2004年10月17日

デストロイヤーというプロレスラーがいた。

ふと思い出したのだが、デストロイヤーという覆面レスラーに追いかけられたことがある。あれは高校生のときだった。広島県立体育館でプロレス興業があって、友人と一緒に出かけた。まだ始まるには時間があったので、グッズ売り場を冷やかしていた。そこにデストロイヤーのTシャツがあった。なぜかそれに反応した自分は、友人に「デストロイヤーのTシャツなんか買うやつはおらんじゃろ。なんで売っとるんかのう。しかし、センス悪いで、このシャツ。ネタに位はなるかもしれんがの。」などと話し掛けていた。

ところがいつもは話に乗ってくる友人の様子が何かおかしい。元気がないなあ。初めてのプロレス観戦で緊張してるのかなあ。元気づけてやるか。というわけでいよいよ声も大きくなる。「見てみーや、このTシャツの写真。覆面からでとる唇、たらこみたいじゃ。だいたい、四の字固めなんかほんとに痛いんかのう。ありゃあ、やらせで。相手が技かけられるまでジッとまっとるもんのう。しかもすごい歳じゃろ。おかしいで、やれるはずないもんのう」友人はしきりに目配せをする。後ろに人の気配がする・・・。背筋に冷たいものが走る。恐る恐る振り向くと・・・ああ、神よ。デストロイヤー本人が立っているではないか。しかも、笑ってない。怒ってるよー。

足がすくんで動けなくなっている自分たちに、デストロイヤーは突然「ウオー!」とほえたのだ。「逃げろ!」自分たちは本気で逃げた。だって本気で追ってくるんだもの。冗談だろ、おい。と思うのだが相手は本気なのだ。階段を駆け上がって二手に分かれて逃げた。そして、薄暗い倉庫みたいなところを見つけて身を潜めた。心臓がばくばくする。そこにデストロイヤーの怒った声が聞こえてきた。その声は確かにこう聞こえた。「Tシャツ買え!ばかやろう!」。デストロイヤーは日本語が堪能だったのだろうか。自分の悪口も理解したのだろうか。そんなにTシャツを買ってほしかったのだろうか。今となっては疑問だらけである。

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