、呉弁というのがあるんですね。距離的には近いので、言葉は同じだと思ってました。
次に広島に行った時は、呉まで足をのばしてみようと思ってます。「じょうもん」にも伺ってみたいですね。教えていただいてありがとうございます。
コメントありがとうございます☆「水曜の朝、午前三時」も読みました…ひどく情熱的で切ない話でした。
「アフターダーク」は読んでみたいなー、と思いつつ、まだです。
では。またきますー。
「水曜の朝、午前三時」は考えさせられる作品ですよね。しかし、あおぞらさんの仰るとおり情熱的な話でもあります。そこが魅力なんでしょうね。